生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
万年筆と向き合う
長原さんに研いでもらったM805の様子が、使えば使うほど変わってきた気がします。
ペン先が変形したというより、僕自身が万年筆に寄り添うようになったのも、要因としてありそうです。
ページいっぱいに文章を書き終えた時、ページの左半分のインクの色がやや薄いことに気がつきました。右側に向かって段々と濃くなっていきます。
これは紙にあたるペン先の場所が微妙に違うんじゃないかと推測しました。ノートの位置が固定された状態で左から右に向かって書いていくと、きっとペン先が向いている方向や筆記角度も変わっていくはずです。
つまり僕自身がその変化を考えずに書いた結果、色の濃淡として表現された可能性があります。この小さな変化をこれまで見過ごしていたのか。
それからはなるべくインクの濃さを均一になるためには、ノートのどの場所に手を置いたときにどんな持ち方をすれば良いのか。どの方向にペン先を向けるのが自然か、角度度がどうなのか。そんなことばかり考えていました。
そうこうしていくうちに、書いている時のなめらかさが変わってきて、紙に擦れる摩擦の感じが弱くなった気がしてきました。ちゃんとペンポイントを紙に当てないと、当然インクは出ないし、インクフローが良くないとペン先が紙の上で滑ってくれない気がします。
普段からそこまで考えなくちゃいけないのかとも思うかもしれませんが、これが無意識でできるようになると、本物なのでしょう。僕はまだその域に達していないので、こうしてどう意識したら良いのかを探っているところです。
対話というのは、こうやってやるんだね。
それと、M1000はペンズアレイタケウチの竹内さんのアドバイスの通り、メーカー修理に出すことにしました。ペン芯とペン先が上手く噛み合っておらず、分解も困難なことから、まぁ修理に出してみるかという判断です。
まずペリカン本社まで送られるのに最短で3週間、それから修理の見積もりを取って、返事をして、実際に手元に戻ってくるのは最短で2ヶ月ほどかかります。
というわけで、お気に入りの万年筆が1本減りました。しばらくの間ですけどね。待てんわ。これは手が滑ってしまって、何かをポチってしまっても仕方ないわ。
せっかく万年筆を楽しむ方法がわかったんですから、それなら他の万年筆も試したいと思うでしょ。最高の1本があるからといって、一生ハンバーグを食べて暮らすんですか?
でも買うなら値段で買ってしまいそうなので、本命ではありません。本命は、ちゃんと対面でお迎えしたいと思います。
ただ、候補の万年筆はカートリッジ・コンバーター両様式なんですよ。コンバーターもひとまず用意する必要があるなって思ってるんですが、空のカートリッジに注射器でインクを入れるのも気になっています。きっとペン先をインクに付けなくても良くなるから、注射器みたいなのでインクをコンバーターやカートリッジに入れるんですよね。
我が家には注射器みたいなのはないから、ダイソーで買うか、それともガンプラ塗装用に買ったスポイトでも使おうかしら。ペン先やスリットに付着したインク、いつも拭き取ろうかどうか悩んでしまうので、簡単にインクが注入できるなら世界が変わりそうです。
実は今日届くんだよね。
10年継続した習慣を変えることはかなり大変
それと、万年筆に関係する、ノートのお話です。僕が愛用している手書き用のノートは文具王さんが手がけたアクセスノートブックです。
Amazon | Access Notebook (アクセスノートブック) 検索性を極めたノートブック | ノート | 文房具・オフィス用品
発売は2013年7月中旬で、当時は地元のカルコスなどの文房具店には売ってなくて、手に入れるのに苦労しました。結局Amazonでポチったりもしました。
名古屋の東急ハンズに行っても入荷が8月に入ってからだと言われてゲンナリした記憶もあります。
ちなみに当時は2499円で買えていました。それが2024年現在だと2600円前後で売られていることがほとんどです。
A5サイズで200ページあるハードカバーのノート、これで2600円は高いでしょうか。安いでしょうか。正直言うと高いなと思います。妻のゆかさんからはもう少しやすいノートでも良いじゃんかと言われました。ごもっともです。
一応、家計として無制限に許されていたのは、本・ノート・インク(万年筆のインクやボールペンのリフィル)です。これは本当にありがたい。
ただ、万年筆に更にのめり込むようになってからというもの、ノートの消費が激しくなりました。これまで半年に1冊のペースだったのが、4ヶ月には1冊買わないと間に合わないようになりました。
お気に入りの万年筆に出会ってしまうと、もう書いているだけで嬉しくなって、特に内容もないのに書き続けてしまいます。フリーラーティングの観点から言うと大成功なんですが、ノート代はかさむ一方です。
それに、万年筆のことで悩めば悩むほど、頭から手、手からノートへと伝わる内容は当然悩みのことばかり。ただひたすら吐き出すために、高価な紙が消費されていきます。
僕自身もこれはあかんなと思いながら書いていたので、ゆかさんからの「ノート代をもっと節約できないか」という進言を思い出し、この機会に検討してみることにしました。
これがね、沼の始まりだったんですよ。もう嫌だ。
まず、アクセスノートブック以外の候補を探しました。 この時考えた条件は
A5サイズ
5mm方眼
200P(100枚)
Xでも以前ポストでご意見を募集したことがあり、だいぶ選択肢が定まりました。
MONOKAKI
ノーブルノート
MDノート
紳士なノート
この辺りです。 単純には比較できないかもしれませんが、概ねアクセスノートブックの半額ほどで購入できる印象でした。多分、これらの候補も普通の人からしたら高いかもしれませんけどね。
先日、川崎文具店に足を運んだ時に、ちょうど良いことにMONOKAKIとノーブルノートが試筆できました。MONOKAKIは、自分が思っていたよりも紙が薄くて、求めていた感覚とは違った印象でした。その代わり、ノーブルノートが候補となりました。
で、ノーブルノートとやらを買ってきたんですけどね。すぐ使わなくなってしまいました。
理由はいくつかあります。まず、僕が実際に求めていたサイズが、A5ではなかったこと。は?何言ってんの?って思うかもしれませんが、実はアクセスノートブックがA5サイズじゃなかったんです。
見開きの状態、つまりA4サイズに広げた状態で、上下左右に1cmずつ余白がありました。ほんの少しの余白かもしれませんが、これがかなり書く時の手の位置に影響を与えていました。
特に右のページを書いているときに、ノートと机の段差を感じるのが、A5サイズだと早くなりました。ノートの上に置いている手がページの端を感じた後、そのまま右に行くなら段差を降りて書き続けることになります。
その段差を感じるのが早くなったんですよ。もう気になって気になって仕方ない。
そして紙の綴じ方。ページの境目付近がどうしても浮いてしまって、ちょっと書くときにストレスを感じました。これはダメだ。書き続けられない。
ちなみに少しは工夫して使おうと思って、ノーブルノートを横向きにして書いてみたこともあります。これならA5サイズよりも横幅が稼げます。それが面白いことに、アクセスノートブックの横幅とちょうど同じ部分まで書いたら、無意識に改行してました。
もっと右方向に書き続けることもできたのに、A5サイズ縦向きの横幅くらいまでしか連続で書けなかったんですよ。これは自分でもびっくりしました。僕の手は、すっかりA5+1cmの幅に合わせて文章を書くことを覚えてしまった。
それともう1つ。ノーブルノートを1ページ目から使い始めようとしたその瞬間にも困ったことが起こりました。書き終わってページをめくって、2ページ目(つまり1ページ目の裏)を書こうとしたときに、ノートの厚さが影響して紙が真っ直ぐになりませんでした。
誤算でした。少し考えたら当然のことですよね。だからハードカバーのノートが存在するのか。
その時、テレビドラマ「俺のダンディズム」の靴の回で言われたことを思い出しました。
日本人のほとんどは、靴を試着するのにかける時間は5分くらいだそうです。しかし外国の人は40分から50分時間をかけるのだと。ダンディに靴を履きこなすためにはサイズ合わせが重要なのだと番組では紹介されていました。
そこで紹介されていた方法は
実際に使う靴下を履いてサイズを合わせる
必ず両足のサイズを合わせる
靴を傷めないようにシューホーンを使う
かかとをピッタリ合わせる
親指と小指の付け根部分の周り「ボールジョイント」を確認
最後に軽く前後に踏み込んでみる
これだけのステップを行い、自分にぴったりの靴を選んでいくのです。そりゃ5分じゃ終わらん。
ではこれを踏まえた上で、僕は今回ノートを買うにあたって、どこまで考えて試筆したのかですよ。そう思うと、試筆用のノートの何も書かれてないページを開いて、それとなく書いていただけだった気がします。
ノート売り場に置かれている試し書きのノート、他の人が書いた内容を見ると、ただ単語が書かれていたり、あいうえおが書かれていたりするだけです。それを思うと、自分も含めて、如何にチェックすべき項目をすっ飛ばしていたかがわかります。文字から察するに、ただ落書きしたかっただけかもしれませんけどね。
もしも僕が今後、新しくノートを買うとしたら次の項目を必ずチェックしようと思いました。
普段使っているペンを必ず持参する
落ち着いて座って書ける場所で試す
ノートの厚みの影響が出るページで書いてみる
最初の方のページ、真ん中辺りのページ、最後の方のページなど
ページの左端から右端まで書く
これだけ試していたら、きっと5分なんかじゃ終わりません。でもこれくらい試してみないと、自分がそのノートを使いこなせるかどうかがわからない。特に自分の場合は。
ノートを買う前に試し書きした時、普段使っている万年筆で書いたにもかかわらず、僕は最初のページや最後のページを試さずに、誰かが書いたページの次のページだけを試しました。これがいけなかった。せっかく1冊そのまま試して良いんだから、気になることを全部試さなければならなかった。
でもその時は、まさか自分がこんなにもノートに求める条件があったなんて、全然わかっていなかった。
これね、問題なのは、アクセスノートブックのようにA5サイズよりもほんの少しだけ大きいという規格外のサイズが、他にあまり見たことがないってことなんですよ。普通にノートを探しても、A5サイズで5mm方眼なら候補が出てくるんですけどね。
そして、ハードカバーの重要性。特に厚みのあるノートの書き味に直結します。あれは高級感だとか、デザインとかだけじゃなくて、最初の方や最後の方の書きやすさにも影響してたんですね。
じゃあ別売りのカバーなどはないのかと探してみると、革でできたカバーなどはよく見るんですが、ただのハードカバーが売られてないんですよ。
固めのカバーは、大抵ノートの他にも書類を差し込むようなデザインをしているのを多く見かけます。ノートだけを守るハードカバー、例えていうなら普通のノートに装着してモレスキンのような見た目に変えるものは、探しても見つかりませんでした。
これからどうしようか。ひとまず僕は、ノート代のために、ChatGPTの有料プランを解約しました。生成AIよりもノートの方が僕にとっては重要なんです。でもこれだと、アクセスノートブック以外のノートでは快適に書き続けられないままです。生産が終了してしまったら発狂するかもしれない。
当面の間は同じノートを買い続けるとして、それ以外にもノートをいくつか試しながら、感覚を慣らしていく必要があるなと思いました。
前回の万年筆の件、ノートの件で、わかったことがあります。
このこだわりは、関わった人に迷惑をかける。
大学時代の先輩にも言われました。お前さんのそれはこだわりではなく執着や固執なんだと。ゆかさんからも言われました。どうしてそれ以外を楽しむことができないんだと。
理由を聞かれても、自分ではうまく答えられませんでした。どうしてダメなのかはわからなくとも、何がダメなのかは説明ができます。ノートについても、A5よりも大きなサイズを時間をかけて探しました。それでも普通のメーカーは工業規格に合わせてノートを作るわけなので、売ってないんですよね。
なんかもう、自分なりの調査結果を伝えているだけで、みるみるうちに相手が不愉快な思いをしていくのが、僕からも分かるんですよ。これはもう伝え方を気を付けてどうこうできるレベルじゃありませんでした。自分が存在しているだけで相手を傷つけてしまう謎現象。
万年筆も、ノートも、個性があって素晴らしい趣味だとは思います。様々な種類を経験し、楽しむことも理解できます。
ただ今回は、そんな無数にある組み合わせの中から、自分が最高だと思う組み合わせを探求しました。それ以外のものは、「ほうほう、こういうものもあるのかふむふむ」と楽しむことはできても、「最高だ!」にはなりませんでした。
この自分が思う「最高」を探すことに、他人をあまり巻き込んじゃいけなかったんですね。特に僕の場合は、「最高」のストライクゾーンが狭すぎる。これもできれば広げたい。広げたいけど、寄り添ってくれる人が嫌な思いをしたり、傷ついたりしてしまう。
1人で探求する。もしくは、かなり言葉に気を遣いながら、「なんでこれじゃダメなの?」を丁寧に回避する必要がある。
これまではそんなに自分が考えていなかった、人に見せても良い部分と、人に見せてはいけない部分。今回はそんなことを、考えるきっかけになりました。
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私もノートの段差が気になるとうまく書けない派なので、最近はA4コピー用紙片面のみ運用に。メリットはスキャンが楽、ページ単価が安い、必要な部分のみ持ち運び可能なところ。逆にデメリットは保管と持ち運びがやや面倒なところ。ジャーナリング的な仕様用途ならノートよりもコピー用紙の方が向いている気がします。リングノートとかノートパッドでもよければマルマンのニーモシネもコスパよくて万年筆との相性も良くいいですよ。