教育実習の思わぬ副産物
生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
2023年の教育実習が終わった
6月5日から始まった2週間にわたる教育実習が、6月16日で終わりました。
合計10日間。遅刻も早退も欠勤もすることなく実習生さんは勤務校に来てくれて、実習を終えてくれました。
教員断念した学生、教育実習後に「志望度低下」 約3割 | 教育新聞
こちらは2022年の記事ですが、教育実習で現実を知って、教職を志すことを断念する学生もいるようです。近年よく見るようになった「教員=ブラック」みたいな報道もあり、現実を知ったことから、離れていったんだと思います。
まぁ記事に書かれていることは間違いでありませんし、Twitterなどを見てみると、教育実習生が途中で来なくなることも見受けられるようで、現実として、そういうのがあるんだなくらいには認識していました。
僕自身が担当した教育実習は、無事に終わりました。2回目の教育実習を経て、自分なりのこだわりも出てきたので、今回は教育実習について語ろうと思います。
教育実習の目的
僕が大学時代に教育実習生として愛知県の県立高校にお世話になったのは2008年のことです。自分の母校ではない高校で、自分も含めて5人の実習生がいました。
初日に、教頭先生や主任の先生による講話があり、そこでのお話の内容は今でも断片的に覚えています。特に印象的だったのが、教務の教育実習担当の先生の言葉です。
「私たちは、普段の学校での勤務の傍ら、君たちの面倒も見ることになる。うちは生徒指導の件数も多いから、他の学校よりも忙しい。そんな中で教育実習を引き受けているんだ。本気で教職を目指す覚悟はあるのか。」
しばらく沈黙があったのも覚えています。ゴクリってやつです。
そう、僕の教育実習では、こうした”覚悟を問うことで奮い立たせる手法”がよく使われました。覚悟ができている学生は思いを新たにして、これまでの想いが中途半端だった学生はその刺激を受けて魂が震える。
ある種のスポ根物語のような光景が、教育実習にもありました。
でもね、僕はそういう育てられ方をしましたが、今は違った考え方の方が良いんじゃないかと思うようになりました。
少し前までは、「お前の代わりなんていくらでもいるんだ」や「どこまでもついていきます!」みたいな感じの言葉のやり取りで対抗心というかモチベーションを向上させるという手法が当たり前だったような気もします。
ただ今はそういう時代ではない。そんな感覚が確かにあります。
僕から見たら教育実習生は、限りある人生の中で教職を選んでくれた人たち。一番やってはダメなのが、その人たちのやる気を削ぐことです。
先ほど紹介したニュースで、教育実習の後で教員への志望を断念するケースがあることが調査で判明したと報じられていました。将来の夢として志していたものの、現実を知って諦めてしまったということです。
気になるのが、その教育実習の何を見て諦めたのかということ。
僕はここに、学校という世界の現実を見たということ以外に、指導教官の言動も影響していたんじゃないかと思うのです。
自分にとって、教育実習生、特に情報の教員免許を取得しようと勉強してくれる学生は、将来、数少ない仲間となり得ます。僕としては、将来仲間として同じ愛知県で働いてくれる未来の先生のやる気を削ぐなんてことは、絶対にしたくないと思っています。
教育実習に来てくれてありがとう。情報の免許を取得しようとしてくれて、ありがとう。
もう気がついたら37歳になってました。そろそろ自分よりも下の世代が育ってくれても良いんじゃないかと思うのです。
そもそも、僕の教員人生の中で、情報の教育実習生はまだ3人しか出会ったことがありません。最初の1人は、僕がまだ初任者の頃だったので、他の先生が対応されていました。僕自身が指導教官をやったのは、これで2人目です。
他の科目の教育実習生はそこそこ見るんですが、情報となるとあまり見たことがないんですよ。2年連続で見るなんてことが、本当に珍しいレベルです。
教育実習の目的は、端的に言えばそれこそ単位取得です。教員免許状を発行するために、必要だからやるっていうのが正直なところです。
ですがそれ以上に、僕としては本気で教職への道を志して欲しい。教育実習を通して、「学校の先生になりたい」と思う気持ちを、実習前よりも強く持ってほしいと思っています。
目の前の子供達に出会えてよかった。これが学校の先生という職業か。自分もいつか、こんな先生になりたい。
少しでもそう思ってもらいたくて、自分なりにもてなしたつもりです。もっと見せたいこと、たくさんあったんですけどね。2週間じゃ全てを見せることは不可能でした。
でもまずは、教育実習をやろうと、情報の免許を取得しようと思ってくれたことそのものに感謝をしたい。その上で、せめて自分が担当したからには、良い思い出として持って帰ってもらいたい。
そう思っていたら、「俺は暇じゃないんだ。お前の代わりなんていくらでもいるからな。」なんてことはそもそも思わないんですよ。
かつて自分の教育実習を受け入れてくださった学校の、教務の先生がおっしゃったように、教育実習を担当したからといって手当がつくわけでもないですし、余計に忙しくなっただけです。
それは今も同じで、僕自身の空きコマは実質ゼロになり、助言をするにも時間がかかるので帰宅する時間も遅くなりました。
それでもね、僕が今この時でも、教育実習の時のことを覚えているように、今回の実習生さんも、これからずっと覚えていると思うんですよ。
そんな一生の思い出になるようなことを担当するんです。良い形で終わりたいじゃないですか。
そう思っていたら、悪態をついたり、横暴な態度で接するなんていう選択肢は僕は思いつきませんでした。
この想いが、実習生さんに伝わってくれると良いんですが。いつかまた、再会できる日を楽しみにしています。
教育実習の思わぬ副産物
そうそう、またどこかで改めて報告しようと思うんですが、教育実習を担当して、目に見えて良いこともありました。
今年度ではなく、昨年度の実習生さん。その実習生さんが在籍していた大学の学部長さんが勤務校の進路ガイダンスに来てくださったことがあったので、実習生さんの卒業後の進路について伺ってみました。
まぁその先生は実習生の報告ではなく大学のPRのために来てくださっていたので、この疑問についての回答は持ち合わせていませんでした。その代わり、その実習生さんのゼミの先生にこの話を繋いでくださって、メールのやり取りが始まりました。
するとまぁ、あれよあれよという間に話しが進み、その先生が担当されているゼミで、僕が講演することが決まりました。現在、兼職兼業手続中です。
主にお話しする内容については、情報の先生になる意義だとか、実際に学校で働いてみてどうだとか。その大学からも情報の教員を多く輩出したいという思惑があるので、それと僕が大学生にお話したいという希望がうまくマッチした形です。
当日お話しする内容を考えている最中なんですが、これがまた、僕自身の人生論になりそうで。
どうして僕は学校の先生を目指したのか。どうして情報を教えたいと思ったのか。そんなことを考えるようになりました。
そこで気づきました。僕はどうも、自分自身のこれまでの経験だけで完結するような仕事でぬくぬくやることが少ない生き方をしているようです。敢えて過酷な環境に身を置いているという感じです。
本を書くようになって、書くからには自分自身がもっと勉強しなきゃと思うようになったり、担任をやるからには進路について詳しくならなきゃと思ったり。
本の執筆だって、辛い辛いと不満を漏らしていたものの、その環境に身を置いたのは自分です。そもそも僕がその話を進めているから苦しみました。「そんなに嫌なら辞めたらいいのに」と思えるくらい愚痴を言っていたとしても、自分で決めたことなので辞めませんでした。
担任についてだってそう。本当に担任をやるのが嫌なら、今年度が始まる前の段階で断っています。多少嫌なことがあったとしても、自分自身のためにも、学校のためにも、やり遂げたい。そう思ったからこそ引き受けたのです。
結構いろんな締め切りに追われることにもなっていますけど、そんな環境に身を置いているからか、自分だけでは途中で諦めてしまうようなことも、なんとかやれている気がします。
今回の大学で講演する件もそうですけど、他の先生だとあまりやりたがらないような、教育実習という仕事を引き受けたことで自分自身の勉強にもなりつつ、新しい仕事にもつながりました。
人と人とのつながりを渡り歩いていくって、こういうことなんだとしみじみ感じています。
なかなか大変ですけどね。それでも、自分の人生はなかなか充実しているなぁって思います。
来年はどんな教育実習生に出会えるのか。今から楽しみです。
あ、別にこういう副産物を得ることが第一目的っていう訳じゃないですからね。恋愛もそうですけど、意外な副産物みたいなものを最初から望んでいたら、その望みさえ叶わない、妙な法則がこの世にはある気がします。
目の前のことを、純粋に楽しんだことで見えてくるもの。今回の実習生のお話しだって、副産物の話だって、その結果だと思います。
M805デモンストレーター、おかえり!
前々回のnewsletterで、万年筆の修理の見積もりが上がってきたという話を書きました。
今年度も教育実習が始まった - by 魚住惇⌨️『教師のiPad仕事術』 - こだわりらいふ Newsletter
その支払いも終わり、販売店からメーカーに連絡が行き、修理から戻ってきた万年筆がようやく手元に帰ってきました。
最初に販売店に連絡したのが5月9日だったので、2ヶ月弱ほどかかりました。
綺麗な姿で戻ってくるまでに、2ヶ月か。黒い軸のM805は買っておいて正解だったな。と思いますマジで。
これで家庭用と仕事用とで、同じ万年筆を使うようになります。カバンに万年筆を入れる必要がなくなりそうです。
お気に入りの万年筆が帰ってくると、もうそれだけで嬉しくなっちゃって。ついついノートに書きながら生活したくなります。デイリーノート混在問題にも発展しそうですが、気になっていることを、そのまま、今かける場所に書いている。こうした勢いを感じるものは、止めない方が良いと思うんですよ。
ちなみにね、落として割ってしまったのは万年筆のキャップなんですが、キャップの透明の樹脂部分はちゃんと交換されてて、クリップ部分についた傷はちゃんとそのままでした。
キャップそのものを全とっかえっていう訳ではなく、あくまで割れた部分だけを交換したんだなということが伝わってきました。
本当に壊れた部分だけを直してもらったんだな。相棒。相棒増えたけど。
おかげさまで、また高いテンションを維持しつつ、仕事ができそうです。
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