## 息子の近況
僕の子供は今、1歳9ヶ月ほどです。言葉はまだ話せません。一語ではなく一字ならなんとか話せます。「バナナ」は「な」と言い、「いちご」は「ご」と話してます。
言葉を交わすことができないかと思いきや、物覚えは良いようです。セミやカエルを僕が鹵獲して目の前で見せた後、図鑑を見せながら「セミはどれ?」と聞くと、セミの写真を正確に指を指して教えてくれます。一度見たものの姿と、僕が発音した名前を結びつけて記憶している様子でした。
ああ、セミとかを子供に見せる。これが父親の役割だなぁなんてしみじみ思います。妻のゆかさんは生き物が大の苦手なので、玄関先にカエルが出現しただけで大騒動です。それを子供に見せるために鹵獲している現場を見て、しかもケースに入れた状態で僕が持って帰ってくるもんだから、眉間のしわがどえらいことになっていました。
僕だって今でこそ機械いじりが好きで電子工作ばかりやっていますが、小学生の頃はオタマジャクシからカエルに育つまで飼ってみたり、虫取り網でセミを捕まえたりもしました。こういうのは、今を生きる子供にも教えてあげたいと思うのです。
ちなみに、僕の机の上からAirPodsProやHHKBをそそっと持ち去るのも息子の毎日の日課です。
子供のことをこうして公開しながら振り返るのは、ひょっとしたらポッドキャスト以来かもしれません。
1年前を振り返ると、本当に懐かしいです。夜泣きに振り回されていた毎日でした。正確に言うと、僕は真横で大声で泣かれても寝ていられる(というか起きない)ので、苦しんでいたのはゆかさんですが。
それでも起きている間に泣き声を無限ループで聞かされる毎日で、精神的に参っていた記憶があります。
何度も「夜泣き 改善」とか、「夜泣き 2ヶ月」とかで検索しました。検索して出てきたのは「そんな時期もありましたが、いつか夜泣きも治ります。それまで耐えてください。」的な回答ばかり。当時は「何ぬかしとんじゃ、今困ってるんだろーが!」くらいにしか思えなかったのですが、息子も今は夜になったらぐっすり寝てくれるようになりました。僕も今、あの時期を乗り越えた身として言えるのは、「時期が過ぎるまで待て」だなって実感しています。
当時は子育てに関する悩みみたいなものをPodcastで話していたこともありましたが、今では毎日小さい困りごとは起こるものの、大きな悩みもなくなりました。近頃はスプーンも上手く使えるようになったので、食事も楽になりました。早くジャングルジムに登れるようになってくれないかなぁと思う今日この頃です。
## ジサクキーボードチョットデキルのTシャツを買った
夏休みに入る時、同僚の先生にとある宣言をしました。
「僕、ジサクキーボードチョットデキルのTシャツを着たいんですよ。」
これを宣言した頃、1枚のSU120というキーボードを自作するための基板を購入していました。
そして3Dプリンター「KP3S」が我が家にやってきたのが8月2日でした。届いてからは毎日何かしらの印刷をしていました。
ちなみに、3Dプリンター絡みのツイートをしまくった結果、フォロワーが減りました。
それでも、3Dプリンターでのものづくりはやめられませんでした。楽しかったから。頭の中で想像した立体物をiPadで表現して印刷すると、目の前に出現する。これが最高に楽しいんですよ。
3Dプリンタ初心者あるあるかもしれませんが、印刷が嬉しすぎて最初に買ったフィラメントがなくなりそうです。最新スマホに買い替えて使いまくって、バッテリーがかなり減った時と同じような感覚です。
ただ、そうした小物を印刷しまくっていて、ハッと我に帰ったんですよ。
僕はこんなちょっとした便利グッズを印刷するために、3Dプリンターを買ったのではない。
作りたいものがあったんだ。
「僕、ジサクキーボードチョットデキルのTシャツを着たいんですよ。」
## 「Storm44」
僕が3Dプリンターを購入した理由は、自作キーボードのトッププレートの制作でした。色々と小物を印刷している中、それを思い出しました。
自作キーボード遍歴を軽く紹介すると、
meishi
Choco60
Zinc
7sPro
という流れでキットを購入してきました。meishiは名刺サイズでキーが4つだけのものです。自作キーボードをちょっとだけ体験したいって言う人に向いているもので、友人からもらいました。
そして以前のnewsletterにも書きましたが、2019年12月のHHKBミートアップの翌日にChoco60を購入しました。
そこからしばらく間が空いて、もう一度自作キーボードの世界にチャレンジしようと思ってZincを購入しました。これが今年の5月のことです。そしてChoco60の角度に不満が出てきたので、7sProを購入しました。
7sProを購入する前、ふくさんという方から、Claw44という親指部分が特徴的なキーボードの実物をお借りした時期もありました。
これだけのキーボードを使ってきた中で、僕のキーボードに対するこだわりに磨きがかかったというか、こだわっている内容の解像度が上がったのを感じました。これまでなんとなくの好みとしてしか認識していなかった内容が、言語化できるほどハッキリしてきたのです。
そこで、僕が現時点で形にしてみたいキーボードを作ってみたいと思うようになったのです。
こちらが僕の自作キーボードに対するこだわりのリストです。
Row-Staggered配列、ただし中段は0.25U、下段は0.5Uのズレ幅
角度があり、上段が中段よりも高い位置にある
Claw44のように親指を活用したい
Zincのような40%でも良い
僕にとって、Claw44で初めて触ったColumn-Staggeredはデザインとしては本当に美しく、カタログを見ているだけでキットを買いたくなるような存在でした。
ただしこれには大きな問題があって、思った以上に移行コストがかかることに気がつきました。自分が作ったキーボードだけを触る職業であれば移行コストをかけてでも指に合った配列を探しても良いなと思ったんですが、僕は学校でタイピングを教えている身でもあるので、どうしてもコストを割いてまで移行することができませんでした。
ただし、Claw44で感心したのが、親指がかなり活用できるということでした。Lunakey Miniにも同じことが言えますが、親指でそれぞれ独立した4つのキーが使えるということが、極めて合理的なのです。英語配列だと両方の親指で1つの大きなスペースキーしか主に使えなかったのが、8つに増えたわけです。あと、一般的な英語配列だと、スペースキーが広すぎて、⌘キーを親指で押すにはちょっと辛いんですよね。
ともかくClaw44を使ってみて分かったのが、Row-Staggered配列の重要性と、親指の有効活用でした。
次に自分にとって大事だったのが、キーボードの角度でした。HHKBや一般的なキーボードは、裏に角度をつけるためのツメが付いています。僕はこのツメを必ず立てます。HHKBなら大きい方のツメを立てます。いくらHHKBといえど、角度をつけずに使うとなると苦痛です。iPadのMagic Keyboardは何故かこの限りではないんですが、キーボードの角度が大事なんだということが、HHKB型自作キーボード「Choco60」を通してわかりました。
ちなみに、購入していないキーボードで、Row-Staggered配列で割と自分の理想に近いKudoxというキットがあるんですが、角度がつけられないことがネックだったので購入を断念しました。
Zincという自作キーボードは本当に可愛くて、使っていてとても楽しいキーボードです。40%というアルファベットとその周辺だけのキーしかついてない配列でも、割と普通に入力できることが分かったのも良い発見でした。
ただし、2つの不満を抱えていました。1つは、Row-Staggered配列でありながら、中段と下段のズレ幅が0.25Uだったこと。一般的なキーボードは上段と中段で0.25U、中段と下段では0.5Uズレています。つまりズレ幅が段によって違うのです。Zincは全ての段においてズレ幅が一定だったため、見た目が美しい代わりに、僕が使うと下段の入力ミスが目立ちました。そしてもう1つが、両サイドのキーの大きさでした。Shiftキーを押す際、僕はZや/の真横を押すのではなく、少し大雑把に小指を動かします。その部分のキーが1Uだと、手元を見ずに押そうとすると、キーボードから小指がはみ出てしまうことがよくありました。
Zincを使うことで分かったのが、40%でも自分的に大丈夫だということ、Row-Staggered配列であってもズレ幅が大事だということと、両サイドのキーは1Uよりも大きいキーであって欲しいということでした。
じゃあ、それぞれのキーボードの良いところを集めたら、自分手にぴったりのキーボードが作れるんじゃないかと思ったわけです。
そして無事完成したのが、この「Storm44」です。
キーキャップの色に特に意味はありません。適当に余っているやつをつけました。できればキーキャップにもこだわっていきたいものです。ただ無刻印のキーキャップだとあまり選択肢がなくて困っています。
この形からわかる通り、Claw44のRow-Staggered配列モデルみたいな形をしています。ただ、Zincから得た教訓も反映させています。
そして大事なのは、角度です。平たいキーボードでは、上段が遠いのです。
工夫したのは、親指のキー部分が設置面と平行で、下段から角度が付いている点です。左右対称ではないキーボードに後から角度をつけることは現実的ではありませんでした。なので、最初から角度をつけた設計にしたわけです。
論理配列についてはREMAPで試行錯誤中です。そこそこ固まりつつありますが、細かいところがまだ詰められていません。
あと、「Storm44」という名前の由来ですが、44はキーの数です。これはClaw44と同じ発想です。いつか他のキーの数でも作ってみたいと考えているので数字をつけました。「Storm」の他にもZestやZealなど情熱的な言葉があったんですが、ゆかさんにZestやZealと提案しても「(どうでも)いいんじゃない?」としか返事をしてくれない中、何故かStormだけは「Storm!良いじゃん!Stormにしよ!」と元気に反応してくださったのでStormにしました。
なんでゆかさんは、Stormにこんなにも過敏に反応したんだろう。
自分が生み出したものに名前をつけたいとずっと思っていたので、キーボードを作った際には何かしら命名したいと考えていました。
Storm44です。以後お見知り置きを。
今回のこのキーボードの制作にあたり、SU120という自作キーボード基板を使いました。一応基板にはロータリーエンコーダ部分を残したので、気が向いたら取り付けてみる予定です。
けどキーボードにつまみをつけて、何するんだろ。必要性がちょっとまだよくわかりません。
今後、これをキット化するなら、KiCadでのPCB設計からやるのでしょうか。需要があるかどうかわからないので、そっちの世界に踏み込めずにいます。
欲しい方がいらっしゃるなら、stlファイルを公開する事を検討します。
## キーボード制作と知的生産
このStorm44を作っていて思ったことがあります。
知的生産に、とても似ていました。
これまで出会ってきたキーボードが、自分にとってどこが良くて何が不満だったのか。それらを整理して、自分にとって良いと思う点を1台に集約しました。これって、読書メモから文章を執筆したり、Obsidianなどでデイリーログを残しつつ、文章としてまとめる行為に非常に似ているなと思ったのです。
何より今回は、「自分だったらこうするのに」というアイディアがかなり鮮明でした。作りたいキーボードの全体像が、頭の中ではっきりしていました。それらの情報を頭の中で整理して、新しい形にする。これはまさしく、知的生産です。
知的生産って聞くと如何に文章を書き下ろすかっていう発想になりがちですが、理想のキーボードを設計していく過程を見ていくと、どうしても知的生産としか思えません。
今まで出会ってきたキーボードをインプットして、自分なりの考えをアウトプットして、自分の頭の中で思い描いてきたキーボードを作りました。しかもね、そうして出来上がったキーボードって当然ですけど文字入力ができるんですよ。知的生産したもので知的生産できるんですよ。「知的生産したもので知的生産する」っていう響きが面白すぎます。そしてめちゃくちゃ楽しいです。
これまではキーボードは既製品を購入するしか選択肢がありませんでした。自作キーボードと言えど、キットを購入することしかしていませんでした。SU120に頼ったとはいえ、自分が使ってみたい配列を実現できたことの感動は、とても言葉では表現しきれません。
キーボードを自作したいと思って作り始めて、1週間で完成したことには自分でも驚いています。キーボード制作が知的生産ならば、今後もっと様々なキーボードに触れていくことで、次のキーボードが制作できるはずです。そうしてこの先のことを考えるだけで、本当にワクワクしますし、楽しみです。
最後に、冒頭で話したジサクキーボードチョットデキルTシャツの話に戻ります。
IT業界では、チョットデキルという表現は、開発者という意味として認識されているようです。
これはLinuxの生みの親であるリーナス・トーバルズさんが「ワタシハ リナックス チョットデキル」Tシャツを着ていたことや、開発者の方達が謙虚な性格の方が多いということから、「チョットデキル」=「開発者」という認識が広がった印象があります。
「ジサクキーボードチョットデキル」Tシャツを見た時、いつか自分も着る立場になりたいって思いました。もちろんそれは、ただ単にTシャツを買って着たいという意味ではなく、着るに相応しい存在になりたいっていう意味です。
PCBだってまだ設計していませんし、ファームウェアだって書いてないし、キット販売もしていません。
けど自分なりに好きな配列を見つけて、実際に動くキーボードを作ることができた。
ここまできたら、自分へのご褒美として、買っても良いだろうと考えたのです。
ゆかさんには、Tシャツを買う許しを得ました。到着は8月25日の予定だそうですが、届くまでが楽しみです。
それにしても今回のタイトル回収は割と早くできたと自分でも思っています。次は何に熱中しようかしら。
今回のnewsletterは以上となります。
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ちなみに、ゆかさんは嵐の大ファンです。
通りすがりの自キ者です。シフトは親指に持ってくると使いやすくなりますよ…。キーマップをどこまで弄ってるかわかりませんが、LT()などを使って、スペースキーかつシフトキー、エンターキーかつコントロールキー、などのように組み合わせる事が出来ますよ…。(沼からの声でした)