SEOをハックしまくっているWindowsアプリの闇
生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
SEOをハックしまくっているWindowsアプリの闇
先日、久々に講師時代の教え子から連絡がありました。パソコンの動作が最近になってかなり重たくなって、全く使い物にならなくなったという相談でした。
僕が講師時代に顧問をしていたバスケ部のマネージャーを勤めてくれていた子です。
そういや、専門学校に進学した際にパソコンの購入の相談を受けて、大須の九十九電機を紹介してセットアップまでやったなぁ。
もう10年以上前の話です。
で、今は直接会ってパソコンを操作しなくても、zoomで接続して画面共有すれば、リモートデスクトップで共有された画面を操作できるんですよ。知ってました?
僕が今住んでいる場所と、彼女が住んでいる場所が少し離れているので、まずは様子を確認したくてzoomで接続してPCの設定などを確認させてもらいました。
結論から言うと、HDDが寿命を迎えそうな感じでした。CPUはIvy Bridge世代で、メモリは4GB。もう十分に骨董品レベルかもしれませんが、それでも動作が重たいなと思っていました。
その予測が正しくて、Crystal Disk Infoで様子を見てみると、代替処理済みのブロック数が、閾値を超えていないもののそこそこ増えていました。
あぁ、もうこれはあかんわ。というか10年よく動いたわ。そう思えてきました。
一応本体にはSSDは内蔵されていましたが、あくまでキャッシュ用として搭載されただけで、HDD500GB+SSD24GBという構成でした。24GBのキャッシュ専用SSDなんていうものが存在していたんですね。
Ivyなら2012年、MacBookAirならとっくにSSD搭載が普通なスペックです。
本人から、「本当は新しいパソコンを買うのが良いのはわかってるんだけど、なるべくお金をかけたくないし、調子が良かった頃の性能でやりたいことがやれていたから、直してほしい」という要望がありました。
データの移行だって大変だろうし、スマホ主流の時代に敢えてPCを使うというなら、用途がWordやExcelという人がほとんどです。
それなら本体を分解して、HDDをSSDに載せ替えるのが一番の近道だなと思ったので、自宅で余っていたSSDを使うことにしました。
え?なんでSSDが余ってるのかって?それはほら、僕がまだAmazonのセールに翻弄されていた頃に、安いというのが理由で買ってたものがあったんですよ。たまたまです。
SSDは家にあるものが使えたし、分解作業も僕にとってはお手のものです。この辺りで困ることは特にありませんでした。
しかし、今回話題にしたいのは、HDDからSSDにデータを移行する際に使ったツールのお話です。
なかなか深い闇だったんですよ。
ブログの記事風に書かれたアプリの商品ページばかりが上位表示される
近頃のSEO事情は僕もブロガーの端くれとして一応はチェックするようにしています。一昔前とは違って、数年前からは企業ドメインが上位に表示されるようになったようです。
ここ最近になって、企業ドメインが有利だというのは変わらないものの、絶対的に強いというわけではないらしいというのもわかってきました。
僕の中での認識では、そういうのは健康系の分野での話で、自分が調べる分野にはあまり関係がないんじゃないかなぁなんて淡い期待を抱いていたわけですが、
今回、HDDの中身をSSDに移行しようと思った時に、企業ドメインによってハックされた世界を目の当たりにしました。
僕がmacOSを使うようになってから、Windowsを使い込むのも久しいわけですが、一昔前は、Windowsアプリで有名なものに、「○○革命」というのがありました。
まぁあのシリーズも元は海外アプリだったりもしたんですが、一応は日本のメーカーが販売している製品なので、それなりに信頼していました。
でもここ最近は、「○○革命」シリーズをあまり見なくなりました。なぜでしょうか。
原因は、海外製のツールのサイトが、SEOをうまく意識したサイトの作りをしているからじゃないかと僕は思っています。
例えば今回の例にも出した、HDDの中身をSSDに移行するためのツール。
いろんなメーカーから似たような仕組みのアプリが販売されています。
僕が知る限り、よく検索結果のトップに出てくるのはEaseUS社が販売している製品です。このメーカーが公開している「EaseUS Todo Backup Free」です。数年前にこのアプリを利用して、実際にHDDからSSDにデータを移したことがあります。
ところが2023年3月現在は、このアプリの無料版の機能では、HDDの中身をクローニングしてSSDに書き込むということが、できなくなっていました。
それだけではありません、他社が公開している似たようなアプリ、「MiniTool Partition Wizard」、「AOMEI Backupper Standard」なども、その部分の機能が有料化されていました。
残るは昔からこの手のHDDのバックアップアプリを手掛けてきたAcronis True Image。これは元から有料アプリでしたが、最近は提携しているメーカーのSSDにアプリが付属されるのをよく見かけるようになりました。僕も過去に利用したことがありますが、SSD付属版は、その対象となるメーカーのSSDが接続されていないと起動しない仕組みで、更には他社メーカーのSSDが接続されていたとしてもアプリ上では認識しないような仕組みが導入されていました。
今回家で余っていたSSDはAcronisなどのバックアップツールが付属していなかったのと、無料版のツールがことごとく使い物にならなかったので、すっかり困ってしまったというわけです。
しかもそれらのツールの販売サイトときたら、「HDD SSD 移行 無料」とかで検索すると上位に表示されます。そのページには、SSDやらHDDの仕組みやらで文字数を稼いだ内容が表示されて、「こちらの製品を使うことで問題が解決できました」みたいな書き方で自社製品のリンクが登場するんですよ。
で、「無料ダウンロード」と書いてあるボタンからダウンロードさせておいて、いざHDDの中身をクローンしようとすると、月額料金を要求する画面が表示されるわけです。
いやいやいやいや汚いでしょ。そりゃダウンロードそのものは無料でしたけど、その記事を読んだ人が使いたい機能がピンポイントで有料ってのが、狙い撃ってきている感じがしていて、本当に腹が立ってきました。
しかも料金が月額サブスクだと3000円くらいで、買い切りだと1万円くらい。HDDからSSDに移行する作業そのものが、普通はそうは頻繁に起こらないので、その都度サブスクを申し込む感じだと、実質1回3000円くらいに感じます。
それに数年前までのバージョンなら実際に無料で使えていたので、尚更タチが悪い。検索結果を見てみると、企業サイトが上位を占めていて、それよりも下に出てくるのは「こちらのソフトの無料版でSSDに移行できちゃいました」という過去のバージョンを使っていた頃の個人ブログの記事だったりするわけです。
そういうことかよ。無料で全ての機能が使えるバージョンを先に公開しておいて知名度をあげて、個人ブロガーに便利に使ってもらって情報発信してもらう。そこであるタイミングで特定の機能だけを有料化。
企業ドメインのサイトでもブログ記事風にページを作って、さも悩みをここに書いた方法で解決できますよ!的な文章を書いて。
確かにそれっぽい内容でしたけど、例えばコマンドプロンプトで使うコマンドを描いたとしても、どこかいい加減な書き方で、僕が見た感じだとやっぱりアプリの無料ダウンロードに持っていきたいんだなっていう流れがみえみえでした。
そうか、そういう「この情報、文章にはどういう意図があるんだろうか」と考えながら読むのは、ある程度のリテラシーが必要なんでしょうね。僕は文章を読む時によく「何が目的なんだ?」とか中二的な感覚で読んでしまうので、ボタンのクリックに必死に誘導するような記事を見ると思うところが出てくるんですよ。ブーメランかもしれませんが。
バックアップも動画変換も
で、こうした話はHDDのクローニングを行うアプリだけではありませんでした。
ThinkPad X280を買ってから、僕もそこそこWindowsを使うようになったんですが、まぁ調べるうちに出るわ出るわ。そういうツールというかサイトが。
僕が調べた範囲でも、動画変換、iPhoneバックアップ、SDカード復元などのアプリが、同様の手法で商品展開されていました。
なるほど、人が困ったときに役に立つアプリが、そういう売り方をしているのか。いやそもそもアプリってそういうものか。
ここまでいろんなものを見ていると、どこかにオープンソースで公開されているものを流用して、外側だけハリボテみたいなのを作って売ってるんじゃないのか?と思えるほどです。
HD革命、お前まだ生きてたのか
このHD革命、昔はPCショップにパッケージ商品として売られていたので見覚えがあったんですが、今でも存在していたところにどこか懐かしさを感じました。
しかもこの販売元のサイトのデザイン、逆に安心します。あぁ、当時のインターネットに帰ってきたような感覚です。
今回はHDDのクローンをSSDで作成するという目的があったので、このHD革命を購入しました。Vectorで2980円でした。こういうのでいいんだよ。適正価格だと思います。
他に売られているSSDを見ていると、ELECOMが販売しているモデルの付属品として、HD革命Liteが用意されていたのを見て、「これがあるならLiteじゃないバージョンもあるんじゃないかな」と思って探して発見しました。
SDカードの復元を行う際はどのアプリで行うのか、未だに迷っていますが、動画変換は株式会社ペガシスのTMPGEnc Video Mastering Worksと決めていますし、そこらの怪しいアプリにお金を落とさないことにこちとら必死です。
そういえば、mac用のアプリも怪しいのは結構ありますね。海外アプリとかで。ああいうのって、どうやったら引っかからないようにするんだろう。
ちなみに教え子のパソコンの中身を見てみると、セキュリティソフトが3種類くらい入っていました。重たい原因こいつらじゃねーの?と思える数でした。
なんでノートンが2種類も入ってんだ。しかも期限切れ。Chromeを起動するたびに、安心安全なブラウジングを守ります!みたいなページが新しいタブで開くの、とてもストレスでした。
もうWindows Defenderがあるから良いんじゃ!と思いながら全部消しました。何か困ったことがあれば僕に連絡してくることでしょう。
つくづくコンピュータっていうジャンルは、初心者を不安にさせて金品を巻き上げるようなアプリやサービスが多いなぁということを、今回の件で思い知りました。
僕はまだそういうのには引っかからないつもりでいるので、ある程度は大丈夫かと思っていますが、本当にPCのことがよくわからない人はこれは大変な時代を生きているなぁって思います。
スマホの時代になって、みんなの手のひらにコンピュータが乗った時、自然と使う側のリテラシーが上がっていくんじゃないかという淡い期待がかつての僕にはありました。
違ったんですね。例えば車と同じように、全然車の仕組みに詳しくない人だって動かせるんだからと乗り回す。
AIがどうのこうのって言われている昨今ですが、実際に人と接する人材は残り続けるんじゃないかと今は思っています。
まだまだ、僕みたいな存在は、重宝されそうだな。
教え子のPCを診るという割り込みタスクが入ってしまって、ヒィヒィ言ってる僕ですが、未だに教え子に頼ってもらえることが、ちょっとだけ嬉しかった。そして、こりゃパソコンが苦手な人は下手に触らず、僕が作業を引き受けて本当に良かったな。そう感じる週末でした。
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