SDカードを買い換えるタイミング
生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
SDカードを買い換えるタイミング
皆さんは、SDカードってどんなタイミングで買い換えますか?
恐らく新規で買う時っていうのは、ある程度共通していると思います。
新しく買ったデバイス用
容量アップ
予備として
まぁまぁ思い当たるのはこれくらいじゃないでしょうか。
今日は誰もが一度は買って、でも滅多に買い換えない。そんなSDカードを、それ以外の理由で買い替えたという話をします。
フラッシュメモリの歴史をざっくり
買う理由について話すよりも先に、まずSDカードやUSBメモリの中に使われている、「フラッシュメモリ」の仕組みや歴史を少しだけおさらいしましょう。
RAMとROM
まず、メモリと呼ばれる半導体部品のお話です。この部品は大きく分けて2種類あって、揮発性メモリと不揮発性メモリに分けられます。
揮発性というのは、電気が通っている間だけ情報を記録してくれていて、電源が落ちると内容が消えてしまうというものです。電気が切れるとそれまで扱っていたデータが一瞬で消えてしまうので、液体から気体に変化する時に使われる”揮発”という単語が似合いますね。ファイルを開いて編集していて、保存する前にパソコンの電源が落ちてしまったら、当然保存をしていないのでそれまでの編集がパーになっちゃいます。あれが揮発ってことです。
では不揮発性はどうなるかというと、電源を切ってもデータが残ります。消えません。じゃあ全てのメモリが不揮発性だったら良いじゃんかという意見もわかるんですが、揮発性メモリと不揮発性メモリではデータを一度に扱う速度が異なっていて、現状で言うと揮発性メモリが圧倒的に速く情報を処理できるんです。なので、起動している間は極力揮発性メモリで処理をしていて、保存する時に不揮発性メモリを使うという使い分けが定着しました。
揮発性メモリのことをRAM(Random Access Memory)と言い、不揮発性メモリのことをよくROM(Read only memory)と言っていました。 2chなどで昔からそのスレッドの空気感や作法みたいなものを学んでから話題に参加してくれという意味を込めて、「半年ROMれ」という言葉も使われていますが、あれは「Read Only Member」の略だと言われていますね。つまりは書き込みできないってことです。
このROMというのは、一度書き込んだ内容を再編集したり削除することはできません。CD-ROMやDVD-ROMが良い例ですね。市販のCDやDVDは一度書き込んだものなので、内容を書き換えることが一切できなくなっています。
じゃあ、フラッシュメモリみたいに自由に書き込みができて、しかも電源を切ってもデータが消えないって、どゆこと?ってなりますよね。
書き換え可能なROMの登場
1971年に、ROMはROMでも、半導体に紫外線を当てることで内容を消去できるというROMがインテル社によって開発されました。これをEPROMと言います。これによって、ROMなんだけどデータを消して書き直せるようになったので、制御機器の試作品などに使われるようになりました。EPROMには紫外線を受ける部分がチップの中央にあって、そこが基板剥き出しになっているのが特徴です。
そしてインテルは1978年に、もっと画期的なROMを開発しました。EEPROMと言って、電気を流すことで内容を消去できるようにしたものです。紫外線を照射する必要がないので、手軽ですね。これが現在広く使われているフラッシュメモリの原型となりました。
EEPROMにある2つの限界
ただしこのEEPROMやフラッシュメモリには限界というものが存在します。それも2つ。書き換え可能回数の限界と、情報を記録できる期間の限界です。
EEPROMに情報を書き込む際、一度全部「1」を書き込んでいき、その後で「0」を書いていくんですが、これを繰り返していくとシリコン酸化膜が絶縁破壊を起こしてしまい、記録内容の「0」と「1」の区別がつかなくなります。これがいわゆる、フラッシュメモリにも起こりうる経年劣化と呼ばれるものです。
僕の経験上、まず書き込み時にエラーが起こるようになり、その後でフラッシュメモリ内に存在しているファイルが読み取れなくなるような現象が起こるようになりました。そしていつか、ドライブとしても認識しなくなります。
つまり、普段使っていて、ファイルを保存したりコピペするような時に、何故か失敗する。そんな現象を見かけた時には、既にそのフラッシュメモリには終わりが始まっているということです。
今回僕は、学校から支給されたタブレット端末SurfaceGoのSDカードスロットに常に入れていた200GBのMicroSDカードでその現象を確認したので、購入を決意したのでした。
きっかけはOneDriveの同期がなかなか進まない現象
SDカードの終わりの始まりを感じたのは9月30日のことでしたが、今思えば夏休み前あたりからその傾向があったんだと振り返っていて気づきました。
SurfaceGoに挿しっぱなしにしてDドライブとして活躍していたSDカードに、普段からOneDriveの同期先のフォルダを置いていたのですが、いつからか同期が完了しない現象が続いていました。
OneDriveの同期がなかなか終わらないという現象はこれまでにもちょくちょくあって、原因となるファイルを削除することで同期がすんなり進むなんていうことがOneDriveにとって割と日常でした。今回同期がなかなか終わらないのも、きっと何か同期を阻む原因のファイルがあって、それさえ特定すれば解決できるものかと思っていたのです。
同期がなかなか進まない原因となるファイルを特定するには結構大掛かりな作業を必要とします。一度OneDriveに保存しているファイルのバックアップを取っておいて、OneDrive上から全て削除します。その上で、少しずつファイルを元の位置に戻していく。この作業の中で、常に同期の状態を見張っておくわけです。そうすれば、同期がうまくいかなかったタイミングで戻したファイルが原因だということがわかって、原因を突き止めることになるってことです。
そうとなれば早速バックアップを取って、一度全てのフォルダを削除せねばと思って、作業を始めました。そうしたらね、すぐに異変に気づいたんですよ。OneDriveの同期に使っていたフォルダの一部が、削除できなくなっていました。そのフォルダの中に保存されていたファイルを消すことはできたんですが、フォルダそのものが消せなくなっていました。
もしや!と思って、Dドライブに割り当てていたMicroSDではなくCドライブにOneDriveのフォルダを用意して同期を始めたら、これまでのトラブルが何事もなかったかのように同期が進んで、あっという間に終わってしまいました。
つまり、MicroSDカードそのもに原因があったというわけです。実際にCHKDSKコマンドを使って、エラーの修正作業も行いました。
そしてこの現象を見て、ちょっと嫌な予感がしたんですよ。SDカードでエラーが出たということは、前半部分で説明したフラッシュメモリの寿命が近づいているのかもしれない。もし寿命が近づいているのならば、書き込み時にエラーが多くなってしまい、その次には読み取りすらできなくなってくる。
となれば、このまま使い続けることそのものが、そもそもリスクだということです。
新品のMicroSDを購入
我が家ではお小遣い制ではなく、購入する物品の品目や内容によって、家計から出すのか、僕の資産から出すのかが決められます。我が家の決裁者は妻のゆかさんです。
SDカードが壊れそうなこと、一刻を争うこと、今ポチったとしても届くのが翌日になってしまうこと、完全に壊れてしまったら業務が回らなくなってしまうことなどを1日かけてプレゼンし、購入代金として5000円捻出してくれることが決まりました。そこに追加で1000円ほど払って、SanDisk正規品の256GBを購入させてもらいました。
SDカードには正規品の他に、海外パッケージや並行輸入品などもAmazonで売られており、それらの方が若干割安です。ところがSDカードが壊れてしまった際に必要な保証がその分受けられません。
SanDiskも保証対象は、出荷元Amazon&販売元Amazonのみとしています。僕はこれまではSDカードは使い捨てるつもりで安いものを購入してきましたが、WindowsのDドライブとして酷使して、カメラとは違った速さで劣化していく環境で使うのなら、正規品の方がむしろ安いのではないかと考えるようになりました。
今回エラーが見つかった200GBのSDカードは、並行輸入品でした。保証対象外です。これはもう切り刻んで捨てるしかありません。
SDカードの永久保証なんて、すぐに受けられるんかいな?と思う方は、一度「SanDisk 保証」などで検索してみると良いと思います。実際に保証サービスを受けた方のブログ記事などが出てきて、結構すぐ対応してくれるんだなっていう情報が出てきます。それが今回の購入の決め手にもなっていました。
本当なら、もう1枚256GBを買っておいて、今使っているものの寿命が近づいてきたらすぐにでも差し替えられるようにしたら良いんじゃないかと考えていましたが、「あなたの使い方で、どれくらいで寿命が来るのかがわかったんだから、3年後に考えたら?」というアドバイスを得て落ち着きました。
ギリギリセーフ
さて、OneDriveの不具合をきっかけにSDカードの寿命が近づいていることに気づいたわけですが、今度は次の作業が待っていました。 これまで使っていたSDカードから、新しく買ったSDカードへのファイルの移行です。
Dドライブとして酷使してきたSDカード、そこにはエディタなどのツール関連や、撮影した学校行事の写真、ObsidianのVaultなどが保存されています。 逆にCドライブにはあまりファイルを保存しないようにしています。学校に支給される端末は5〜6年ほどのリース契約なので、そのタイミングで行うファイルのお引越しを楽にするためです。お引越しの際に、SDカードを抜き差しするだけで大部分の移行が完了すると、かなりスマートだと思うわけですよ。
ただし今回はそのDドライブそのもののお引越しなので、かなり時間がかかりました。ファイルのコピーの様子を見ていると、だいたい容量の大きなファイルを書き込む方がかかる時間が短く済む傾向があります。時間がかかるのはむしろ小さいファイルが無数にあるような場合です。例えばGoogleChromePortableのように、普段ならCドライブにインストールして使うようなアプリをUSBメモリに入れて使うようなもの。これの移行にかなり時間がかかります。今回はポータブル版のアプリはバージョンのアップデートも兼ねて移行を諦めました。その代わり、新たに新しいSDカードにインストールする形で揃えることにしました。
その時です。
ついに一部のファイルを読み出す時にもエラーを吐くようになりました。 タイミングとしては、必要なファイルをすべて取り出して時間が余ったので、先ほど避けていたポータブル版のアプリのフォルダを試しに移していた時でした。
何度やってもエラーが表示されて、これはもう、どうしようもないなという状態でした。
寿命が来た。そう直感しました。もうこのSDカードを、再フォーマットしてでも使おうとも思いません。使うだけでファイルがどんどん消えていきそうな魔のSDカードに仕上がりました。
買って良かった。間に合った。大切なデータを保存している媒体は、壊れるまで使い続けたらデータを失います。あと少しでも使い続けていたらどうなっていたことか。考えるだけでも恐ろしいです。
けどまぁ、これで今回のSDカード騒動が無事解決し、めでたしめでたしで終わったのでした。
めでたしめでたしのその後
買って良かったという話をそのままゆかさんに報告しました。やっぱりこのタイミングで買うのが正解だったのだと主張したくて。その根拠に、異変を感じたら即行動することの正しさを伝えたかったつもりで夕飯の時に話題にしました。
そうしたらね、
「あなたがデータを大切にしていることはわかった。でもね、大切に保管しなきゃいけないデータの容量が多すぎる。この前だって、デスクトップ用にHDD買ったじゃない。それも12TBを4台も。それでも足りなくて、学校で支給されたタブレットにも256GB追加して、そんなに何に使うの?普通そこまで使わないよね?本当にそこまで容量が必要?」
あっだめだ、言い返せない。
だってObsidianが、 Evernoteが、ポータブル版のアプリが。
「それは・・・、僕が魚住惇だからです。必要だから買いました。」
「どうせその256GBだって、すべての容量を使い切る前に寿命が来るんでしょ?だったらその半分の128GBのSDに入る分に容量を抑えるとか、安く済ませる方法はあるよね?」
返す言葉が、見当たらない・・・!
「3年後にまた相談しましょう。次からは新しく買わずに、無期限保証とやらを使ってください。交換に出している間のファイルは自分でどうにかしてね。」
ああ、しっかり先を見据えて話をされてるから、何も言い返せない。
Wordでオブジェクトをグループ化するのにも苦労していたゆかさん、お金のこととなるとかなり厳しく審査をされます。論理的にプレゼンを行い、必要性が認められなければ、決済は下りません。
ちなみに最後に言いますが、僕は結婚を後悔しているわけでも、今回書いたこの内容が愚痴だとも思っていません。むしろ、これだけ真剣に僕のこだわりに向かってくださることに、感謝しています。自分と似たタイプの方と結婚していたら、お互いに必要経費♪必要経費♪と散財して、今頃大変なことになっていたことでしょう。お互いに思っていることを主張し妥協点を見出せる方と出会えて、本当に良かった。良かった良かった。
一つだけ、気がかりなことがあります。2019年にSDカードを購入したときも、多分相談してんだよな。あれはなんで許してくれたんだろか。それともこんなに早く壊れるなんて思ってなかったから良かったんだろか。
2019年。まだ僕がNotePlan3ともObsidianとも出会ってない頃の話。そんな頃の話なんて、記録にございませんね。
変なところで終わりますが、今回のnewsletterは以上となります。SDカードは本当に買って良かったです。3年後はどうなるかしら。 「いいね」を押していただけるとうれしいです。内容に関するご意見ご感想がありましたら、「#こだわりらいふ」をつけたツイートや、Substack内のコメントまでお願いします。