ウルトラマンブレーザーから学ぶ、理想のミドルリーダー
生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
ウルトラマンブレーザーから学ぶ、理想のミドルリーダー
魚住惇、37歳。二児の父。学生時代には「25歳くらいには一人暮らしでもしていて、結婚を考えている彼女がいるんだろなぁ」なんて思い描くも、実際には教員採用試験合格は28歳の時。結婚は32歳のとき。
そして気がつけば、年齢的にはなんらかの主任を任されても良い年になりました。でも実際にはまだまだ担任としても半人前で、年齢だけが蓄積しているのではないかと感じている、今日この頃です。
この歳になるとね、アオハル系学園ドラマをあまり見なくなりました。それよりも、主人公が40代だけどまだ結婚してないっていう人物設定のドラマなどを好んでみています。
Netflixがそういうドラマをお勧めしてくるんですよ。それでいて、確かに自分の好みにそこそこマッチしていて、見ていて面白い。続きが気になる。
そんなタイミングで、子どもが今年で保育園の年少さんの年になって、自分が物心がついて、記憶として覚えている中で一番小さい頃くらいまで成長してくれました。
息子を見ていて思うんですよ。あぁ、自分もこれくらいのときに、こういうことを考えていたなぁとか。こうやって言われるのが、嫌だったなぁとか。
そして、親子で見るウルトラマン。過去の配信でも、僕はウルトラマンについて熱く語っていました。
そこでふと、子供の頃にウルトラマンを見ていた時の、親の反応を思い出すことになったのです。
うちの親はウルトラマンと聞いて、ベースカラーがシルバーの光の巨人だということは、理解できています。怪獣を戦う時に、手から光線を出すことももちろん知っています。
ただし理解についてはそこまでで、ストーリーまでは追っていない感じがしました。あくまで僕が幼少期の頃の、親の理解度ですけどね。
親にとってウルトラマンとは、子どもが好きだと思っている対象の一つであり、ウルトラマンの特徴だとか、そこで繰り広げられるお話の内容そのものに関しては、全く興味がなかった様子でした。
まぁ自分の子供が好きなキャラクターだという認識をしてくれていることそのものに、本来は感謝すべきなのでしょうが、それよりも僕は、自分が好きだったものの内容に対する理解が、親から感じられないことが少しショックでした。
そこまで親に求めるのは、酷なのかもしれませんけどね。
例えばガンダムだと、人間ドラマ、政治的背景、モビルスーツなどの要素が重なることで人気を博しています。しかし興味のない人から見れば、ガンダムという名前のロボットが出てきて敵をやっつけるとしか認識しません。
これの何が問題かというと、ガンダムに対する理解がその程度に留まってしまうことで、アニメや特撮などの作品に奥深さがないものとして一括りするようになり、更にはそれらが好きだと言っている人そのものを"幼稚なものから卒業できない可哀想な人だ"と思い込んでしまうのです。
ゲーム機をみんなファミコンと呼ぶことにも、似たような何かを感じます。
今でこそ、ディズニー、ウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊シリーズ、ポケモンなどの作品は、長期にわたってシリーズ展開することで、親子で楽しむものに変わってきました。
僕の親は妖怪人間ベム世代で、東京ディズニーランドが開演した時は社会人です。きっと子どもの頃に夢中になっていたものは、どこかで卒業してきたのでしょう。
では僕はというと、独身時代の頃もウルトラマンを見ていました。全ての作品に目を通したわけではありませんが、一人暮らしする頃にもウルトラマンメビウスはチラッと見ていました。光の巨人そのものが好きだというのももちろんありますが、それよりも僕は、その洗練されたストーリーや、登場人物の心意気に魅力を感じていました。
子ども向けの作品なので、大部分はターゲット層の子どもが夢中になるように作られています。でもそれ以外の部分で、子どもじゃない目線からその作品を見るときに、大人だからこそ気づけることがあるわけです。
今ではこうした作品を作るスタッフさんも、幼少期にその作品に夢中になった1人だったりするので、かつてそのヒーローが好きだった大人をもターゲットにしてきます。
ウルトラマンだと、子どもと一緒に見ている親に向けたメッセージを入れてきたりします。
前置きが長くなりましたが、今回は2023年7月8日から放送が始まった「ウルトラマンブレーザー」の第一話で、僕が感じた「良いミドルリーダー像」について、お話ししたいと思います。
SKaRD隊長 ヒルマゲント
ウルトラマンブレーザー – 円谷ステーション – ウルトラマン、円谷プロ公式サイト
ウルトラマンには、初代マンに登場する科学特捜隊をはじめ、防衛組織が存在していることがよくあります。(まれに、ウルトラマンギンガのように、組織ではなく個人や仲間で戦う世界もあります。)
2023年放送のウルトラマンブレーザーには地球防衛組織として「特殊怪獣対応分遣隊SKaRD」が存在しています。
事前情報として公開されていた頃から、ウルトラマンブレーザーに変身するヒルマゲントが、その組織の隊長であることがPRされていました。
これまでウルトラマンシリーズに出てきた防衛組織では、比較的若手の隊員がウルトラマンと一心同体となるか、偶然にもウルトラマンの力を借りることになってから組織に入隊するケースがほとんどでした。
このヒルマゲントは、隊長として部下を率いる存在でありながら、自らウルトラマンに変身して怪獣と戦います。ウルトラマン史上初めてのことです。
しかも、公式サイトのプロフィール情報によると、ヒルマゲントは30歳で、同い年の妻と7歳の息子がいるという設定です。年齢から考えて、大学を卒業したのと同時に結婚して、すぐに子供に恵まれるという順風満帆な人生を送っています。
ここまでのプライベートな設定も、過去のウルトラマンではなかったことです。まるで、子供と一緒にウルトラマンを見ているお父さんやお母さんをターゲットにしているかのような設定です。
第1話では、まだSKaRDという組織は存在せず、ウルトラマンブレーザーに初めて変身するお話が描かれていました。PVや事前情報に登場したヒルマゲントはSKaRDの特徴である青い作業服を着ていましたが、第1話ではまだ防衛軍の隊員という位置付けでした。第2話からSKaRDが組織され、メンバーが集まっていくのだと推測しています。
劇中での部下との会話の中で、すでにヒルマゲントは後輩たちから慕われていました。無線での通信のやり取りの中でも、「あなたが噂のヒルマゲント隊長ですか」と他の隊から言われていました。それだけ彼の行動に、すでに注目が集まっていたんだと思います。
第1話のあらすじ
さて、先週の土曜日に放送された第1話では、SKaRD設立前のヒルマゲンド隊長が、どのようにしてウルトラマンブレーザーと出会い、変身能力を身につけたのかが描かれていました。
と言っても、ネタバレになってしまいますが、劇中ではヒルマゲントがピンチに陥った際に、左腕に変身ブレスレットが突如として現れ、半ば強制的に変身させられていた描写がありました。
第1話だけでは、ブレーザーがなぜ地球に来たのか。地球に来た目的が何なのか。一切明かされずに終わりました。
過去作品でのあるあるは、勇敢に怪獣に立ち向かう若手隊員の命が儚く散りゆく時に、ウルトラマンが助けに入り、体も心も一つになって変身して再度怪獣に立ち向かっていく展開です。
今回のウルトラマンブレーザーでは、そういった描写が描かれていませんでした。いきなり変身しました。
ただしその前段階では、突如日本に飛来してきた宇宙怪獣バザンガの侵攻を阻止するために、防衛軍が立ち向かう描写から物語が始まります。
まず、宇宙から飛来してきた怪獣バザンガは、鳥の姿をしています。東京に降り立ってからは、鳥の姿をしているものの、飛んでおらず歩行していました。
防衛軍が立案した作戦は、戦闘機による空からの攻撃と、歩兵による陸からの攻撃を行うものでした。
歩兵部隊には、今回の作戦の目玉兵器である、怪獣バザンガの体内活動を非活性化するための特殊弾が配備されていて、戦闘機による攻撃でうまくバザンガを誘導しつつ、比較的装甲が弱そうな関節部分などに特殊弾を打ち込むというミッションが課せられていました。
第1話ではナレーターによる解説が一切なく、代わりに新米兵士が作戦内容を復唱する形で、視聴者に様子を伝えていました。ナレーションに頼ることなく、役者のセリフから状況を視聴者に想像させるという手法も、見ている人をハラハラさせてくれます。
ヒルマゲント隊長率いる歩兵部隊は、当初の予定通り降下でき、目標ポイントまで移動することができました。あとは、特殊弾をバザンガに打ち込むだけです。
逆らえないから提案をする
ところが事態が急変します。バザンガの攻撃が人類の想像以上に強く、周辺のビルで火災が発生することで、歩兵部隊にも危険が及ぶ可能性が出てきました。
ここで防衛軍の上層部は、苦渋の決断を余儀なくされます。特殊弾を打ち込むという作戦を中止し、それ以外の戦力を注ぎ込むという総力戦に切り替えるという指示を現場に出しました。
バザンガが目視できる場所に臨時の指揮所が配置されていましたが、バザンガの攻撃による被害が甚大となることで、指揮所を放棄せざるを得ない状況にまで発展してしまったのです。
劇中では、指揮所にいる司令官が、上層部から作戦を中止する旨を聞く場面が出てきますが、悔しい思いを露わにします。その司令官も、バザンガには通常の攻撃が役に立たず、特殊弾を直接体の脆い部分に打ち込むほうが効果があると予想していたわけです。
しかし時すでに遅し。バザンガがすぐそこまで迫ってきたので、指揮所では撤退が始まりました。
その様子を現場から見ていたヒルマゲントは、把握した状況を部下に伝えるために口にします。
「あー、ありゃ指揮所は撤退したな。」
それに続いて部下たちも、
「ですね」
「え、じゃあ、俺たちが来た意味は?」
と困惑してしまいました。
歩兵部隊にとって、指定された場所まで降下しておきながら、まだ特殊弾も食らわせずに撤退するなんて、「せっかくここまで来たのに」と思うわけです。怪獣がすぐそこまで来ていて、あとはロケットランチャーを発射するだけ。でも、あと少しのところで、撤退命令が出てしまった。
そこでゲント隊長と部下とのやりとりは、こう続きます。
ゲント隊長「まぁあれだ。上からの命令には逆らえないからな。」
部下「そんな!じゃあでもどうするんですか」
ゲント隊長「逆らえないから提案をする。」
なんとこのタイミングで、ゲント隊長は作戦実行中に新たな提案をすると言い出しました。
すでに指揮所では上層部からの命令は絶対だとして、いくら特殊弾が有効だと確信していても、指揮所を放棄している最中でした。
そして、バザンガに対して一斉攻撃を仕掛けなければならないので、歩兵部隊だって早くそこから撤退しなければならない状況です。
しかし、指揮所の司令官やゲント隊長は、本当は外からの爆撃よりも、ちゃんと関節などの肉が見えているところをよ〜く狙って、特殊弾を打ち込む方が効果があるんじゃないかと思っているわけですよ。
上層部からの命令は絶対です。ただしそもそもの目的は、怪獣バザンガの活動停止のはず。何がなんでも爆撃をしたいわけではありません。
であれば、最終的に撤退することになったとしても、特殊弾は放っておきたい。それでもダメなら諦めがつく。
そこでゲント隊長は、自分らの現在地にバザンガが歩いてきてくれないかと考えます。
ゲント隊長「上飛んでるの、どこの部隊?スカイハンターとユリシーズ?」
部下「はい」
確認のあと、それぞれ無線を繋ぎます。
ゲント隊長「この総攻撃なんだが、明らかに効いてないよねぇ?それで、そろそろ君らも弾切れだよね??」
ゲント隊長「どうせこのまま打ち尽くすんだったら、ちょっと、ちょぉっとだけでいいからー、俺たちがいる方向にバザンガ誘導してくれないかな?できる?」
隊長は戦闘機部隊にお願いして、自分たちがいる場所の近くまでバザンガを誘導するようお願いしたのでした。
(ちなみに、ウルトラマンファンならお気づきと思いますが、戦闘機の飛行音が、ウルトラセブンに出てくるウルトラホーク1号と同じです。僕たちはこの音を聞いて、怪獣に立ち向かう戦闘機が飛んでいる音なんだと認識するのです。)
このシーンが個人的にとても気に入っていて、気がつくと何度も見ていました。まぁ結局そのあと、特殊弾をお見舞いしても結局バザンガは倒すことができず、ウルトラマンブレーザーに変身することになったわけですが。
このゲント隊長は、上層部の命令に背くことなく、その命令の本質を理解しながら、周囲との調和を保ちつつも任務を遂行していくんですよ。
しかも、仲間との折り合いをつけながら。
この隊長の姿に、感銘を受けました。(この長文の中で、一番これが言いたかった。)
チームで仕事をしていると、どうしても上層部からのお達しがあり、それを現場が受けて対応します。ミドルリーダー、つまり中間管理職という立場は、現場の職員でありながら周囲を取りまとめて、仕事を円滑に進めていくのが仕事です。
ちなみにこのゲント隊長が口癖のように言っているのは「俺が行く」で、重要な局面で自ら行動し、道を切り開いていく姿が劇中で描かれています。
正直この行動が全て正しいかどうかは、わかりません。優秀な部下がいればその人に任せることだって選択肢としてありますし、常に隊長が前に出ることが良いこととも限りません。
ただ、ここぞというときに、部下を引っ張ってくれる上司の姿は、カッコ良いなと思います。そんな姿を見せられてしまったら、どこまででもついていきます!と言いたくもなります。
ヒルマゲント隊長は、そんな理想のミドルリーダーの、一つの形なんだと思います。
今こそ試される、お願いする力
最近話題のChatGPTのプロンプトは、自分がChatGPTの上司となって、部下に対して仕事を割り振ることをイメージすることがポイントだと言われています。
よくある失敗例として、ChatGPTに特定の人物の名前や、Googleのように検索キーワードを入れると、割とトンチンカンな答えを返してきます。
その返答内容を見て、「なんだ、全然知らないじゃないか。大したことねーなー。」とマウントを取ったり、「まだまだ生成AIの精度はこの程度ですね」なんて言う人がまれにいます。
これは生成AIに対する大きな誤解で、上司が部下に対して仕事を振るという例えで言うと、トンチンカンな答えしか返すことができないような、アホな質問しかできていないとも言えるわけです。
では、信頼される上司として、どんな言葉を部下にかけると、円満にことが進むのでしょうか。
そんなことを考えながら、僕は今後、ウルトラマンブレーザーを通して、ヒルマゲントという人物が出していく答えを、追っていきたいと思います。
Youtubeではウルトラマンブレーザーの見逃し配信が公開されています。
ウルトラマンそのものに興味がない方でも、前半のヒルマゲント隊長の、周囲と折り合いをつけながら怪獣退治をしていく様子を、ぜひご覧になってみてください。
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