美容師もフリーランスの時代へ
生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
美容師もフリーランスの時代へ
先週の土曜日に、美容院で髪を切ってきました。割と自分の好みの髪型にしてくれたので、それだけで気分が良い状態が続いています。なんだか昔に帰ったようです。
さて今回は、美容院でカットしてもらっている間に美容師さんから聞いた、美容師さんの間で個人事業主が増えているという話をします。
なんでこの人だけ指名料が?
僕の今の行きつけの美容院は、昨年2021年の8月にオープンしたばかりのところです。それまで通っていたところよりも近所だったことと、価格が魅力的だったので、2022年に入ってから鞍替えしました。
その美容院に先月行った時に、従業員さんが増えていました。それまではずっと男性のオーナーさんと、女性の方の2人体制で、ちょうど行った時に見知らぬお兄さんが接客されていたのを見て「おー、人を雇ったんだな」と思っていました。
オーナーさんに「従業員増やしたんですね。」と話してみると、「お陰様で2人では回せなくなってしまいまして」と満更でもないご様子。なんか商いが繁盛していく様を見ると、個人的には応援したい気分になります。
その時はそれだけで終わったんですが、カットを予約をするときに「ん?」と思うことがありました。
その美容院はホットペッパービューティーと契約していて、サイト上で予約が可能となっています。僕は今の時代、利用したいと思える美容院の条件は「Web予約できること」と「電子マネーで支払いができること」で、今のお店もそれができるから鞍替えを決意したという事情もあります。
で、その予約画面上に出てきた、美容師さんの指名する画面、僕はいつもオーナーさんにカットしてもらっていたのでその人の名前のところをタップして次に進もうとしたのですが、気になる表示が目に入りました。
オーナーさん、指名料0円
女性スタッフさん、指名料0円
新人さん、指名料550円
ん?ちょっと待った。なんでこの新人さんだけ指名料が発生してんの?オーナーさんにカットしてもらう方が安上がりっていう設定、どゆこと。
この価格設定が少し気になるものの、人によって予約枠の表示が変わって、僕が希望した日程に空いているのはいつものオーナーさんだけだったので、今回もいつも通りの内容で予約を済ませました。
どうしても腑に落ちにない指名料、彼は一体何者なのか。そればっかりが気になったまま、美容院に向かったのでした。
彼は個人事業主なんです
美容院でカットしてもらい始めたその時、どうしても気になっていた指名料の件を、オーナーさんに聞いてみることにしました。
魚住「予約をするときに、新人さんにだけ指名料が発生しているのを見て疑問だったんですよ。彼は何者なんですか?」
オーナーさん「あぁ、あれね。彼は個人事業主として契約していて、正確にはうちの従業員じゃないんですよ。言わば、店の環境を貸していて、その人はここを間借りしてお客さんを相手にしてるんですよ。フリーランスっていうやつですね。」
はぇ〜〜〜、美容師さんにもフリーランスが存在するとは知らなんだ。IT企業やWeb業界でのフリーランスの方達を僕はよく知っているので、それに似た世界が美容業界にもあるのかと思うと、聞いているだけでワクワクしました。
そこからカットが終わるまで、というかドライヤーをかけている時ですら、ずっとその話題で話していました。もちろんシャンプーの時も喋りっぱなし。
オーナーさんの話によると、お店と個人事業主として契約すると、カットやカラー、パーマなど、お客さんに対応したうちの契約時に決めたパーセンテージを経営者に支払い、残りを自分の取り分としてもらうのだとか。
従業員としては働きたくないけど、お店を経営するのも面倒で、働いた分だけのお金をもらいたい。そんな考えの人にマッチした働き方ですね。
これまではお店の正社員かアルバイト、もしくは派遣という雇用形態が多かったそうです。
美容師さんの派遣だと、お店が忙しい時に派遣業者に依頼をして、日当を渡して働いてもらうというシステムです。まぁ良く話に聞く派遣さんです。でも派遣に登録した美容師さんにとって、働く日によって美容院の場所がコロコロ変わったり、行き先によってはお店との相性があったりと、あまり良い働き方ではないそうです。ちなみに美容師の派遣さんは、交通費が支給されないこともあるようで、それでも登録した派遣元から行けと言われたら、多少遠くても行かなければならないという話も聞くことができました。
派遣さんに対してあまり良い印象がないのはお店側もだそうで、普段働いてくれている従業員よりも高く設定した日当を派遣元に支払うようです。なので、丸1日予約で埋まっている時など、高い日当を支払っても損しないような、本当に忙しいときだけ呼ぶように心がけていると聞きました。それでも毎回決まった人が来るわけではないので、新し人が来るたびに店での働き方を1から説明しなきゃならないってのも面倒なポイントだとか。
それと比べて個人事業主としての契約なら、オーナーはお客さんの対応をした分だけを払えば良いので、自由な働き方で助かるとのこと。ホットペッパービューティーを使って予約をする際に、それぞれの予約枠さえ設定しておけば、個人事業主さんが入れるところだけ予約可にもできます。お店にとっても事業主さんにとってもWin-Winの関係のようです。
有名にならないと稼げない時代?
ただメリットだけではありません。当然デメリットも存在します。まずは個人事業主になるタイミングです。どの職業にも言える話ですが、自分に対してお客さんがついてきてくれる状態になるまで、当然それなりの経歴やスキルが求められます。お店としても経験が浅い人と契約したくありませんからね。なので将来的に個人事業主として働くとしても、見習いの期間に修行をしなければなりませんし、手につける職なので経験年数も必要です。髪型の流行などもおさえておく必要もあります。これはオーナーさんも同じですけどね。自分個人に対してお金を払ってもらえる存在にならないと、個人事業主は務まりません。
それから、どこかのお店の従業員として働いている状態から独立する場合は、それまでそのお店に来てくれていたお客さんを次の勤務先に引っ張ってはいけないというルールが存在するそうです。なので、美容師さんはお客さんとの連絡先の交換は原則NGだと聞きました。SNSを通して次の勤務先を突き止めたり、あくまでお客さんの自発的な行動なら止められませんが、美容師さんからの次の働き先への勧誘はご法度とのことでした。
あとは知名度。これはTwitterなどで見かける「駆け出しエンジニア」と似たような感じで、お仕事をもらうためには自分のことを知ってもらわないといけないというお話です。最近ではFacebookやInstagram、TikTokなどのショート動画で理想の髪型にチェンジする動画がたくさん投稿されています。あれを見て、自分もああいう感じになりたいと思う方が、その美容師さんを求めて来店するわけです。僕がお世話になっているオーナーさんは「自分はそういうのは苦手だから、ちょっとねぇ」というタイプのオーナーさんですが、イケイケな美容院だと、お店の方針としてSNSにアップするという方針を設定しているところもあるとのこと。美容師さんがSNSを活用する事例としては、個人が自分の集客のためにやっている場合と、お店のノルマとしてやっている場合があるわけですね。
それでもお店を間借りさせてもらう契約だと、そのお店で働き続ければ指名してもらえる可能性も上がるので、SNSを使わなくてもお店のお客さんを対応することは可能ですし、初めて対応したお客さんがリピートしてくれたら御の字。SNS以外にきっかけが全くないというわけではありません。
長く美容師を続けるための選択肢
厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、美容師が含まれている「生活関連サービス業、娯楽業」の離職率は高卒で56.9%、大卒で46.5%です。グラフ化されている資料の中には短大・専門学校卒の欄がなかったので推測ですが、3年間の間に半分くらいの美容師さんが離職しているのではないかと推測します。
見習い時代は給料が安く、一人前の美容師として働くとしても従業員のままでは3年間で半分近くの人が辞めてしまう。ならば独立して自分の美容院を経営する側になるしかない。そんな世界の新たな選択肢が、個人事業主契約というお話でした。有名になってファンがつけば、指名料も上げることができて、自分自身の価値を高めることができます。働く時期や時間帯も自分で決めることができて、プライベートとの両立もしやすいです。果たしてそれが、誰かのお店の従業員として働いたり、いろんな美容院に派遣される派遣美容師として働くよりも良いのかどうか。人によって捉え方が違ってくると思います。これは学校で働く教員にも同じことが言えて、正規の教員で働くのか常勤講師として働くのか非常勤講師として働くのかの違いによって、雇用形態が全然違います。ただ一つ違うのは、美容師さんなら経営者になれるということですね。学校の先生の場合は私立でないと経営側にはなれませんから。
美容師の個人事業主、聞こえは良いかもしれませんけど、調べたらいろんな闇の部分も見えてきそうな実力社会だと思います。お客の立場からでは、その美容院で働くあの人が正規の社員なのか、個人事業主なのか、アルバイトなのかも見分けはつきませんし、今回の僕みたいに敢えて聞かないと教えてもくれません。
ちなみに今回のnewsletterの話題はこれだけです。iPad Pro?もう買ったから良いじゃないですか。たまたま美容院に行く機会があって、予約の段階でなんかいつもと違う様子だったので、これは根掘り葉掘り聞いてみようかと思ったわけです。
何より僕は、美容師さんとお話するのが好きなんですよ。カットの最中に雑誌やスマホもほとんど見ません。髪を切ってもらっている間、ひたすら会話してます。学校と家庭以外の人と話す貴重な時間なので、それを無駄にしたくないって思うんです。
美容院に行く度に、よく美容業界を目指す高校生に話せる話題や、美容師あるあるの話などを聞いたりしています。そういった話を知らないまま進路を語ると、「美容師ね、大変なんだよ?あなたにできる?」みたいな安っぽくて薄っぺらい言葉しか出てこなくなると思うからです。生徒から見たら「あ、この人、美容師のこと何も知らねーな」って思って、次から話を聞いてくれなくなる可能性だってあるわけです。
それでも今回のお話は、初めて聞きました。終身雇用がいろんなところで崩壊しているのを肌で感じました。この先美容師さんだって、美容師の仕事だけをやっているだけじゃ、生きていけないかもしれない。それは学校の先生だって一緒で、もう学校で働いているっていうだけじゃ、時代においてかれるんだろうなって思います。
妻のゆかさんには申し訳ないけど、こういう話を聞くと、自分が多趣味で良かったなって思います。そうそう、先日、プラモデルを塗装するためのエアブラシを購入しました。これまで素組みに墨入れをした程度でしたが、部分塗装を始めようと考えています。
お金はかかりますが、まだまだ新しい世界を見たい。挑戦したい。新しいことを知りたい。そう思い続けながら今日もこだわりながら生きてます。生きることにこだわりを。
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