生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
仕事術系の本に対する違和感
まずはじめに。僕は仕事術系の本が大好きです。中学生の頃から記憶術の本などを読んでいました。小説などの、物語について書かれた本を読むのも好きなんですけど、どちらかというと、ノウハウ系の本への関心の方が高かったです。
なんていうか、その本を読むことで自分の能力値が上がる感じ。魔導書を読んだらその魔法が使える、みたいな。仕事術系の本にはそんな魅力があって、気になるタイトルをみると、「ほほぅ、これを読んだら仕事ができるようになるのか」なんてワクワクしながら買っていました。
自分がまだ知らないことを知ること。ノウハウを知って、本を読む前の自分から少しでも変化した自分になれるかも。そう思うのが、僕の読書に対するモチベーションです。
手帳も好きなので、手帳術の本も大好きです。他の人がどうやって予定を管理しているのか、どんな手帳を使っているのかは、とっても気になります。
この手の本が大好きだからこそ、ここ最近は、違和感を覚えるようになりました。
術や技って、本を読むだけで習得できるものでしょうか。
ここ最近の仕事術系の本は、とにかく分かりやすいことが優先されます。極限にまで単純化した説明で、丁寧に解説された内容のものが多いです。
仕事にダイエットにコミュニケーション、断捨離。その道で成果を出した人たちが、それらのノウハウを本として残されています。でも実際には、ダイエット本を読んだからといって、すぐに痩せるわけではありません。
ノウハウそのものを取り入れて変化しなければ、以前の自分となんら変わらないわけです。知識が増えただけで行動が伴っていなければ、口だけ達者になった。それだけ。
ではなぜそのような、断捨離本を読みまくっても部屋が片付かないようなことが起こるのでしょうか。
もちろん、本の刺激を受けて本気でダイエットに目覚めて美しい身体を手に入れたり、タスク管理の達人になった人も中にはいると思いますけどね。ただしそういう人たちは、その本の内容を100%再現したのかというと決してそうではなく、うまく取り入れられる部分とそうでない部分を見極めた上で、自身を変革させたんだと思います。
ということは、こうしたノウハウ本において、読者の方にとって役に立つ本というのは、読み終えた後に実際に変革を促すことができたかどうかが重要ではないかと思うんですよ。もちろんビリギャルのように、エンターテイメントとして楽しむサクセスストーリーも、読み物としては面白いですけどね。
僕は過去に、タスク管理の授業をやったことがあります。でも実際にチェックリストを作ってくれる生徒は40人8クラスのうち1人とかでした。話を聞いた感想を書いてもらったことがあるんですが、「先生の話は魅力的だったけど、僕はやっぱりそれくらいは頭の中でやるので、特に書き出したりはしないかなと思いました。」とか平気で書いてくるんですよ。まぁ包み隠さず自由に書いてねって僕が言ったからかもしれませが、その生徒は提出物を出さないことで有名な生徒でしたけど。
ただのノウハウを、ノウハウとして伝えただけでは、聞いた側にはあまり刺さらず、その人の生活があまり変わらない。そんな可能性もあるのかと、その生徒を通して思い知りました。
どうしたら、聞いた側の心に残るような形で、ノウハウを伝えることができるのか。これまでそんなことを考えてきました。
ノウハウを伝える手段としての物語
話は変わりますが、Netflixで配信されたドラマ「サンクチュアリ聖域」を全話見ました。相撲の知識はほとんどありませんでしたが、ハラハラする展開に泣けるエピソードでした。
そして物語が終盤にさしかかった時の、あの盛り上がり。部活動顧問の1人として、スポーツ選手のサクセスストーリーの中で日々の努力にフォーカスが当たると、もうそれだけで込み上げてくるものがあります。
あの場面で終わるってのが本当に惜しいです。続編早くやってほしい。
さて、サンクチュアリ聖域から僕が学んだことはなんでしょう。エンターテイメントとしては十分過ぎるほど魅力的ですが、僕が感じたのは、昨今のコスパ重視の考え方に対するアンチテーゼでした。
主人公の小瀬は、相撲の練習の際に全ての基本とされる四股という動きを無駄なことだと決めつけて、真剣に練習しませんでした。そんな動きはコスパが悪いことだと決めつけて、そこから学ぼうとしませんでした。
今はスポーツにもデータ分析が必須で、分析に基づいた効果的なトレーニングを積み重ねていく時代です。
ただし、作品中に出てくる相撲部屋はそういった理論が全面に出ているものではなく、昔ながらの根性主義。まずは見込みがあるかどうかで判断され、教え甲斐があるなと思われたら次の段階に進み、具体的な指導が入っていきます。
やる気&ど根性フィルターは、スポ根ドラマあるあるです。
この順番がコスパが悪いのか、時代遅れなのかはこの際おいときます。要は、コスパ主義の主人公が一度は無駄だと思ったものを受け入れて、それらを意味のあるものにしていく。視聴者にもわかる形で、それを演出したかったんじゃないかと僕は受け取りました。
物語を通して、大切なことを語る。そう、物語には、伝えたいメッセージが込められてるんですよ。
ギリシャ神話だって、日本昔ばなしだって、それらのお話しそのものを伝えるという意味ももちろんあるんですけど、それ以上に、その物語を通して伝わってほしいことがあったと思うんです。
教育的な意味とか、人生における教訓とかですね。
物語に夢中になりながら、同時に副産物としての教訓も同時に学んでいく。いや、副産物と書きましたが本当の狙いは教訓を広めることってこともあり得ますよね。
だからかな、よく居酒屋のトイレに貼ってある謎の十ヶ条みたいなものよりも、物語の方が、内容が頭に入ってくるんですよ。そして、ただのノウハウよりも学ぶものが多く含まれているような感じもします。
だから、学校DX「物語」
人の数だけ人生があり、ドラマを生きている。今回の本は、魚住惇という情報科教員が、「ICT活用=悪」という考え方が根強い勤務校で、どうやってDXを実現していったかという物語です。ノンフィクションです。
物語にしたからこそ、伝わるものがあるんじゃないかと思ったので、今回はノウハウに物語を織り交ぜて文章を書きました。
そうしたらね、iPad本よりもページ数が増えてしまったので価格が少しだけ上がっちゃったんですよ。
iPad本の頃との1番の違いは、文章量です。編集者さんが最初に台割の叩き台を作って、大まかなテーマにページ番号が割り振られるんですが、もう全部が全部はみ出てしまって。
最初の段階で、iPad本と同じページ数じゃ収まらーんってなりました。この時点で値上げ確定。
でも、それでもまだまだ全部が入りきらなかったので、巻末の広告などを入れるページも削除しました。
更に、印刷工程に入る前の最後の校正でも「2行はみ出てる場所がある!」なんて言われて、削りました。
もっと文章として面白おかしく表現している部分がたくさんあったんです。でも削ぎ落としていかないと、印刷そのものができない。
そんな感じに文章量が多すぎて困っていると、ふとiPad本を書いている時に苦労していたことを思い出しました。
iPad本の時は、ノウハウになりそうなことを必死に書き出して、アイデアを出していました。
一度でもノウハウを文章に書き起こしたことがある方なら共感していただけるかもしれませんが、自分が何気なくやっていることをどこまで書き起こして良いのか、わからないことが結構あります。
iPadの効果的な使い方なんてものがあったとして、自分が自信を持って公開できる内容があったとして、でも実際はその内容よりも、無意識で手ぐせのようになっているような、何気なくやっている行動の方が役に立ったりするんですよね。
iPad本の原稿を書くときに気を付けていたのが、自分がやっている行動を全て書き出すということでした。「これは書かなくても良いかも」みたいに思うものも、全部書く。
ただそれでも、自分がiPadでやっていることを書き出すってのが、かなり苦痛でした。それこそ編集者さんと打ち合わせて、ページ数も決まって、10万字を書き出す。それ自体が重荷になっていました。
そんなに自分に語れることってあるのか?もしなかったどうするんだ?みたいな不安が、ずっと頭の中でぐるぐるしていました。
でも今回のDX本は、その逆。これは自分でも驚いています。校正が近づいてくると、「あ、やっぱりあの話も入れたいな」みたいに文章がどんどん頭の中から出てきました。
タイミングとしては編集者泣かせもいいとこなんですけど、DX本の中には4月に書いた文章が結構入っています。
最終局面でかなり削りはしましたけど、僕が思っていること、調べたこと、歩んできた物語を詰め込みました。
あ、ちなみに全部じゃないですよ。管理職からの叱責は、文章に書いたよりも多く受けてます。まじで。
昨日、やっと妻のゆかさんも読み終えてくれて、「全部読んでからの、このあとがきが、いいね。泣けてくるよ。」と言ってくれました。
話の内容的には、ゆかさんは全部知ってたんですよ。3年前から、僕がずっと家に帰るたびに愚痴っていたり、話していた内容ですから。
それでも僕があまり語らなかった、子どもたちに対する想いの部分や、執念に触れて、意志の強さを感じたそうです。
編集者さんに実際に言われましたが、「2冊目はあまり売れない」っていうジンクスがあるらしいですね。
よくある話ですね。2よりも1の方が面白かった。そんな本や映画、ゲームを僕もたくさん見てきました。
でも、iPad本を買ってくださった方には申し訳ないんですが、iPad本を出せたものの、内容としては自分の中で良い点数をつけることができませんでした。どこか頭の中で、あまり大した内容ではないなと思っている節もありました。仕事術の本って、どうしても鮮度が大事なところがあるので、それは仕方ないんです。
DX本はね、自信を持って「良い本ができた」と言いきれますよ。僕の負の部分まで書いたので、時に僕の評価が下がることもあるかもしれませんが、それならそれで、学校のDXやICT活用を担当されてる先生が、僕と同じことをやらないように気を付けていただいて、学校の変革を成し遂げてくれたらそれで良いんです。
GIGAスクール構想が始まって3年。意外と多くの学校は、あまり変わってないと思うんですよ。学校は変わらないことが正義でしたから。
そんな中で、魚住惇が3年間奮闘した物語。是非ともAmazonでポチっていただきたいと思います。
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