こだわっている姿は美しい
生きることにこだわりを。魚住惇です。
つい先日、愛知県教育委員会より兼職兼業の許可がおりました。そう、このnewsletterやブログについてです。前任校より始めたnewsletterやブログの兼職兼業、これが本来ならば無料で配信しているとか、報酬を一切もらっていないという話なら全然構わないんですが、ネットで活動している以上どうしても収益などは多少なりとも発生してしまうものでして。僕の場合はそれらの管理を公務員ではない家族に任せています。
だったら魚住本人は1円ももらってないから良いじゃんかという話になるわけですが、ただそれだけでもダメで、結局このままだとロンダリングになるだけなんですよね。お金の動きが全然クリーンではないし、何より外から何か言われた時に、その活動そのものが終わってしまいます。なので、僕が今後もこうした活動を続けていくためにも、兼職兼業の許可申請を行う必要がありました。
このやりとりがまた、前任時代から試行錯誤の連続で。この活動をどうやって認めていこうか、日付的には書類上どうしたらいいのか。そんなやり取りを今の勤務校の校長先生が何度も教育委員会の担当の方とやりとりをしてくださった結果、来年度の許可に向けての手筈も整いました。特にこのnewsletterの場合、年度末年度はじめに関係なく、毎週水曜日に配信しています。それが4月1日だろうが3日だろうが、水曜日には配信するわけです。この事情に対して毎年4月1日に新年度の届出を出すとなると許可が間に合いません。今年の申請で焦点となったポイントがここで、どうやったら年度が始まったと同時に許可できるのかを調整していただけました。
すごいんですよもう教育委員会って、過去の僕の配信の日付をチェックしたこともお聞きしました。調べ上げた上で、何が問題でどうしたら問題ではなくなるのかを、本当に校長先生と何度もやりとりをされたようでした。こうして実現した教師としてのネットの活動としてのブログやnewsletterというわけです。
これも勝手な想像ですが、この魚住、本日配信日が30代最後の日です。明日から40代への仲間入りです。この歳になってくると、学校での立場もどこか現場の最前列から退いて、学校全体の運営を考える側になったりします。最前列の実働部隊ではなくなったという一抹の寂しさもありますが、今度は周囲の先生に作業をお願いする側であることを自覚しなければならないんだなと思いながら働く毎日です。
そんな節目を迎えているからこそ、これまでは見逃されてきたことを正す良いきっかけになっているんじゃないかと思うのです。ただ授業をやっていればよかった。ただ部活動でがむしゃらに生徒と走っていたら良かった。担任として、生徒を導いていたら良かった。僕の教員人生も、もうそのフェーズは終わったのでしょう。
そうそう、工科高校に赴任して2年目で、1年目と比べて良い変化もありました。相方の先生とお話しして、習熟度展開をすることになりました。これがかなり今うまくいっています。相方の先生は同じ情報課でもゴリゴリの体育会系の先生でして、ちょっと目立つような生徒の首根っこを掴んでくれています。そちらはもうお任せするとして、そうではない方の層を持たせてもらうことで、昨年度よりもバランスの取れた授業展開ができるようになりました。
じゃあその先生がやんちゃな生徒ばかりを相手にしていて苦労されているかと思えば実はそうでもなくて、その先生にとっては、上位層の生徒たちを持て余していたそうです。全体をある程度のレベルに育てることはできても、それでも一部の素質がある生徒に対してそれ以上のことをしてやれない。昨年度を通してそう思うようになったと聞きました。なので今年は、魚住の授業を聞いてくれて、何か覚醒してくれそうな生徒を習熟度展開をすることによって集めることになりました。というか習熟度にしたら集まりました。
そうして集められた彼らを見ているとね、もう自分の高校時代にそっくりなんですよ。興味があることから調べていることから、口調まで。昔の自分を見ているようです。あああ、オタクだ。目の前にオタクがおるぞ。決して貶しているわけではありません。知識に対して貪欲で、調べたいことはなんでも調べて、さらにオタク度が増していく。そんな存在が今、僕の周りにはうじゃうじゃいます。そうそう、こういう層ですよ。僕が求めていたのは。ノーヘルで原付を運転しちゃうような層(あくまで例えであり事実はありません)ではなくて、今目の前にいるような、そんな生徒に教えたかったんです。
ただ普通科の学校で勉強するだけの人生を選ばなかった、もっと専門的なことを勉強したくて工科高校に入学してきた言わば変態です。褒め言葉です。そんな変態たちに魚住が授業をやって、どう変化していくのか。今はそれが楽しみなんです。僕自身は未だに普通科に帰りたいと願っていることには変わりありません。でも彼らと会い、話ができるという体験は、工科高校に赴任しなければ実現しませんでした。普通科の高校ではあまりいなかったコンピュータオタクが、今目の前に大勢いるのです。
彼らに圧倒的に不足しているのは、正統派の知識です。ネットで検索して調べたりする能力は一定ほどの力はあるわけですが、それだけではただネット世論に流されているだけのネット民です。それそのものを否定するつもりはありませんが、知識の面ではやや偏っているように思います。ここに授業として正しい知識やその取り入れ方、調べ方などを組み合わせていこうというのが、魚住の役割だと思っています。僕自身、普通科の進学校でただ勉強だけを評価されていた時代には、コンピュータの先生とは出会えませんでしたから。まさに今、自分が高校時代に「あのとき、こんな先生に出会っていたら」と思っていた先生を、目の前の子どもたちに対して演じています。
工科高校だから、魚住のこだわりが許されているのではないか。褒め言葉としての「工業バカ」が似合うほどの生徒と魚住の相性は、結構良いようです。
今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
教科の初任研、無事終わる
勤務校での情報科初任者研修が無事終わりました。午前中は魚住の師範授業、午後には研究授業が行われました。かなり良い形で終われたんじゃないかと思います。会場校として愛知県中の今年の情報科採用の先生が来て、囲まれながら授業をやる。ああもう、本当に授業を行うまでが緊張の連続でした。
実は時間割変更の関係で、僕の授業がその日に2回ありました。なんて運の良いことでしょう。3限が師範授業本番で、同じ授業が1限にもあったんです。1限に3限の段取りができるわけなんですよ。本当に助かりました。で、欲張りな魚住はもっと高度なことをやらせようかなと思っていました。みんな実習にこれだけ時間がかけられるのなら、もっとこんな要素も加えられるんじゃないか。あれもできるんじゃないか。そんな考えばかりが頭の中に浮かんできました。
そうして1限にやらせてみたら、思いの外時間がかかってしまいました。できなくはない。しかし、自分が想定した以上に時間がかかっている。これは新しい要素はどうしようか。そう思って、1限を終えました。
そして3限直前、僕はもう2限が終わる頃からコンピュータ室で待機していました。 1限にも見た生徒たちが再びやってきて、本校の校長先生、初任研担当の校長先生と教頭先生、初任の先生方がやってきました。初任研担当の校長・教頭は研究会等でよくお会いする、何度もお酒を飲み交わしてきたよく知る人間です。
時間が来た。チャイムが鳴った。生徒に号令させる。え、あれ?ちょっと待って。確かに朝の打ち合わせで、案内があったよ。今日は初任研で本校が会場になるって。でも、ちょっと先生方の人数多くないですか?特に、うちの学校の先生、多くないですか?確かに指導案を廊下に置きました。でもあなた名表に丸をつけずに、今見てるんですよね。
意外にも、魚住の授業を多くの校内の先生方が見に来てくださっていました。確かに昨年度は研究授業をやってないので、僕がどんな授業をやっているのか、情報が不足していたことは否めません。けれど、でもですよ。そんなに来る?あとで1人1人、ご講評を賜るのが大変なんですが。
風の噂で聞いたんでしょうか。比較的若めの先生や、ICTに興味がある先生方に来てくださいました。めちゃくちゃ恥ずかしい。授業を観られるなんて、もう風呂を覗かれているくらい恥ずかしい。けれども、ロイロノートを活用する場面などをこの先生方に見せることで、アピールにもなる。この子達は普段から、これだけタブレット端末を活用できるんだぞと言える絶好のチャンス。
そして初任研の先生方も含めて、生徒のタブレットの画面で何をやっているのか、とにかくガン見。今回の内容は僕がテーマを与えて、そのテーマに沿ったプログラムを生成AIに書かせるというもの。環境はVSCodeで、言語はHTML+JavaScriptにしました。最初はPythonも考えたんですけどね。CSSで見た目も簡単に整えられるからと、練習の段階で言語を変更しました。
テーマは、パスワードにしました。パスワードはそもそもシステムとしてどういう役割を果たしているのか。強度が弱いとどうなるのか。これらを「アリババと40人の盗賊」を題材にして確認します。長いパスワードが良い、数字や記号を含めると良い。そんなことを生徒たちは口にします。もう彼らも、様々なSNSでユーザー登録をしてきているので、その辺りはもう染み付いているんですね。
じゃあ、自分たちで、入力したパスワードがどれくらいの強度なのかを判定するようなページを作ったらどうなるのか。これが今回の演習内容です。
すんごいアイデアの連発でした。最初のうちは、ただ単に大文字小文字記号数字が含まれているかだけの判定だったんですが、何度か試行錯誤していくうちに、その生徒たち独自の機能が増えていきました。僕が確認しただけでも、単純な数字やアルファベットの羅列に警告を出したり、ランダムでパスワードを生成する機能をつけたり、パスワードを入力していくと、入力するたびに強度が数値化されて、グラフとしてまとめてくれる機能もありました。
コードを書いたのは確かに生成AIです。ただし、プロンプトを入力したのは生徒たち本人です。AIが1回書いてくれたものを動かして、もっとこうしてって命令しながら新しいコードを書かせていったわけです。その部分を今回は評価したいと考えました。子どもたちのアイデアがどんどん形になっていく。そんな授業になりました。
会議室に戻って、初任の先生方から質問やご意見を伺って、またそこで対話して。このひとときも最高に楽しかった。同じ教科であーでもないこーでもないと、良い授業を目指して話を進めていくのは、最高に楽しいんですよ。そして校内で見てくださった先生方からもお言葉をいただいて、それらを次の授業に活かしていくのも、楽しみで仕方ないんです。
師範授業は終わりました。無事に。では次の研究授業はどうか。お昼休みの時間から教室で準備をしてくれて、万全の体制を整えた状態で、情報Ⅰの研究授業が行われました。もう何も言うことはない。情報Ⅰの論理回路の授業で、スライドを活用しながら、僕が作った「じょうほうらいふ」もふんだんに使いながら、授業をやってくれました。
進学校と比べると授業の進み方が少し違っていたりしたんですが、そこは生徒の特性や学力レベルに応じた工夫で、本当に子どもたちがイキイキと情報Ⅰを学んでいる姿が見られました。僕のやり方とは違うけれども、生徒たちが主体性を持って、意欲的に内容に取り組んでくれているあの姿には感動しました。
僕は結構、高いハードルを置いてしまいがちなんですよね。ついつい高度なことを要求しすぎてしまう。それでも彼は、目の前の子どもたちを見て、どんな教え方をしたら学ぶことができるのかを考えながら授業をしてくれた。自分とは違ったタイプではあるけれども、この環境下で自分ができることは何かを最大限に考えてくれて、彼なりのこだわりを見せてくれました。もうそれだけこだわってくれたのなら、そんなにも夢中で授業をやってくれたのなら、もうこちらから言うことはないわ。ハードルを置いた分、乗り越えてくれたのは、もう感謝の言葉しかありません。
人がこれでもかと言うくらい準備して、それにこだわった。見ていると大変美しいんですよ。努力の成果にも似ています。その人が組み立てた論理がそこにあり、美学がそこにある。それを間近で見させてもらえるのは、本当に貴重な機会です。
こだわる姿は美しい。美しいよ。これだから研究授業は楽しいんだ。
今回のnewsletterは以上となります。
「いいね」を押していただけるとうれしいです。内容に関するご意見ご感想がありましたら、「#こだわりらいふ」をつけたツイートや、Substack内のコメントまでお願いします。

