CXMTという謎のメモリメーカー
生きることにこだわりを。魚住惇です。
1学期の期末考査が終わり、成績処理の時期に入りました。実は6月からちょっと訳あって1.5人分働くことになったので、あまり余裕がありません。ストレスチェックの結果はFでした。これは、来年度もやっていけるのか?ちょっと先行きが不安です。職業科の先生方は何も悪くありません。業界のホンモノに触れることができて、毎日が刺激的です。これに関しては幸せそのものです。でも本当の理由は。
メモリの価格の高止まりが続く
Appleが突如、Mac製品などを値上げしました。6月26日の出来事でした。
アップルがiPadやMac、HomePodなど一斉値上げ iPhoneは対象外 - ケータイ Watch
原因は明白です。DRAMとNANDフラッシュメモリの高騰です。
DRAMというのはコンピュータにおける主記憶装置のことで、メモリとも呼ばれています。机に向かって勉強している人に例えると、机の広さに相当します。この机が広いとそれだけ多くの情報を出しっぱなしで作業できるのです。
そしてこれが今、世界中でAIを動かすのに必要なのです。AIを動かすためには学習モデルをそのままメモリ空間上に置いて、その上でユーザーから送られてきたトークンを扱う必要があります。なのでAIを動かす=メモリをいっぱい使うというわけです。
このメモリの価格に影響を与えたとされているのが、OpenAI社による買い占めです。ただし正確に言うとこの買い占めはメモリチップそのものではなく、切断前のウエハーと呼ばれるいわば原材料のようなものです。料理に例えると調理前の食材が買い占められたので、スーパーで売られているものや飲食店で提供される料理の価格が上がったという感じです。
例えば魚住はDDR5メモリの64GBを過去に23000円ほどで購入しました。
それが今の価格だと、64GBで10万円を超えました。
ちなみに、DDR4メモリを別件で中古で買ったときなんて、この価格でしたからね。
今の時代ではもう、待っていても全然下がらないし、個人ではメモリ買えません。
ちなみにNANDフラッシュメモリ、つまりSSDはどうかというと、こちらも価格が高騰してどえらいことになっています。僕が購入していた当時は1TBが1万円くらいの感覚でした。
今となっては1TBが3万円を超えるようになりました。メーカーやブランドにもよりますが、多くのメーカーで1TBのSSDを買おうとなると、2万円では買えなくなっています。もちろんApple製品の値上げにもこれが直撃していて、SSDの容量オプションが数万円跳ね上がっています。MicroSDカードも、HDDも、ゲーム機の内蔵ストレージとて例外なくコストが上がり、もうこれまでの価格では販売できない状況です。
そんな中、Appleが中国の半導体メーカーと契約を結ぶのではないかという記事が注目を集めました。
アップル、中国製メモリーチップ採用検討で世界半導体株が急落、韓国2大メーカーの時価総額1日で200億ドル超消失 — BigGo ファイナンス
この記事に書かれているメーカーは長鑫存儲(CXMT)と長江存儲(YMTC)という名前で、僕はどちらも聞いたことがありませんでした。Appleが契約したがるほどのメーカーなのか。にしても聞いたことがないし、自作PCパーツでも見かけたことがありません。ちょっとこれは実際に調べてみないと、どんなメーカーなのか判断つかないぞ。
というわけで今回は、このCXMTについて、自分なりに調べてみましたというお話です。
今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
長鑫存儲(CXMT)
このメーカーは、DRAMメーカーです。メモリのチップを製造している会社です。創業者の朱一明さんは1994年に清華大学で物理学の学位を取得し、ニューヨーク州立大学の大学院で電気工学を学びました。その後シリコンバレーのMoSysでプロジェクトリーダーを務めたそうです。MoSysは現在はデータセンター用チップの設計に転身後にPerasoという半導体設計メーカーと合併しましたが、ゲームキューブやWiiに搭載されたメモリを製造したことで知られています。
そして彼が中国へ戻り、GigaDeviceという会社を設立し、マイコンのサプライヤーへと成長させています。今話題のCXMTはどうしたのかというと、2009年に経営破綻したドイツのDRAMメーカー、Qimondaを買収したところから始まりました。これまでDRAMを作り続け、2025年初頭には16nmのDRAMの量産に入りました。現在は15nmの量産に向けて開発を進めているんだとか。既に16nmのDRAMは16GBのDDR5チップとして製造され、アリエクなどで売られているDDR5メモリにも搭載され始めています。
ChangXin Memory Technologies - Wikipedia
それだけではありません。既にDDR4世代のメモリはシャオミやOPPOなどのスマホにも採用され、Amazonなどで売られている一部のミニPCのオンボードメモリチップにも採用されています。「なんでこのメモリ不足に、これだけのメモリを積んだミニPCが出てくるんだ?」って僕も思ってたんですが、CXMT製のメモリが搭載されていたわけなんですね。
投資家の間ではこのCXMTという企業は倒産企業から技術を買い、優秀な人材を集めて中国の国家資本が育てたっていう感じに語られがちですが、シリコンバレーで働いてきた朱一明氏の興味関心がDRAMにあり、それだけ熱心だったことが何よりの原動力だと思うのです。
そしてこの「アメリカでから母国に戻って起業する」というスタートライン。ここに共通している事例がいくつかあります。僕が知っている例だとAnkerかな。元Google社員らが中国に戻って創業したのがAnkerでした。モバイルバッテリーやACアダプタなどをはじめ、スマホやPCを使っている人にとって「これが欲しかったんだよ」と思わせてくれるような商品をどんどんリリースしています。
また、孫正義さんも16歳で単身渡米し、カリフォルニアの高校からカリフォルニア大学バークレー校で経済学とコンピュータサイエンスを学び、日本でソフトバンクを起業しています。当時のバークレー校といえば、UNIXの改良版を学生や研究者たちが開発し、BSDが大いに盛り上がっていた時期です。後にFreeBSDやmacOSの源流ともなるOSが生まれていた頃に、そのソフトウェア開発の熱量をみちゃったらね、そりゃもういてもたってもいられなくなりますよね。ハードウェアではなくソフトウェアを売る、そして生涯にわたる投資対象として見ていくのも頷けます。
ただCXMTがAnkerやソフトバンクと何が違うのかというと、DRAMの自社工場を所有していることなんですよね。Ankerが創業以来一貫しているのはファブレスで、自社工場を持ちません。ソフトバンクも同様です。自社工場を持たないファブレスの方が設備への投資を節約できる分、企画や開発に集中できます。ただし、今回のようにメモリ不足に陥ってしまうと、そりゃ世の中で自社工場を所有しているメーカーに注目が集まるわけです。
ちなみにソフトバンクはこのAI時代の中で自社工場を作るという話を発表しています。作ろうとしているのは蓄電池工場です。要はバッテリーです。韓国の企業と協業してシャープの工場跡地にAIのデータセンターに安定して電力を供給するための蓄電池設備そのものを製造する工場を作る計画を公開したわけですね。目の付け所がシャー・・・ゲフンゲフン、鋭いですね。データセンターへの電力の安定供給がボトルネックになるんじゃないかと孫正義氏は思ってるんですよ。
グラボ不足、メモリ不足の次に来るのは電力不足ということです。あれだけの性能のAIを動かし続けるには、それだけの電気が必要だ。でも電力会社が発電できる電力は変動する。なので間に蓄電池を入れて、一旦溜めた電気をデータセンターで使うようにしよう。そうしたら安定するでしょ?というお話。ソフトバンクは、このAIデータセンター用のバッテリー屋さんになろうとしているのです。
AI時代を支える次世代電力インフラの構築に向けて、ギガワット時規模の国産バッテリー事業を開始
あぁ、今日も半導体関連株が下落ですか。AppleがCXMTと契約する話を進めているっていう記事が出ちゃってから、これまでのバランスが崩れて投資家たちが慌てている様子がみてとれます。そりゃまぁ色々調べていくうちに、CXMTってそんなDRAMメーカーだったのかっていう発見も僕自身ありましたけどね。マイクロンのメモリばかり自宅サーバーに採用してきた魚住としては、まだちょっとCXMT製のメモリは様子見状態です。ミニPCもいくつか触ってきましたけど、なんだろうなぁ、どこか動作が不安定というか、なんか信頼できない感じがするんですよ。原因がメモリなのかストレージなのかまだはっきりしないんですけどね、Windowsの動作が怪しいなと思うことがちょくちょくあります。
急成長を遂げたCXMTはAnkerやソフトバンクとは違い、DRAM自社工場にこだわった、アメリカ帰りの中国人が起業したメモリ会社だった。というのが今回の発見でした。今は15nmのチップ製造にチャレンジ中。安い価格で安定供給してくれるようになったら、アリエクで買ってみようかしら。
YMTCについても調べたかったんですけどね、1社目でかなりお腹いっぱいになってしまったので、ひとまずここまでです。
今回のnewsletterは以上となります。
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