道を学び、行動すれば、出会うべくして出会う
生きることにこだわりを。魚住惇です。 僕のことを知り、このnewsletterを読んでくださっている方には今更だと思いますが、魚住は平成26年度愛知県教員採用試験に合格し、平成27年から教諭として働いています。
なんで改めてこんなことを言うかというと、"教えてもらえる有り難み"を社会人になってから実感した出来事が起こったからです。
日本で暮らしているほとんどの子供は、小学校、中学校へと進学して義務教育を終え、高校に進学します。こうした学校では授業が行われ、子どもたちは学んでいきます。
特に日本の場合はこの過程の中で、集団行動やグループワークを通して、社会規範も身につけていきます。
卒業してからはどうでしょうか。企業から内定をもらい就職した後も、多くの企業では新入社員を教育するための研修を用意しています。
ではその研修も終わったら、どうやって勉強するのでしょう。お料理教室に通ったり、稽古をつけてもらったりすると、そのための知識が手に入ると思います。本を読めば、知識も増やせるでしょう。
学生時代に通っていた学校と比べて何が違うのかというと、主体性です。学校で教える内容は文科省が定めた学習指導要領に沿った形で、カリキュラムが組まれます。その内容が終わるように日程が組まれて、テストによって到達度が測られます。
このカリキュラムが、良くも悪くも生徒が主体性を持ちづらくしてるんじゃないかなと思うのです。
生徒が自らの意思でその科目の勉強をしたいと思い、喉から手が出るほどその技術が欲しいと感じるのが理想です。ですがほとんどの場合はそうはならず、我々教員が手を尽くしたことはの多くはありがた迷惑です。
まぁこの辺りの感覚は大抵、大学や専門学校など、高校卒業後に上位の学校に進学することで、これまでの学校との差を実感するんですけどね。
なんでそんなことを僕が今更思っているのか。それは、HHKBミートアップの翌日に万年筆のセレクトショップに行った際、"勉強になった"と思えた出来事があったからです。
HHKBのことはまぁいいんですよ。先週散々お騒がせしましたから。
今回は、先週東京に赴いた際に出会った、万年筆調整師さんとの出会いの話です。ちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
万年筆調整師との出会い
前々回の配信で、万年筆の話を書きました。
結果として購入したペリカンの万年筆 スーべレーン M1000は、個人的にはかなり気に入って使っています。
それにね、Xにも投稿したんですけど、ペンケースが最高なんですよ。ペリカン3羽を常に持ち歩ける。もう毎日一緒です。おかげでインクが減ること減ること。餌をあげる回数も増えて大変です。はいはい、今から純正ロイヤルブルー入れますからね。
そしてHHKBミートアップに行くとき、M1000とノートも鞄に入れました。妻のゆかさんからは「万年筆持ってくの!?いいじゃない、2日くらい万年筆無しで暮らせば。そんな分厚いノートも持って?ホント信じらんない。」と言われました。
HHKB Studio、万年筆、ノート、iPadを鞄に入れているのをみて、ドン引きしてました。
そんなに持っていって、使うのか?iPadなんて、Magic Keyboard付けてんだぞ?
正解だ。おらはこの投稿がこごまで伸びるなんて、さっぱり思わねがったよ。人生、何起ごるがわがらねぁーよな。
そして万年筆はというと、ホテルに帰った後に、その日のことを綴ったり、翌日に行く場所について考えるときに使いました。
行きの新幹線で、写真を撮った後にHHKBをしばらく使ってたんですが、結構揺れが強くて、あまり長時間タイプしていられませんでした。キーボードでこれなんだから、万年筆なんてもっと無理だよな。そう判断して、あまり万年筆を出すことはありませんでした。
ミートアップが始まるのは25日の19時。25日の12時過ぎには到着していたので、まずは秋葉原へ向かいました。僕の手元にはHHKB Studioが既にあったので、使えそうなキーキャップやキースイッチを見るために、遊舎工房へと足を運びました。
ただまぁ、僕のHHKBは既にキースイッチも交換していましたし、キーキャップも次に交換するなら無刻印にしようと心に決めていたので、散財することはありませんでした。ここ重要ですよ。僕がキーボード専門店で、何も買わなかった。
で、夜は夜で、HHKBミートアップに参加しました。メディア関係者やPFU社員の方に再会して、びあっこさんやペカソさんともお話をして、楽しいひと時でした。
一つ残念だったのが、HHKB Studioが発売されたばかりだったので、カスタマイズの内容についてあまり語れる相手がいなかったことです。
僕としては、早くこのキーボードをどうやって使いこなすのか。それについて語り合いたいんですよ。これまでのHHKBは、あまりカスタマイズできませんでしたから。HYBRIDはリマップにこそ対応しているものの、カスタマイズの幅は限定的でした。HHKB Studioは比べ物にならないほどのカスタマイズ性を有しているので、人によって全く別物のキーボードに進化すると思うのです。
文房具と同じです。シャーペンだって、芯の硬さによって書き心地が変わりますし、同じHBでもメーカーによって好みが分かれます。ちなみに僕が好きなシャーペンの芯はAinの2Bでした。
今はほとんどのHHKB Studioが同じ仕様です。これが今後どのように育っていくのかが、楽しみです。
というわけで、東京の2日目にどこにいくのかを、改めて考えることにしました。ひょっとしたら2日目もずっと秋葉原に居て、もう一度遊舎工房にお邪魔して色々とキースイッチを散財するかもなぁなんて思っていたんですが、ミートアップである程度満足してしまったので、とりあえずキーボード以外のことを軸にしようと考えました。
そこでふと思ったのが、万年筆です。東京には、名古屋と比べて万年筆の専門店が多くあるに違いない。そう期待に胸を膨らませて、足を運んでみることにしました。
まず最初に行ってみたのが、キングダムノート。ここはネットショップも有名で、新品の他に中古の万年筆の鑑定・買取を行なっているお店です。リアル店舗に一度は行ってみたかったんですよね。
万年筆 ボールペンなど高級筆記具の販売・買取|キングダムノート
こんな感じで、中古の万年筆がそこそこの値段で並んでるの。もう心がウキウキです。売り物のほとんどが大切に使われていたからか、外傷がそこそこあるものでも、問題なく筆記できるものが並んでいました。ここで見ると普通に使えるM400が2万円台で買えたりするので、全然アリだなと思いながら眺めていました。
いかん。ペリカンをこれ以上増やすことが考えないようにしよう。
そして次に行ってみたのが、恵比寿にあるLichtopeというお店です。
Lichtope Online Store|リヒトープ オンラインストア
恵比寿の駅から少し歩いて、しかもかなりの急坂になっている丘を歩きました。名古屋で言うと、この坂は昭和区を思い出します。よくこんな坂道の途中を真っ直ぐにして家とか建てるよなぁなんて思いながら歩きました。
そして、向かっている途中に道がわからなくなって、何度もスマホでサイトを見ました。場所はこの辺りなんだけどなぁ。サイトを隈なく見ていると、完全予約制だということが分かりました。
まじか・・・、目と鼻の先まで来たっていうのに。
予約してなかった。けど、せっかく愛知県から東京の恵比寿まで足を運んだんだ。この機会を逃したら、次に東京に来る来年まで、待たなくちゃいけない。そんなのは嫌だ。
そう思って、迷惑覚悟で入ることにしました。
ガキッ・・・、あれ、ドアが開かない。
ガチャッ・・・、あ、開いた。すみません、特に予約などはしていないんですが、今開いてますでしょうか。
そう言いながらお店に入れてもらいました。お店にはたまたまお客さんがおらず、オーナーの方は通販サイトの配送の準備などに追われている様子でした。
僕としてはあまり長居はせずに、インクだけでも買って帰ろうとしました。するとたまたま万年筆の調整の話になったので、まだ長原さんに見せていないM1000について診てもらうことにしました。
そう、M1000は自分でラッピングフィルムを使ってペン先を研磨した万年筆です。それをルーペで見てもらい、ペン先がどうなっているのかを聞きました。
これならまだ全然マシ。もっと酷い状態にしてしまう人もたくさんいますよ。とのこと。
そうそう、このリヒトープのオーナーさんは鈴木智子さんという方で、元々は三味線の家に生まれたお方。
代官山エリアに万年筆調整とステーショナリーのセレクト店 三田から移転 - シブヤ経済新聞
東京ってすごい。襲名システムがあるような伝統芸能の家元の方と、普通にお会いできるなんて。
やっぱり万年筆の調整は対面が一番。どんな書き方をしているのか、どんな紙に書いているのか。どんな角度でペンポイントが紙に当たっているのか。これまでの万年筆歴はどんな感じなのか。
そんなことを話しながら、万年筆について教えていただきました。
ちなみにまず指摘されたのが、万年筆の持ち方。まさかそこから指摘されるなんてと思いながら、自分の勉強不足を受け入れました。
鈴木さんは万年筆界隈では「たこ娘」という呼ばれ方でインスタを更新されていて、万年筆の基礎基本について情報発信されています。
万年筆について詳しい方は自分の周りにも沢山いますが、基礎基本をここまで丁寧に教えてくださる方は初めてで、教師として聞き惚れてしまいました。
自分が先生として、万年筆の先生をやるとしたら、どんな話し方が良いんだろうか。どんな話の始め方が良いんだろうか。そんな視点で考えた時に、一番スーッと頭の中に入ってきたのです。
もちろんマニア同士の会話も聞いていて心地良いものですが、また別の視点から、誰にでも分かりやすい話し方で丁寧に接していただけたのが、貴重な体験でした。
まぁこれだけペリカンの虜になっておきながら、そんなことも知らないなんてと、かなり落胆されたかもしれませんけどね。もう僕にはそんなことどうでもいいんですよ。正しいことを知ること。教えてもらうこと。そのためには恥とかプライドなんて、取っ払った方が人生お得です。
今になって、少し後悔すらしています。どうしてもっと早く、持ち方、書き方から、基礎から学ぼうとしなかったのか。一応、『万年筆のすべて』という趣味の文具箱のムック本はM400を買う前に買いました。
万年筆のすべて (趣味の文具箱特別編集) | 趣味の文具箱編集部 |本 | 通販 | Amazon
なんですけど、持ち方の角度まで分かりやすくは解説していませんでした。東京から帰宅して、改めて読み直しました。長原さんのお父様のお名前が出てきた時は卒倒しそうになりましたけどね。
道を学び、行動すれば、出会うべくして出会う
今回は、万年筆を通して、その道に精通する人と出会うことができて、学びにつながったという事例の紹介でした。
帰ってきてからは、ノートに向かいっぱなしで、ずっと万年筆で文章を書きまくりました。持ち方を変えてからは力の入れ具合がつかめずに、変な字ばっかり書いたり、書こうとしている字とは違った字を書いてしまったりと、全く安定しませんでした。
ところが人間慣れてくるもので、3日もすると割と慣れてきました。まさかペンの持ち方すら、アラフォーを迎えてから矯正するなんて、思ってもみませんでした。新しいことは、何歳からでも勉強できるし、学ぼうと思えばいつでも学べる。
そして、詳しくなりたい、もっと勉強したいと思う分野を学んで行動すれば、その時の自分に必要な人に会えるものだなぁなんて思うようになりました。これは恋愛や結婚、更には人生そのものにも通ずるものかもと思っています。
現状というのは過去に行動してきたものの結果であり、これからの未来は、どれだけ自分の想いに従って行動したかで、後悔するかどうかが決まる。
恵比寿まで行って、予約も入れてないしなと思いながら一度は引き返したものの、手前の交差点で立ち止まり、ここまで来たんだしと回れ右した。あの時思い直して少しだけ勇気を出してみた自分を、全力で褒めてやりたい。
イベントを控えているので、M1000の調整には2週間欲しいと言われていて、今、手元にあるのはM805とM400です。長原さんに研いでもらったM805で書いてみると、矯正した持ち方だとまた違った感触で書くことができて、それが本当に面白い。
M1000を鈴木さんに調整してもらうことで、お二人の調整に対する方向性の違いを比べることができる。なんて贅沢な話なんでしょう。万年筆に、ただの筆記具以上の感情を抱かざるを得ません。ただ値段が高いだけじゃない、人を魅了する筆記具。そして、魅了された人たちの話を聞くのもまた面白い。
知らない世界を知ることの、なんと楽しいことか。そんなことを感じながら過ごした東京旅でした。
今回のnewsletterは以上となります。 「いいね」を押していただけるとうれしいです。なんか最近、万年筆用のインクが使えるインク吸入式ボールペンがあるということを知りました。おすすめがありましたら、「#こだわりらいふ」をつけた投稿や、Substack内のコメントまでお願いします。