プロジェクトごとに情報を整理できるツール
※ひょっとしたらメールだと途中で途切れるかもしれません。SubstackアプリやWebでの閲覧を推奨します。
生きることにこだわりを。魚住惇です。
今年度から、分掌主任という肩書きで仕事をするようになりました。分掌とは企業でいうと部署のようなもので、教務・進路・生徒指導など、学校では仕事の種類を大雑把に分類して、部署ごとに担当教員を配置しています。
学校ごとに配置している分掌も様々です。今の学校ではICT関連の分掌の名前が「情報推進部」ですが、前任校では総務に吸収されていました。そう考えると、今の勤務校ではまだ人に配置に余裕があり、情報関係の仕事だけに集中させてもらえているなとも捉えることができます。
で、学校の先生として働くということは、分掌・教科・学年・部活動という4つのカテゴリで、それぞれのどこかに所属することになります。昨年度で言うと、僕は情報推進部・情報科・3年生・商業部という組み合わせでした。
今年度は、情報推進部・情報科・2年生・商業部という4つのカテゴリでの仕事をこなしています。情報推進部の仕事をすることもあれば、情報の授業をやることもあるし、2年生での仕事を手伝ったりもするし、部活の顧問だってやります。
ここで人によって、重要視する仕事のカテゴリに差が出てくるわけですね。ブラック部活などが叫ばれている昨今、この部活動というカテゴリを重要視している先生が減ったような印象がありますが、リアル現場で働いていると、どうしても部活動での指導が教科指導などにも良い影響出まくりで、切ってもきれない縁があるなとも思っています。
中には、教科指導をメインで考えていて、授業で使う教材などを作る時間がもっと欲しいという人もいます。これは部活動よりも教科指導に重きを置いている先生です。いやいやここは生徒指導に力を入れて、社会性を身につけさせるだという先生だっていらっしゃいます。
どれを選択するのが正しいというわけじゃないんですよね。部活動にかかる時間があまりにも膨大(土日両方、平日18時まで)なので、時代的には削減される流れがありますし、働き方改革の観点でも、見直すことで1番効果が出るカテゴリでもあります。
僕自身、部活動で得るものもありましたし、サッカー部の主顧問を経験して、審判員も務めたことは人生の中でかけがえのない体験でした。ただどうしても、部活動にのめり込めばのめり込むほど、それ以外のカテゴリである分掌や情報科にかけられる時間は減る一方でした。
さて話をカテゴリの話に戻しましょう。学校で働いていると、それぞれのカテゴリの仕事を同時に進めることになります。分掌で学校の運営そのものに関わり、教科はもちろん毎日の授業を進めて、学年では担任・副担任としてクラスに接し、終礼後は部活動顧問として生徒と関わります。
ここからが今回の話の本題です。学校で仕事を進めていく上で、どうしても切り離せないのが、「文書」です。学年の仕事ではあまり担任や副担任に届くことはありませんが、分掌や教科、部活動では教育委員会などから文書が届きます。
まずね、必ずこの文書というのが紙で届くんですよ。必ず紙で届く。そしてその文書というのは宛名と差出人があり、宛名はほぼ全てが校長先生です。つまり、学校宛に届いた文書ということです。
その文書を校長先生が読んだ後に、巡り巡って係の先生のところに届きます。この巡り巡る時も、紙に印刷された文書がバインダーに挟まれた状態で運ばれていきます。
内容はさまざまで、分掌関連だと教育委員会からの調査の依頼、教科だと勉強会の案内、部活だと大会の案内だったりします。そして文書のほとんどが、返信が必要なものです。文書の中に返信の締め切りが記載されているので、その日付までに返事をしなければなりません。
しかもこれが、校長先生宛に届いているものに、係の先生が校長先生に代わって返事を送ることになるので、決裁が必要です。文書が自分の手元に届いたのとは逆の順路を辿って、差出人の人に返事をします。これが主なタスクとなります。
今回話題にしたいのは、タスクではなく書類そのものの方です。学校の先生が、印刷された通知文書をどうやって保管していると思います?
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フラットファイルです。キングジムのファイルなんて高くて学校は買ってくれません。フラットファイルが今でも現役です。僕が大学を卒業してから講師として働くようになって、4月にフラットファイルを何冊かもらったとき第一声が「懐かしい!」でした。
自分が小学校から高校まで使ってきた、あの紙を挟むやつが、まだ学校では現役なんだ。信じらんない。今でもほとんどの先生方が、自分が所属している4つのカテゴリのタイトルをつけたフラットファイルを用意して、ファイリングをしています。
そして、そのカテゴリごとに届いた文書や会議で配られた資料などをそのまま挟んでいくので、古い紙ほど下にあり、最近綴じたものほど手前にあります。目的の文書が読みたい場合は、その綴じたフラットファイルの紙をめくりながら探すのです。
お恥ずかしい話、僕はこのフラットファイルから見たい紙を探し当てるのが、本当に苦手です。他の先生方と同じように綴じているはずなのに、どうしてか目的の資料が見つからない。何度も紙をめくる。でも見つからない。なんで。どうして。
それからiPadを手にいれ、クラウドストレージサービスを活用するようになり、時にフォルダで階層構造を作りながら、時に検索しながら整理整頓してきました。この時点で既に僕はペーパーレスを実現しています。
ただ、いくら検索などを駆使しようとしても、1文書1ファイルとしてデジタル化し、結局は最低限のフォルダ階層のどこかに保存をしていました。僕はこれが、ずっと気になっていました。いくら時代が進化しようとも、結局クラウドのどこかのフォルダに紙と同じ情報を置いているのかと。
更新日時順にファイルを並べ替えたところで、僕があれだけ苦手だとしていたフラットファイルと何ら変わらない方法で情報を整理していただけだったのです。これがDXなのか?紙の頃と、考え方が変わってないじゃんか。
そう思っていたとき、今回紹介するツールに出会いました。その名は、
今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
Microsoft Loop
Microsoft Loop: コラボレーション アプリ | Microsoft 365
Loop歴1週間。もう大好きです。このアプリ、サービスを一言で表すと、「データベース機能がないNotion」です。多分これが一番しっくりきます。Notionと言えば、EvernoteやObsidianなどを使ったことがある人は一度は名前を聞いたり、Youtubeなどでの盛り上がりを見たことがあるでしょう。
なんだ、Notionと似たようなサービスをMSが作ったんか。
個人で使うだけならこの感想でも十分です。ですがあのNotionを、これまでTeamsやOneDrive、SharePointなどをチームで使ってきた組織がそのリソースをそのまま扱えるとしたら。Office系ファイルをそのまま貼り付けて、共同編集できるとしたら。
これですよ。ペーパーレスなだけの単なるデジタル化の次に起こる大革命。まさにDX。もうただ単にカテゴリ分けだけしただけで、整理整頓した気になっていたあの頃にサヨナラ。それに、第2の関連付けとしてハッシュタグをつけているだけの時代ともまた違います。
僕のこの興奮度、伝わってますか?情報を、階層構造以外の方法でまとめられる喜び。もうね、Loop大好きです。
では実際に僕がMicrosoft Loopを使ってどんな情報整理を行なったのか、少しだけ見せたいと思います。
複数人で情報を共有するワークスペースもあるにはあるんですが、ちょっと表には出せない内容もあるので、今回は個人だけで使っているものだけお見せします。
教員の世界には、中堅教諭資質向上研修という研修があります。正式採用を受けてから10年間経験を積んだ先生が受ける、通称「10年研」です。
僕自身は今年が10年目に当たるので、本当なら研修の対象ではありません。ですが、弾力化と言って、1年早く受けることができるという制度がありました。次男が今1歳で、来年度には2歳、つまり妻のゆかさんが復帰するかもしれない年です。
そう考えると来年度はきっと忙しくなるだろうと思ったので、今回弾力化を使わせてもらうことにしました。
愛知県教育委員会が、先生方の研修を行うために用意した施設に「総合教育センター」という建物があります。ここのウェブサイトに研修のための手引きなどの資料が公開されていて、誰もが見ることができます。
今回僕が受ける研修の手引きのPDFはこちらのリンクより閲覧できます。 令和6年度 高等学校中堅教諭資質向上研修【前期】の手引
この要項がね、見づらいんだこれが。全ての教科の先生向けに書かれている手引きなので、自分に関係ない情報がまぁ多いこと多いこと。
アナログ派の先生は、まずこの22ページのPDFを両面印刷するところから始めます。ホッチキスで止めて、自分に関係のある部分に蛍光マーカーで線を引き、付箋を貼って開きやすくします。僕も最初はこのPDFをGoodNotesに保存して、蛍光マーカーを引いたり、自分に関係しそうなページをブックマークしました。
でも結局この作業は、デジタルでやっているように見えて、中身はアナログの作業です。
ここでLoopの出番ですよ。まず、10年研専用のワークスペースを用意しました。左側にはページの一覧があるので、そこには年内に受講しなければならない研修ごとにページを作成しました。
まずは、全体像の把握から。LinkYourThinkingでいうMOCを作りました。ここに手引きのリンクを貼りました。LoopはOneDriveに保存したファイルの共有リンクを貼り付けることで、それっぽい良さげな見た目のリンクを作ってくれます。ここ好き。
それっぽい表示のリンクを作ってくれるのはファイルだけではありません。当然URLを貼り付けてもクリックしたくなるような見た目のブロックを作ってくれます。イマドキで素晴らしい。
基本はNotionと同じなので、カーソルがある場所でスラッシュコマンドが使えます。スラッシュを押すと、見出しやリストなどのブロックの一覧が表示されるので、そこから選ぶことでパーツを置くことができます。
まず僕がやったのはこれ。手引きの中で自分に関係するものを、日付順に並べ替えました。日付のブロックで締め切りを設定してみると、残りの日数が出てきます。地味に素晴らしい。
この研修で僕がやらなければならないのは、4日間分の研修の参加です。出張扱いです。それと、その研修までに提出しなければならない課題と、それとは別に授業の実践報告があります。またそれとは別に、e-Learningも受講しなければなりません。
手引きでは、これが日付ごとではなくて、種類ごとに書かれています。全体の研修と教科が分かれているし、しれっとe-Learningが書かれていたりもします。普通に手引きだけを見ながら進めるとなると、個人だけで完遂するのは困難です。大抵の場合、同じ学校の中で何人か研修の対象者がいるので、「あれやった?」「これどんな内容で提出した?」など声掛けをして、助け合いながら進めます。
僕はできたらね、困っている人を助ける側になりたいんですよ。人からズボラだって思われたくないんです。ズボラですけど。だからこうして、自分なりに情報を整理して、少しでも自分が理解しやすいように整えるんですよ。
Loopの良いところは、OneDriveやSharePointのドキュメントライブラリで作成したファイルへのリンクがそのまま貼れることです。
今ね、これらをフル活用している組織では、デスクトップ版Officeをあまり使っていません。ブラウザ上でのMS Officeを使って、組織内のクラウドで共有されたファイルを複数人で開いて同時に編集するんですよ。Googleがやっていたことと同じことをやらせようとしてるわけです。
でもその土台があると、このLoopがフォルダ階層構造以外の情報整理体系を生み出してくれて、プロジェクトごとにファイルを管理できて、とっても見やすくなります。
こうなったらもうね、僕がこれまで整備してきた、校内NASの意味がなくなりました。時代はもうクラウド。オンプレミスじゃないんですね。
僕がこうして、めちゃくちゃ感動しているの、伝わりますか?Microsoftと言えば、元々はAppleにExcelとかを卸していたオフィス系アプリメーカーでしたよね。それがDOS作ってWindows作って、MSOfficeでその時代を築いてきました。
WindowsPhoneが盛大にコケて、モバイルの覇権をAppleに奪われてしまった時は、悲しかったなぁ。僕はW-ZERO3持ってました。PDAだってWindowsCE .Netの機種を使ってましたよ。シグマリオン大好きでした。
それからしばらく、どうせ企業で働くんだったらExcelなんだよなみたいな時代が続いたかと思いきや、GitHubにVSCodeですよ。僕はこの辺りから、Linuxユーザー特有のMicrosoftアンチテーゼ感が和らぎ、少しだけ見直すようになりました。
オフィスソフトといえば、WordにExcelにPowerPoint、そしてデータベースのAccess、メールはOutlook。みたいな時代が、クラウドによって終わるかもしれません。そりゃ考え方そのものは継承するんでしょうけど、これらは全てファイル単位で仕事をしていました。
ファイル単位ということは、管理する方法はフォルダを使った階層構造しかありません。Teamsというチャットツールでも、結局はそのチーム内でフォルダ階層でファイルを管理することしかできませんでした。
そこに出てきたMicrosoft Loop。これはNotionなどが培ってきた、まさしく統合的なプロジェクト型の情報整理。そしてMarkdown記法に対応したページの編集。Microsoftがこれまで提供してきたサービスがバラバラだったのを、いよいよ統合してきたなという感じがします。
思えばiOS・iPadOS版のOfficeアプリもリリースしていました。今でもAppStoreにはWordやExcelなどの個別のアプリがあるものの、MS Officeのアプリでは、1つのアプリでどのファイルも開くことができます。例えるなら、同じアプリでも、開くファイルによって書式設定などのメニューが出ることもあれば、関数や計算式などのメニューが出るようなものです。
ここまでくると、もうWordやExcelなどを分ける意味もなくなるかもしれません。開くファイルに応じて出てくるメニューの種類を変更するだけですから。
これがクラウド。そしてそれらの情報を、人が見やすいように管理し、ファイルだけでなくそれに関わるメモなども記録しておける。僕はこんなツールを待っていました。
じゃあなんで今までNotionを使っていないのかって?それは愛知県立高校セキュリティポリシーを遵守して勤務しているからですよ。Notionの有用性はもちろんわかります。データベースも個人的には大好きです。
僕はICT管理者として、セキュリティポリシーを他の先生に守ってもらうよう声をかける存在です。そんな管理者が、校内で処理すべき情報を、教育委員会の許可が降りてないツールに保存することそのものがダメなんです。
XやYoutubeを見ていると、まぁ学校の先生でNotionを使っていることの多いこと多いこと。しかも「自治体のルールを守りましょう」とか言っておきながら、めっちゃ成績やら席替えなどの管理の方法とか紹介してんの。もう見てらんない。ダメでしょ、自治体の教育委員会が許可してないツールに守秘義務が課せられた情報を入力しちゃ。
そんな状況で、Microsoft、よくぞやってくれた。Microsoft圏内で使えるNotionを、よくぞ用意してくれた。イマドキの考え方のツールを、よくぞ組織内で使えるようにしてくれた。
ガンダムSEEDに例えるなら、今まさにフリーダムガンダムをラクス・クラインから授かった状態です。思いだけでも、力だけでもダメなんです。目指すべき思想と、使いこなす技量、その両方が必要です。
思想は、揃った。あとは、如何にしてこれを推奨していくか。それが僕の今後の課題です。GIGAスクール構想でChromebookとGoogle for Educationが支給された自治体諸君。見てろよ。MSだって、負けてないかんな。
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