夏休みから始めたウルトラマン教育
生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
夏休みから始めたウルトラマン教育
この魚住、ウルトラマンに対して、ちょっとばかりのこだわりがあります。育児の都合でシンウルトラマンは見にいけずにいるものの、特撮全般は好きなジャンルの一つです。
自分が好きなものというのは、きっと幼い頃の中で記憶に残っているものがベースになるんじゃないかと思っています。僕のベースは、戦隊シリーズなら「高速戦隊ターボレンジャー」、仮面ライダーなら「ブラックRX」、ロボットアニメなら「勇者エクスカイザー」です。あ、あとメタルヒーローなら「特警ウインスペクター」です。
勇者エクスカイザーが発端となった勇者シリーズは、今もなお大きなお友達に大人気で、展示会を開催したり、最終作の勇者王ガオガイガーは少し前に小説版がようやく完結したり、プラモデルがまだまだ新発売を控えているなど、熱が冷めない作品です。
その中でもウルトラマンは、こうしたその年代の流行とは、ちょっと違った形で知りました。
親の英才教育です。
当時はまだレンタルビデオ屋さんでVHSのビデオテープを借りていた時代。僕が生まれたのは1986年で、3歳に初代ゲームボーイが発売しています。この頃はウルトラマンをはじめとするウルトラシリーズは、最新作が製作されることがありませんでした。映画やスペシャル番組が作られることが多く、別のシリーズとして平成ウルトラセブンシリーズが作られていたくらいでした。この頃は新しい光の戦士が作られなかった時期です。つまり、これまでのウルトラシリーズを見たことがないと楽しめないコンテンツばかりが放送されていました。
おもちゃ売り場にはウルトラマン関係のおもちゃがたくさん並んでいたことから、気を利かせてレンタルしてくれたのかもしれません。ウルトラマンからウルトラマンタロウ、ウルトラマンレオを飛ばしてウルトラマン80までをひたすら借りまくって見せてくれました。これで自分が小学校時代にウルトラマンのスペシャル番組などについていくことができました。昭和末期から平成初期には仮面ライダーも一旦落ち着いたこともあり、スーパー戦隊シリーズとメタルヒーローが毎年のように続いていただけだったので、ウルトラマンを知るためにはひたすら過去作品を見るしかなかったのです。でも今思えば、よくここまで借りまくってくれたなぁ。
しかもそのレンタルしたVHSをタビングまでしてくれて、中学生になる頃にはまだまだ捨てずに残してくれていたので、初めて見た頃から時間が経っても見ることができていました。今思えばこれが記憶の定着に繋がったのかもしれません。
自分にとって、ウルトラマンが自己の成長と深く関わってきたので、将来息子にも見せたいと思っていました。そしてここんところ保育園の影響もあってか言葉を流暢に話すようになってきたので、これならウルトラマンも夢中になってくれるだろうと思って、見せ始めることにしたのです。
ちなみに妻のゆかさんとはこの辺りの趣味は全くと言って良いほど合いません。ゆかさんが見るアニメはサザエさん、ちびまる子ちゃん、名探偵コナンなどです。息子が生まれる前、まだ新婚生活を楽しんでいた頃は、この3番組を録画していたほどでした。
この3作品が好きな理由を尋ねると、「日常生活と同じ常識が通じるアニメだから見ていられる」と答えてくれました。「毎週必ず人が死ぬアニメは日常なのか」と聞いてみたら、その後しばらく口を聞いてくれなくなりました。
新婚だった当時、タイムリープもののアニメが割とあったので一緒に見てみたことがあったんですが、「もうダメ、ついていけない」と不機嫌になり、見てくれなくなりました。時間を巻き戻してやり直すというお話についていけない様子でした。タイムリープものが苦手だという話は、「ドラえもんはセワシくんのお年玉が五十円だったことから未来を変えようとした、タイムリープ物語だけどあれは」と話始めた時点で「今はドラえもんの話はしてない」と言いかけたところで喧嘩になり、中断することになりました。
男の趣味というのは、女性にはわかってもらえないものです。
今回のテーマであるウルトラマンも、その奥深さというのはきっと、僕と息子のみで共有するものなのでしょう。
そのこだわりをちょっとだけ、皆さんにお裾分けしたいと思います。
そもそもなぜ今ウルトラマンなのか。最新作であるウルトラマントリガーは既に放送が終わっているじゃないか。
そう思うのも無理ありません。ただNHK番組の歴史秘話ヒストリアでウルトラマン特集があったことをきっかけに、ちょっと僕の中で再燃してしまったのです。
だからちょっとだけ、語らせてください。ウルトラマンの奥深さ(のほんの一部)と、ウルトラマンを息子に見せたときのお話を。
大人になってからも楽しめるウルトラマン
ウルトラマンと聞くと、シルバーとレッドのラインからなるボディに、胸に青いタイマーをつけている大きなヒーロー。そう記憶している人も多いと思います。
まず言いましょう。ウルトラマンは宇宙人です。M78星雲という場所にウルトラの星という名前の星があり、そこが故郷だという設定です。
初代マンのはなし
初代ウルトラマンは、この宇宙人と地球人との事故から始まります。ウルトラマンが怪獣ベムラーを追いかけていて、地球へ逃げ込んできたところでウルトラマンと科学特捜隊のハヤタ隊員が衝突事故を起こします。ハヤタ隊員の命はそこで途絶えてしまいましたが、ウルトラマンがハヤタ隊員と一心同体になることで一命を取り留めました。そこから科学特捜隊がピンチになるタイミングでハヤタ隊員がウルトラマンへと変身するという、お決まりパターンで物語が進むことになります。最終回ではウルトラマンがゼットンという怪獣に敗れて死んでしまい、そこへやってきたウルトラマンゾフィー(ウルトラ兄弟の長男であり、ウルトラマンの上司)が持ってきた2つの命によって生き返ります。ついでにもう1つの命をハヤタ隊員に分け与えることによって、ウルトラマンとハヤタ隊員を分離することに成功しました。
ざっくり言うとウルトラマンのストーリーはこんな感じで、怪獣をパンチとキックと光線でボコボコにしていく映像作品です。3歳前の息子に見せることで唯一後悔したのは、これまでのアンパンチと違う本気のパンチやキックを、親に仕掛けてくるようになったくらいです。
この初代ウルトラマン、子供の頃に見るとただ怪獣をウルトラマンが倒すという怪獣プロレスの部分しか盛り上がりませんが、大人になってから見てみると、脚本家の意図から当時の時代背景を探ることができて、なかなか見どころがあります。
例えば有名なシーンとして、最終回付近で、開発担当のイデ隊員がこんな悩みをハヤタ隊員に打ち明けます。
「ハヤタ、君は何も感じないか。仕事のことさ。我々科学特捜隊がどんなに頑張っても、結局敵を倒すのはいつもウルトラマンだ。僕がどんな新兵器を造っても、大抵役に立たんじゃないか。いや、新兵器だけじゃない。我々科学特捜隊も、ウルトラマンさえいなければ必要ない気がするんだ。」
こんなセリフ、子供番組で普通いいます?しかも最終回直前の回で。
この回の脚本を手掛けたのは、沖縄出身の金城哲夫さん。当時はまだ沖縄返還前だったので、その想いが影響していると後に語られています。国連、そして日米安保。戦後の日本とアメリカの関係を、科学特捜隊とウルトラマンを使って表現したのだと思います。
僕が小学生だった頃は、このシーンを見てもなんとも思いませんでした。高校生くらいになって改めてこのシーンを見て、ウルトラマンの奥深さを実感しました。特オタ(特撮オタク)と呼ばれる人はきっと、こうした物語やセリフの奥深い部分まで理解して、一般の人よりも作品のことを好きになったんでしょう。
僕はそれほどの特オタではないと個人的には思っていますが、気持ちくらいは理解できます。嗜む程度ですよ。
ウルトラセブンのはなし
続いてウルトラマンの続編にあたる2作目「ウルトラセブン」についてです。
ウルトラマンの次の作品なので勝手にウルトラマン○○だろうと勘違いされ、ウルトラマンセブンって呼ばれることがあります。そんな単語を魚住が聞いたら憤慨します。大激怒です。聞いた途端、「あ”?」ってなります。息子だからなんとか抑えています。
このウルトラセブンという作品、初代マンと違って、作品のテーマがはっきりしています。初代マンはどちらかというと、長年地中で眠っていた怪獣が目を覚まして、地上に出てきてしまったり、人が住まない場所に住んでいた怪獣が人間界に出てくるようになったので退治をするというお話がほとんどでした。日米安保などを想起させるストーリーは、メフィラス星人あたりの話です。ほとんどは自然発生した、もしくは人間が開発を進めたちくで目を覚ました怪獣をウルトラマンが八つ裂きにしたり宇宙まで運んでいきます。
しかし2作目のウルトラセブンでは全く違います。まずウルトラセブン自身が人間に化けていること。初代マンは人間とウルトラマンが融合して暮らしていましたが、セブンは宇宙人でありながら地球人として暮らしつつ、地球の平和を守っていました。
初代マンは地球人と一心同体となったので地球の平和を守ること=自分も守ることにもつながりますが、セブンはただの宇宙人です。もっと詳しくいうと、宇宙恒点観測員340号として宇宙軌道図を作っている途中に地球の近くまで来ただけです。そこで地球を征服しようとするクール星人の野望を知り、阻止してくれたのが始まりでした。
それ以降、地球には何度も宇宙人が地球を侵略するためにやってきては、怪獣を放っていきました。つまりウルトラセブンに出てくる怪獣というのは、宇宙人が地球を侵略するための兵器だったのです。初代マンでは怪獣を倒してハッピーエンドとしてお話が終わりましたが、セブンでの最終目的は怪獣を倒すことではなく宇宙人の侵略から地球を守ることです。
妙だと思いませんか?ウルトラセブンは宇宙人で、地球の侵略を企む宇宙人から地球の平和を無条件に守ってくれるのです。普通に考えたら、これは地球人対宇宙人の戦いです。これがセブンの登場によって、地球人&地球を守ってくれる宇宙人 対 地球を侵略したい宇宙人の構図になっているんです。
初代マンで「ウルトラマンは地球の平和のために戦ってくれる善良の宇宙人だ」ということが根付いてしまった日本人にとって、セブンも地球の平和を守ってくれるんだと簡単に思いがちです。ですが作品の中で侵略のために地球にやってくる宇宙人たちは口を揃えて、「セブン、お前はなんで宇宙人のくせして地球人の味方をするんだ」と言ってくるのです。
大人になってこのセリフを耳にすると、「確かにそうね」と宇宙人のセリフにも一理あるなと思えてしまうのです。
ウルトラセブンの脚本にも、初代マンのはなしで話題にした金城哲夫さんが関わっています。もう考えさせられることばかりです。
ちなみにウルトラセブンは今年・2022年で55周年を迎えます。今から5年前は50周年で、大阪にて記念イベントが開かれていました。
魚住惇、31歳。サッカー部主顧問で審判もやっていたので、今よりもシュッとした姿です。当時ゆかさんとの関係は、プロポーズ後結婚式前で、婚約者でした。
ウルトラセブンの着ぐるみによるジオラマが、本当に素敵な展示会でした。
ウルトラセブンショーで大きなお友達に質問した時のセブン、お前だけは許さねぇ。その手の上げ方と首の角度は僕の大好きなセブンじゃない。
今思えば、よくこれを理由にしても一緒に大阪旅行に付き合ってくれたなと、ゆかさんの懐の大きさを感じます。
ただ残念なことに、我が家で初代マンを全て見終わって、次回作であるウルトラセブンを見始めた時、息子とゆかさんが2話目で「お話がつまらない」と言い出してしまい挫折していました。セブンはドラマのシーンが多すぎて、当時の子供にも不評で、視聴率が駄々下がりでした。それが息子たちにも影響して、僕だけがお酒の肴としてセブンのストーリーを楽しんでいるだけという悲しい状況になりました。
ごめんよセブン。ウルトラセブンは、まだ息子には早すぎた。もうちょっと大きくなったら、また履修させようと思う。それまで待っていてくれ。
ウルトラマン80のはなし
帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンエース、ウルトラマンタロウは飛ばしました。視点が子供よりになってきた作品たちなので、子供の目線としては楽しめますが、どちらかというとセブンの教訓を生かして子供向けに作られた方向性の作品なので、もうちょっと後でも良いかなと思ったのです。
そこで、ウルトラセブンの次に息子に見せたのが、ウルトラマン80です。名前の通り、1980年に放送されたウルトラマンです。
ウルトラマン80の主人公は、宇宙人です。セブンと同じ設定ですね。セブンでは地球人の風来坊に化けて、後にウルトラ警備隊に入隊しますが、ウルトラマン80はなんと学校の先生として働き始めます。当時、金八先生が流行していたことが汲み取られました。
ウルトラマン80の世界では、怪獣が負の感情からなるマイナスエネルギーによって具現化すると考えられていて、思春期を迎える多感な中学生がマイナスエネルギーの温床になっているという設定でした。ウルトラマン80は、教師として中学生に接することで、マイナスエネルギーの発生を根幹から絶とうとしたのです。
実際にストーリーの中には、中学生の不安定な気持ちが怪獣化してしまう話が結構ありました。失恋をきっかけに怪獣が出たとかね。
第2話では、登校拒否をしている生徒を先生が家まで迎えにいき、学校まで連れていくという描写もありました。今では学校に登校しない生徒の現象のことを不登校と呼んでいますが、当時は登校拒否って呼ばれていました。当時のウルトラマンを見ると、そんな発見もできるのです。
実は僕が学校の先生になりたいと思った感情の何割かは、このウルトラマン80が影響していたりします。社会に起こっている問題を教育の観点から解決しようとする。ウルトラマン80は僕にとって心の師匠です。
しかしこのウルトラマン80は、物語後半では学校の先生の描写が削られてしまい、隊員として怪獣と戦う場面のみとなってしまいました。ごく普通のウルトラマンの物語として放送され続けました。ちょっとこの辺りは、個人的に残念なところです。
長らくこのストーリーの転換の真意について明かされることはありませんでしたが、2006年に放送された、ウルトラマン放送40周年を記念して作られたウルトラマンメビウスの41話「思い出の先生」にウルトラマン80が登場し、ウルトラマン80が当時の生徒らと参加した同窓会の場で語られることになりました。
理由は、「怪獣に対応するにあたって、隊員の仕事が激務になってしまい、学校を去らねばならなくなった」という単純なものでしたが、それを大人になってから聞くと、「そうだったのか・・」と感慨深いものでした。
しかもそのストーリーでは、ウルトラマン80第2話で登校拒否だった生徒が学校の先生となって、不登校の生徒を家まで迎えに行って、「先生も昔、登校拒否だったんだ」と打ち明ける胸熱な展開。もう80ファンとしては涙なしには見られませんでした。
ただ、宇宙人からの侵略から地球を守るセブンと比べると、80に出てくる怪獣には宇宙人が絡んでいるお話が少なくなったので、割とストーリーが単純化されていました。これが息子にとって夢中になってくれる要因となりました。
このnewsletterを配信している現在、息子は「よし!エイティー!」と高らかに叫びいながら、変身ゴッコを楽しんでくれています。その後、怪獣(お父さん)をやっつけるためにキックをお見舞いすることもありますけどね。
ちなみに大好きだったウルトラマン80、調べてみると変身するための道具が2020年にプレミアムバンダイで抽選販売されていました。
【抽選販売】ウルトラマン80 ウルトラレプリカ ブライトスティック(ULTRA REPLICA) | ウルトラマンシリーズ 趣味・コレクション | バンダイナムコグループ公式通販サイト
ああ、7800円、大人価格か。ごめんけどこれは買ってやれないわ。それ以前に手に入らない。調べたらAmazonではプレミア価格で2万円になってました。
よくよく調べてみると、ウルトラマンに変身するためのグッズが大人向けにリメイクされて、定期的に作られ販売されていることがわかりました。これは見ちゃいけないものだった。
ULTRA REPLICA(ウルトラレプリカ) | ウルトラマンおもちゃウェブ | バンダイ公式サイト
ウルトラマンについて考察した論文
本当はもっとウルトラマンについて語りたいんですが、newsletter1回分の文章量では全然足りないので、ウルトラマンについて同じように語っている人の文章を紹介して、今回は終わろうと思います。
また、本気で語ろうとすると、知識として身につけているものの、どこで情報を得たのか確証のない内容が多かったのも事実です。
では最後に、大人の立場でウルトラマンについて考察してみたい方におすすめの文章を紹介します。
愛知淑徳大学の学生が書いたものです。なかなか読み応えがあり、ウルトラマンについて深く考察しています。初代マンの話を全て通して分析し結論を出した、読み応えのある文章です。
そしてこちらもおすすめです。
ウルトラマンとは何か -国際連合と日米安保条約- ~メフィラス星人が突きつけた問い~
こちらは高校の社会の先生が書いた文章です。授業実践事例として、ウルトラマンを使って歴史総合の授業を行った報告や考察などが書かれています。ウルトラマンを社会情勢と絡めて教材として扱っています。
どちらもウルトラマンシリーズのファンの方なら、既にご存知かもしれませんがご紹介まで。
ウルトラマンが、ただの怪獣プロレスを行う光の巨人ではないこと、おわかりいただけましたでしょうか。
なお、NHKで放送された歴史秘話ヒストリアの続きとして、「発表!全ウルトラマン大投票」が9月10日土曜日22時、NHKBSプレミアムより放送されます。
また、ウルトラマンと沖縄を絡めたドキュメンタリードラマ、「ふたりのウルトラマン 沖縄本土復帰50年 ドキュメンタリードラマ」もNHK BSプレミアムで9月9日金曜日22時より放送されるそうです。まだまだウルトラマンの夏は終わりませんね。
大人の立場からウルトラマンを見てみたいという方は、要チェックです。(僕は有料のBSを契約してないので見られません😂)
今回のnewsletterは以上となります。ウルトラマンだけを語ってしまいましたが、「いいね」を押していただけるとうれしいです。あなたの心に残ったウルトラマンがありましたら是非、「#こだわりらいふ」をつけたツイートや、Substack内のコメントまでお願いします。