高卒プログラマーを育ててみたい
生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
学校で働いていると、企業にお勤めの方とはあまり接点がありません。
ただ僕の場合はありがたい事に、Twitterでの交流もありますし、友人がIT系にも強いことで、そこから広がる人間関係もあります。
今回はそんなつながりから、とある企業の社長さんから、高卒でプログラマーを雇いたいというお話をいただいたというお話です。
高卒プログラマーを育ててみたい
以前からこのnewsletterに登場していた、プログラミングのセンスがある生徒、実は大学進学ではなく、高校卒業後の進路は就職を希望しています。
普通に考えたら、「それだけの学力がありながら進学しないなんて勿体無い!奨学金を借りてでも大学に行かせるべきだ!」となってしまうわけですが、保護者の意向もあるので無理に進学を進めることはできません。
ただ、現在の日本学生支援機構の奨学金は、利子の有無に限らず返済する必要があります。一昔前までは教員として採用されたら返済しなくても良いという時代もありましたが、今となってはそんな優遇措置もなくなりました。
現状、奨学金というのは普通にお金を借りるだけの制度です。そして社会人になった途端に、返済義務が発生します。社会のレールに乗れなかった場合のダメージは大きいです。
その生徒本人にも、家族にも、経済的にかなり大きな影響を与えることになるので、ここ最近は「奨学金を借りてでも大学に進学すればいいじゃん」という言葉は言いづらくなりました。
肌感覚による推測もありますが、その学校に通う生徒の学力のレベルと、家庭状況にも割と関係があるようにも思います。もしこれが偏差値の高い学校であれば、奨学金を借りてでも大学に進学したいと考える生徒は多くなりそうです。ケースバイケースですけどね。
まぁ今の時代、本当に大学や専門学校に行きたいのなら、まず一度社会人になってお金を貯めてからでも良いのではないかとも、僕は思うようになりました。本当に大学でもっと勉強したいという意思が固いのなら、そんな人生もありだと思います。
となると、高校卒業後に働くとなれば、就職活動をすることになります。高校在学中の就職活動というのは、大学生の就活とはまた違ったルールが存在します。これがそこそこ厄介です。
例えば、企業が出してくれる求人票は、5月ごろに一度職安に登録しなければならなかったり、学校に届けることが解禁されるのが7月からだったりと、時期によってもやることが決まっています。
このスケジュールに合わせて学校側も指導を行い、どの生徒が企業の面接を受けさせるかの最終的な決定は学年での会議で決まったりもします。
実際に面接が始まるのは、9月半ばです。しかも、大卒の就活とは違って、同時に複数の企業の面接を受けることはできません。面接や試験を受けた企業から内定がもらえなかった場合は、二次募集をしている企業から再度選ぶことになります。
自分が希望する就職先にどうしても入りたいのなら、高い評定を維持しながら、先生方から信頼される人物として学校生活を送ることが必要です。これは大学の推薦入試を受験する際も同じですけどね。
事実上、その企業に就職させるということは、学校が斡旋を行うことに等しいので、こちらとしても企業様に迷惑がかからないように、自信を持って送り出せる生徒を選定します。
さて話はプログラマーに戻します。そんな中で、実際に求人票を学校に持ってきてくださる企業様の業種の中に、現状はIT関係はほぼありません。製造・販売・介護・事務(少数)などが特に毎年求人のある業種です。
商業科の授業を受けている生徒で就職を希望する生徒は、特に事務に集中します。主に地元の信用金庫での受付業務の求人が来ますが、AIによる自動化や窓口業務の削減などを考えると、個人的に将来性があるかどうか不安です。
で、パソコンを使うことがどの業種でも当たり前にはなりましたが、結局はどの職場でも軽い事務作業に留まるくらいで、プログラムを組んだりするお仕事の求人はほぼゼロに等しいのが現状です。
求人がない以上、将来プログラマーを目指したり、エンジニアとして働きたい場合は、高卒で就職せずに、専門学校や大学に進学する必要が出てきます。
専門学校や大学でのプログラミング経験の有無に関わらず、求人票が来てない以上は最低限の学歴として大卒や専門学校卒が必要だということです。条件だけをクリアするのなら、趣味でプログラミングをやってる、全然分野が関係ない大学の学部の学生であっても、そのIT企業の求人に応募するまではできるわけです。実際に採用されるかどうかは別ですけどね。
改めてこの現状を考えると、「高校生にはプログラミングは無理だろう」という採用側の感覚が見え隠れしているような気がしました。
なぜ、高卒ではプログラマーになれないのでしょうか。
あれやこれやとここで僕が考えたとしても、僕は企業の採用担当でもなければ経営者でもないので、最近話題のChatGPTに聞いてみることにしました。
なるほど、実力次第でなれますよと発言していますね。これを高校生が見たら、夢が広がりそうです。
次に疑問に思ったことがあるので、聞いてみました。なるほどね、高校生は経験やスキルが不足していると思われているんだね。でも、高校生と大学生の違いは、大学4年間を過ごしたかどうかなんだから、そこで生まれる差なんて、人によると思うんですよ。
んー、多分ですが、この3つ目の回答が真実のような気がしてきます。これまで高卒でのプログラマーを雇ったことがない。だから求人票も高校には出さない。
もしそうなら、高校生のうちにある程度アルゴリズムの勉強をして、言語の勉強さえすればそれらの知識が活かしていける人材が育ったら、高卒のプログラマーは全然アリ何じゃないか。僕はそう考えるようになりました。
インターンシップ先の開拓に成功
そんなことをうだうだと考えているとき、僕の友人つながりのとあるIT企業から、「魚住先生の生徒で、誰か働ける人はおらんか?」と言っていた話を思い出しました。
そういや、昨年の夏頃に、雑談がてらそんな話を聞いたことがあったな。
昨年はまだその企業に送り出せるような逸材がいなかったので、その言葉を初めて聞いた時は「いると良いんですけどね。プログラミングを学びたいと思っている生徒はみんな、大学への進学を希望しているんですよ。」と答えていました。
基礎的なことは自社で学習してもらい育てるから、なるべく若いプログラマーを雇いたいっていう方針で若者を育成する段階からお金を出してくれるような企業ということでした。
とはいえ生徒と職場との相性の問題もあるので、まずはインターンシップとしてお世話になってみるのが良いんじゃないかと考えて、社長に連絡してみました。
結果、二つ返事でご快諾いただきました。しかも1度に2人も。ここまできたらもう1人お願いしようと思って、昨年度のプログラミングの授業で「こいつ、出来るぞ」と思える生徒も誘いました。
2人の生徒には、本当にそこの企業に就職するかどうかはさておき、とりあえずはIT企業で働くっていうことについて、勉強がてら職場を体験してもらうつもりです。
正直な話、情報Ⅰの共通テスト対策のことばかりを最近は考えていて、もっと偏差値の高い進学校に転勤できたらいいなとばかり考えていました。でもそんな受験校だと、今回の件のように高卒だけどIT企業で働きたいという生徒とは出会わなかったと思います。
そう考えると、今の学校で僕がやれることも、まだまだ探したら出てきそうな予感もしてきました。今回のような企業の方との人間関係も広げていけば、今の勤務校からの就職で、魚住推薦枠というのも生まれそうかも。ちょっとワクワクします。
ただ、毎年のようにプログラミングのセンスがありそうな生徒と出会うことも、全ては運任せです。それを言ったら、僕自身の人生もほとんどが運でしょうけどね。
ともかく、まずは僕が勤務校で見つけたプログラミングのセンスがありそうな人材を、然るべき場所と繋げることができそうな手筈を整えることができました。良い方向に向かっていけることを願っています。
勉強を教えるだけじゃない教師の役割
今回の件を通して、人生において大切なことは、頭や心の中にしまってあるようなパズルのピースを、ふとした瞬間に繋げていくことだと思うようになりました。
人間関係は特に、人と人とがつながることで化学反応が起きます。時に嫌な反応が出ることもありますが、誰かと誰かを組み合わせることでの良い反応は、時として本当に引き合わせて良かったと心から思えるような現象が起こることもあります。
魚住惇という教員が人間力フィルターとして働いたり、時として人と人とを繋ぐハブとしての役割を果たす。これはChatGPTのようなAIにはまだまだできないんじゃないかと思います。かといってAIが行うマッチングサービスが出したアドバイスよりも、今回の件では僕がつなげたという部分に信頼があるとも思うのです。
先日、北真也さんのYoutubeライブで、「今個人がBLOGで情報発信を行う意義」について倉下さんと対談されているのを聞いて、ふと思いました。
ブログがなぜ下火になってしまったのかについては、倉下さんがおっしゃっていたように、他のメディアが出てきたからということに概ね同意します。
それに、世の中全てのブログが、アフィリエイトを中心としたブログとなってしまえば、今後はChatGPTがおすすめの商品や情報についての記事を書いていき、世の中に溢れる最大公約数的な正解が書かれている文章の、”みんながなんとなく正解だと思っていることが書いてある量産型ブログ”が無限に増えるでしょう。
"何か知りたいことがあったらGoogle検索するという時代"が終わりを迎えるのなら、生き残るのはもう完全に個人だと思います。
自分自身の考えを持った個人として生きるのか。 それともAIや世間が出した、みんなが賛成しそうな答えに従って、ひたすら批判されずに量産型として生きるのか。
もちろん量産型として生きることに向いている性格の人もいると思うので、無理に個性を持ちなさいなどとは強要はしないつもりです。
僕の教師としての役割は、量産型の中から"個人として生きた方が良さそうな生徒"を探し出し、その原石を磨き上げることだと、今回の件でより強く思うようになりました。
常識を教えたがる量産型の先生には、社会に出たらウンタラカンタラというやつをご指導いただいて、そこにどことなく不満がありそうな、アムロやカミーユみたいな存在にガンダムを与えてみるような役割を、僕がやりたいなと思います。
ブライトは、ちょっとまだ若すぎたんですよねきっと。アムロを殴っちゃいましたし。僕は生徒を殴ったりはしません。
しかしこの、パズルのピースが上手くはまった時の、「うおおおはまったぁぁぁぁ!」っていう感覚は、本当に気持ちが良いです。人間関係だと尚更です。
学校では高校入試やら学年末考査やらで、この時期は雰囲気がいつもと違いますが、僕はもうテスト用紙の印刷も終わっているし、あとは採点を待つだけなので、働いている時に割と心の余裕が出てきました。
少しずつ暖かくなってきましたし、取り組みたいプログラミングの課題もありますし、ちょっと最近は楽しい毎日を過ごしています。
問題集の原稿の締め切りには追われてますけどね。
今回のnewsletterは以上となります。 「いいね」を押していただけるとうれしいです。愛知県にオフィスを構えるIT企業の採用担当の方、もし高卒でエンジニアやプログラマーを採用したいというご意向がございましたら、DMください。