息子のイヤイヤ期その後
生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
これからの修学旅行のスタンダード
こちらのツイートでお示しした通り、僕は今、大阪にいます。 これを書いているのは連休中ですが、大阪にいる前提で文章を書いています。
今回の勤務校での修学旅行、以前は沖縄での平和学習でしたが、コロナ禍で飛行機の利用が厳しくなり、急遽広島・神戸・大阪に行き先が変更となりました。
僕は修学旅行にメインで関わったわけではありませんが、学校DXの視点から、今回の修学旅行の何がすごいのかを話していきたいと思います。
Teamsを併用した修学旅行
修学旅行には「しおり」がつきものです。「しおり」とは旅行の日程が冊子のことで、行程表や持ち物リスト、部屋についた際の安全点検簿や体調管理用紙なども挟み込まれています。
よく絵を描くのが上手な生徒から、表紙や挿絵を募集することもあります。採用された絵は修学旅行に行く先生と生徒全員の手元に自分の絵が渡ることになるので、大きな達成感が得られます。
そのしおり、今回は紙媒体でも印刷して生徒・職員全員に配布があったものの、同じ内容のPDFを配布することになりました。 これまでなら、PDFがあった方が良いじゃんと僕が勝手にスキャンしていたものですが、それを修学旅行担当の先生自ら用意したPDFが先生方と生徒全員に見られるように、Teamsで共有されました。
PDFという形式そのものは昔からあるものであり、PDF化すると再編集が難しいことから、DXにおいては割と初歩的なものとして見られる傾向があります。最初からWordファイルを共有すれば良いと考えたり、Googleドキュメントや別の再編集に適した方法で共有する方が効果的ではないかという見方もあります。
しかし、PDF形式の最大の利点は、ほぼすべてのスマホやタブレットで閲覧できるという点です。見るだけならどんなデバイスでも大抵アプリが用意されていますし、もし編集したいのであれば、iPadならGoodNotes5などのノートアプリで読めばいい。ファイルから開いてもメモ書き程度なら余裕でできます。利用するユーザー全員が同じデバイスを使うのなら他の形式でも構わないと思いますが、他のデバイスでも利用したい、環境に依存したくない、オフラインでも使いたいと考えると、PDFは実に合理的な形式です。この形式で修学旅行のしおりを用意することに意味があるわけです。
そして、修学旅行中は生徒によるスマホの利用を全面的に認めました。その代わり、人の肖像権を守ることや、人が話をしている際に慎むなど、TPOに合わせて気をつけて使うという最小限のマナーを守ること。加えて、こちらからの連絡に反応したり、添付されたファイルを確認するという条件をつけました。
今年度所属している学年は本当にICTへの理解がある先生方の集まりで、「本当に生徒のためになることを考えるなら、スマホを一切禁止してトラブルの元を断つよりも、社会に出たときにスマホを使いこなせない方がやばい」という共通の認識ができつつあるのです。
こんな学年なら、一生そこで仕事したい。
これまでの遠足や修学旅行なら、紙の資料だらけです。生徒も先生も、しおり、行き先のマップなど、何枚もの紙を携帯しながら過ごします。これが普通でした。
2022年の勤務校では、新たな時代が始まりました。スマホフル活用です。もちろん紙のしおりを見ることを選択する人もいますが、スマホで見られるならそっちの方が良いと思う人にとって、紙の資料がなくてもスマホさえあればいつでも同じ内容が確認できることの方がメリットが大きいのです。
もちろんこれまでも、スマホを容認してきた修学旅行はあったと思います。保護者との連絡手段などを考えたら、所持することを禁止することはできません。ただし今回との大きな違いは、学校側が生徒のスマホ使用を前提としたことです。自分達が見ていないところでの使用を黙認するのではなく、団体行動の一環として使いなさいと真正面から踏み込んだことです。
情報モラルやデジタルシティズンシップというから話がややこしくなるのであって、「他人が嫌がることを避けつつ便利に道具を使いましょう」と言えばその一言で済みます。これが一番難しいんですけどね。
実質紙では無理だった
では今回の修学旅行、なぜ従来通りの紙の資料Onlyでの決行が無理だったのかというと、紙の限界を知ったからでした。
このご時世、宿泊を伴う学校行事は、新型コロナウイルス感染拡大の温床となるケースとして報告されています。実際にクラスターが発生した事例もニュースで報道されていました。
これを防ぐためには、朝と晩に体温を測り、記録に残すことが必要です。では修学旅行でそれをどうやってやるのか。
最初はこの作業を、紙でやろうとしました。しおりの末尾に切り離せるページを何ページか用意して、そこに記録して切り離して先生に提出する。従来はこうやって体調を管理していました。
コロナ禍以前は、体調が良いのか悪いのかくらいしか記録しませんでしたし、体温も全員測っていませんでした。体温を測るというのは、体調が悪い時に発生するタスクで、体調が悪い→体温を測る→風邪かインフルエンザなどを疑うくらいにしか使われなかったのです。
今は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、まずは体温を測ることが、集団行動の大前提となっています。これを確実に紙に記録させて確認するとなると、1学年200枚以上集まった紙を、1枚1枚チェックして、異常がないかを確認する作業を教員がやらなければなりません。
あまりにも途方もない作業に追われるのなら、それを回避するためにデジタル化せざるを得なかったというのが正直なところです。
ところが結果的に、これがしおりのPDF化などにも波及して、修学旅行全体にかかわる考え方を転換することに繋がりました。従来通りの考え方や手法では、これ以上仕事を増やすことそのものが限界だったのです。
今の時代の学校の先生がやるべきお仕事を、全て紙でやる。僕はこれは、泥舟に乗っているようだと思っています。沈みかけていて、実際浸水している泥舟です。
これまで乗っていた船が泥舟だったら、何をすべきか。安全な船への乗り換えです。何が安全なのかは、従来の考え方では理解できない領域だと思います。それならば、少しでも先が見通せる人の言葉を信じて、ついていくしかありません。
もし僕自身が、そういった立場なら、少しでも皆さんに信じていただけるように尽くすしかないと思っています。ついてきて欲しい人に「この人はExcelの関数が通じないからなぁ」とか「話したって、どうせわかってもらえないし」とこちらから壁を作ってしまっては、応援もされませんし、自分についてきてもくれません。
ここまで偉そうに語っていますが、僕が今回感動しているのは、昨年まで僕が思い描いていたDX構想に共感してくださった学年主任の先生が先導を切って進めていたDXに、割と乗っかってくれる先生方が増えてきて、勤務校ではすでに僕の手を離れていることなんです。少ない人数からのICTへの理解が、時間をかけて学年全体に広がっていきました。本当に時間がかかりました。
今回の修学旅行の準備段階では、僕からは何も言っていません。僕自身はあくまで副担任という立場で関わっているだけです。にもかかわらず、iPadの所持率が増えたり、スマホで資料を参照した方が合理的だと考える人が、同じ学年の中で増えてきました。本当に嬉しい変化です。僕が図々しく提案するよりも先に、PDFでしおりを配布しようと決まっていたのです。
Teamsにしてもロイロノートにしても、導入者である僕がほとんど絡まずに仕事が進んで行くことに、ただただ感動しています。ICTの話が自分以外のメンバーで盛り上がっていることに、ちょっとやきもちを焼いている自分もいますけどね。ですがその反面、ICTを活用することが日常となり、それが当たり前になっていることも同時に嬉しく思うのです。
大体ね、僕がいつも出しゃばるのはあまり良くないんですよ。それって逆に言うと魚住が所属していない学年では活用できないことを意味しますから。皆さんにとってICTが当たり前で、何にも目新しいものではなくなったとき、僕はトラブル対応や、現場じゃどうにも対応できない時にメーカーや教育委員会の担当の方とやりとりするという、本来の仕事に戻ることができるってもんです。
心のどこかではちょっと寂しい気持ちがありますが、同時に喜ばしいことでもある。そんな想いを抱えながら、今日は修学旅行最終日を楽しんできます。
息子のイヤイヤ期その後
先週のnewsletterで、イヤイヤ期が始まったというお話をしました。コメントや、Twitterで反応してくださった方、ありがとうございました。 その後に五藤晴菜さんから「選択肢を用意するとどっちか選んでくれる」というアドバイスをいただきましたが、実際に効果があった時と、逆効果だった時がありました。
例えば、お風呂に入るの時間なのに、嫌がってなかなか入ってくれない場合に、用意する選択肢で、「お父さんとお風呂に入るか、お母さんとお風呂に入るか、どっちがいい?」と聞いたときはぎゃん泣きのままでした。
推測ですが、きっと「どっちにしろお風呂に入ることは決まってるじゃんか!」と息子なりに察して、「その手には乗らねーぞ!」と思ったのかもしれません。
ところが、泣き叫んだままお風呂に入れて、出てきた時に「わんわんのパジャマと、すみっこぐらしのパジャマ、どっちがいい?」という問いに対しては「すみっこぐらし」を選んでくれました。それまでおむつさえ履くのを嫌がって逃げていたはずなのに、おむつ、シャツ、パジャマの全てを身にまとってくれました。
その時の機嫌なんかも大いに関係していると思っています。この日は”ばぁばの家”で昼から夕方まで過ごした日で、昼寝なし。帰宅時にはすでに怒りMAXの息子でした。
「ここ!やだ!ばぁばち!いく!おとーしゃんばいばい!」の繰り返しでした。
長い文章を自分で考えて喋ってくれる息子に感動。でも近づくと「おとーしゃんばいばい!」を繰り返して、怒りを表現していました。その姿がとにかく可愛くて、その後僕が爆笑してしまい、お前何笑ってんだという怒りのぎゃん泣きに変わってしまいました。
この時初めて「だっこ!やだ!」を聞きました。いつもは抱っこをせがむのにねぇ。
ターミナルと違って、適切なコマンドを実行しても、機嫌や気分によって返ってくる内容が全然違う。それが人間というもの。ここ最近は僕も仕事に行くことで心のリフレッシュができているからか、子どもに対してかなり余裕をもって接することができるようになりました。心に余裕がないと、こちらも「これだけやってあげてんのに!なんで思い通りにならないんだ!」なんて思いがちです。自分に理不尽を受け止める余裕さえあれば、「ほほう、今はこれが効かないんだな。それじゃこっちか」と、早いタイミングで気持ちを切り替えることができ、試行錯誤ができます。 自分の心の安定のためにも、僕には学校での仕事が必要なんだなと改めて実感しつつ、復帰してからは楽しく仕事をしながらイヤイヤ期の対応をしていました。
早くこのイヤイヤ期、治まってくんねーかな。
Obsidian Sync、また学校で使えなくなった→解決
先々週、体調不良によって1週間をいただいた後、復帰してからショックな出来事が起こりました。
Obsidian Syncが使えなくなっていたのです。自宅のmacや手元のiPadでは正常に同期できているので、愛知県の県立高校のネットワーク内での動作が不調だということがすぐにピンときました。
またか。またこの問題に直面しているのか。
思い当たることは、ObsidianのバージョンをInsider Previewにしたことくらい。でもそれってObsidian Syncと関係があるのかしら。
久しぶりに職場に復帰した朝に起こった出来事だったので、なかなかこれの心理的負荷が高かったように思います。
まず疑ったのは、WindowsUpdateによる新たな設定やらグループポリシーが適用されたのではないかということ。 教師用タブレットの管理者権限アカウントは学校を代表して魚住が所属している分掌に与えられていたので、まずはそれを使ってファイアウォールの確認。
特に問題なし。
続いて、BYOD用の何もフィルタリングや制限のないネットワークで、別の端末からObsidian Syncを試します。
これは普通に同期できました。つまり原因は県立高校のネットワーク独特のもの。
というわけで、教育委員会に連絡しました。僕ができるのはここまでです。
そして丸1日かけて調べてもらいました。教育委員会が整備したネットワークでは、ファイアウォールのフィルタリングの設定がIPアドレス単位でかかっています。Obsidian Syncの通信に必要な次のホスト名との通信を改めて見直してもらいました。
2022年現在のObsidian Syncはリモート上にVaultを作成し、そこと同期する仕組みで、Vaultを作成した時点で00〜06のサーバーのどこかに割り当てられます。昨年度に対応していただいた時は、01〜03のホストを許可してもらったので、当時と今を比べると、1年間で同期サーバーを2倍に増強したのではないかという事情が伺えます。
Discordで開発者に聞いた感じでは、今後もこのホストは変更がある可能性を示唆していました。まだまだ増やすのでしょうか。
Vaultが作られた時点で同期サーバーに割り当てられるので、僕のVaultが01〜03のどこかというのは多分変わっていないはず。
では、なぜ急に通信できなくなったのか。
原因は、sync-01.obsidian.md〜sync-03.obsidian.mdのホストのIPアドレスが変更されていたからでした。
教育委員会は、これらのホストに対してIPアドレスを調べて、そのIPアドレスをファイアウォールに設定してくださっていました。しかし、いつの間にかドメインに割り当てられていたIPアドレスが変わってたせいで、通信を許可する設定の意味がなくなってしまっていたのです。
そこで、現在のObsidian Syncに使われている各種サーバーのドメインからIPアドレスを割り出してもらい、全ての通信を許可する設定を改めてしていただきました。
教育委員会の担当の方からこのことを聞いたとき、本当ならドメイン単位で許可ができれば良かったのですがともおっしゃっていましたが、「今後も通信ができなくなった時に遠慮なく連絡してください。またIPアドレスを調べ直します。」とも言ってくださいました。
愛知県で働く、一人の教員が、教育のためとはいえ個人で使うアプリの同期についてここまで対応してくださる。もう電話越しに、何度頭を下げたことか。
世の中にはGIGAスクール端末に不遇な制限がかけられて、不満を漏らしている人もいますが、手順を踏んで相談をしていくと、今回の僕のように対応してもらえると思うのです。
いじめ問題では学校ぐるみで隠蔽するだの、何かと良くない方向で名前を聞いたりする教育委員会という組織。僕は愛知県の公立高校で働く教員として、そこで働いてくださる全ての職員の方に、敬意を表します。この激動の時代に学校を運営するために、日夜働いてくださっているのですから。全ての先生の味方ですよ。
魚住もいつか、そういう立場になって、現場の先生方を支えるようになるのかしら。そんなことを考えつつも、Obsidian Syncの対応に感謝しつつ、知的生産に精を出していた今日この頃です。
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