期末考査を終えて分かった。情報Ⅰの2学期中間考査、やって良かったよ。
生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
2学期中間考査、やって良かったよ
少し前の話ですが、ようやく2学期の成績処理が終わりました。毎年何かしら新しい試みを試しているんですが、今年度の新たな試みとしてやってみたのが、中間考査の実施でした。
高校の授業は、「単位」で数えます。1週間に1回授業がある科目は1単位、週に2回なら2単位と表現します。情報Ⅰは2単位なので、各クラスで週に2回授業を行うわけですね。
この単位数というのが、定期考査の回数に関わってくるわけです。
明確な基準があるわけではありませんが、家庭科や音楽などの実技科目は期末考査だけ実施する傾向があります。これは中学校にも共通しています。そして国語や英語、数学などの主要科目が中間考査を実施ているのは、単純に単位数が多いからです。
今回は、「今年の情報Ⅰは、2単位だけど2学期の中間考査も実施したら、めちゃくちゃ良かったよ」という話がメインです。
情報はこれまで、実技科目だと思われてきました。実際にWord、Excel、PowerPoint、余力がある先生はHTMLなどの実習が中心だった学校も多くありました。これはもうこのnewsletterでたくさん語ったと思います。
それが科目が再編されて試科目となり、改めて情報教育の指針が文科省より示されたことで、やるべきことがはっきりしました。
勤務校では僕が赴任した当初は「社会と情報」という、まぁちょっと厳しくもできて、ぬるま湯見たいな感じにもできる、全国で最も採用数が多い科目が採用されていました。それに嫌気が差したので、プログラミングが入っている「情報の科学」に科目を変更しました。
このタイミングで勤務校は定員割れを起こすようになり、また、近隣の高校が統廃合を伴って再編成され、毎年定員割れする学校になりました。
この2つのタイミングが重なったことで、情報科から評定1の生徒を多く出してしまうことにも繋がりました。これまでになかったことです。
通知表に記載される5段階評定を算出するには、テストの点数が関わります。期末考査だけを実施している科目だと、評定を算出する際に利用できるテストの点数は1回分だけです。つまり期末一発勝負です。
期末考査のみだと2学期中に1回しかテストを実施しないので、こちらもテストの作成は1回で済みますし、生徒も1回テストを受けるだけでその学期が終わります。ある意味1回勝負で赤点かどうかが決まるわけです。
しかも2学期は9月から12月までと期間が長く、その分授業も進みます。期末考査だけだと範囲が広くなるわけですね。9月に学習した内容が12月のテストの範囲となると、テスト週間に入ってから復習しようにも間に合わないかもしれません。
昨年度までは、2学期に赤点だった生徒は10人を超えていました。何から手をつけて良いのかわからないという悩みもきっとあるでしょうし、勉強するにしても時間が足りない。
そんな状態を僕が作り出すのは、違うなと思ったんですよ。みんなに真剣に情報の勉強をしてほしいなとは思っていますが、赤点を多く輩出することが目的ではありません。
それに、どの科目も似たようなものかもしれませんが、取り組む内容は徐々に難易度が上がります。本来は毎日学習することが理想で、どれほどの学力に到達しているかを測るのがテストというわけですが、現実的にはテストがあることを理由に勉強する生徒がほとんどです。
なので、生徒に自ら学習する機会を作らせるためにも、テストの回数を増やすしかないなと思いました。そのための中間考査です。
ただし1学期はWindowsの基本操作や、ロイロノートなどのGIGAスクール系アプリの操作などに慣れさせなければならないので、1学期の中間考査を実施できるまで授業を進めることができませんでした。だから中間考査をやるなら2学期だけにしようかなと年度当初から考えてました。
適度な危機感と炙り出し
2学期の中間考査に情報がある。これはかなりの緊張感を生徒らに与えることになりました。何せうちの生徒の口癖は「情報ワカラン」ですから。
とは言っても、10月に行われた2学期中間考査の平均点はまずまずなもの。いつもの30点とかではなかったので、まぁ生徒らも頑張ったんだなというのが見て取れました。
ちなみに今回の2学期の期末考査の平均点は29点。どちらかというとこっちの点数の方がいつも通りなイメージです。
成績処理では、2学期の中間考査と期末考査、それから授業中に取り組ませた課題の状況などを評価することで計算されます。
仮に期末考査の点数が良くなかったとしても、それだけでは成績は決まらず、中間考査の点数や授業での様子、課題の提出状況や内容が加味されるわけですね。
結果として、昨年度よりも5段階評定で1がついてしまった生徒が極端に減りました。0ではありませんでしたけどね。それでも片手で数えるくらいに減ってくれました。
テストを作る方も受ける方も労力はかかりますが、どこかで何かしらの努力をした生徒の頑張りが報われるような仕組みが作れたんだと思います。
今思うと、昨年度のテストは内容が濃かったなと思います。範囲が広い分、出題したいけど問題数や配点的に無理だなと断念した問題も沢山ありました。
それに比べて今回は、出題したい問題が満遍なく出せて、上位層にも満足してもらえるようなテストに仕上がりました。
もちろん内容的には進学校でも猛威を振るうはずなので、早く試したいところです。
何度も言いますが、2学期中間考査をやって良かったなと思います。次にやるとすれば、課題考査でしょうか。もしそうなら、長期休業中の課題も課さないとですね。
これまで実技科目というか、主要科目として見られなかった分を、どこかで取り戻そうと考えてます。来年度はどんなことにチャレンジしようか。
毎年恒例、例年通りに甘えず、絶えず試行錯誤しているのが、今は楽しいですよ。
日本情報オリンピック本選進出者に勤務校生徒が選出された
次にちょっとだけ良い話を。
日本情報オリンピック第4回女性部門(JOIG 2023/2024)の本選進出者に、部活で面倒を見ている生徒が選ばれました。嬉しいですよ本当に。言わば全国大会出場です。
まず、情報オリンピックとはなんぞやという話から。
数学オリンピックというのがあるように、1989年から国際情報オリンピックというのが毎年行われています。2日間にわたって行われる大会で、1日5時間、3問ずつプログラミングの課題に挑戦します。
この国際情報オリンピックの代表選手を選出するための大会が、一般社団法人情報オリンピック日本委員会が実施している「日本情報オリンピック」という大会です。
この日本情報オリンピックの本選に出場したうち優秀な成績だった人を日本代表とするわけです。
2023年現在、日本から派遣することになっている世界大会は、国際情報オリンピック、ヨーロッパ女子情報オリンピック、アジア太平洋情報オリンピックの3種類です。
日本情報オリンピックも「日本情報オリンピック」と「日本情報オリンピック女性部門」と2つの部門に分かれています。今回選ばれた生徒は女子生徒なので、女性部門の本選に選ばれた形です。300人ほど出場することになっています。予選と本選はオンラインで取り組む競技なので、一度に300人が受けられるわけです。
その本選では10名の中高生がAランクとして選ばれて、そのうち4名がヨーロッパ女子情報オリンピックに派遣されます。
Aランクがどれくらいの快挙かというと、Aランク保持者だったら、慶應義塾大学の環境情報学部のAO入試で1次試験免除の対象になるんですよ。2次試験は面接のみなので、これがいかに大きいかがわかります。
ちなみに勤務校の生徒の本選進出が決まった理由は、一次予選での結果が満点だったからでした。
出題内容は日本情報オリンピックのサイトに過去問が掲載されています。
そして、予選や本選に使われるのが、AtCoderです。競技プログラミングに使われる、プログラムの自動採点が備わったサイトです。プログラミングの腕を競うために使われる超人気サイトです。
出場資格がなくても、AtCoder上で同じ問題にチャレンジすることができます。
JOI 2023/2024 一次予選 (第1回) 過去問 - AtCoder
昨年度まだ2年生の副担任だった頃に、僕も時間を見つけては取り組んでみていました。一次予選は割と簡単でしたが、二次予選ともなると、1つの問題に対して1週間くらい悩んだり考えたりしてました。
3年生の担任になってからは、進路関連で時間がいくらあっても足りないくらい取り組むことが増えたので、全然手が回ってないんですけどね。卒業式後あたりにまた取り組もうかなと思ってます。
周りを見てみると、指導や対策を得意とするコンテストがある先生をお見受けします。全国商業高等学校英語スピーチコンテストとかね。
うまく育てたら結果が出せそうな生徒に声をかけて、指導して、表彰台に上がらせるわけですね。正直言って、カッコいい。
そういうのを見ると、僕も対抗心を燃やしてしまうと言いますか、魚住先生の指導の賜物だとか言われたいわけですよ。
何より、自分がこれまで取り組んできたこと、勉強したことなどを、生徒に還元するチャンスだと思いました。
魚住という人間と関わることで、プログラミングの楽しさ、面白さが少しでも伝わって、それを実力として発揮してくれたらどんなに嬉しいことか。
学校の普段の授業という枠を超えた取り組みに、チャレンジしたいと思ったんですよ。「情報オリンピック選手の育成」、もう響きだけで最高じゃないですか。
僕はこの機会で味を占めることができたら、プログラミング教育を自身の大きな柱にしたいんですよね。
ただこの先、本選に挑む上で、どうしても準備しないといけないことが出てきました。言語です。
一次予選と二次予選で使えるプログラミング言語はPythonでも良かったんですが、本選以降はC++に限定されると要項に書いてありました。
理由は、Pythonの処理の遅さです。ライブラリが豊富で、プログラミングのしやすさを考えたら、Pythonの方が使いやすいなと思います。ただし、複雑な処理を行う場合はどうしても時間がかかってしまいます。インタプリタ言語の宿命です。
本選出場の生徒には、これからC++を新たな言語として学んでもらい、自分が考えたアルゴリズムをC++でかけるようになってもらう必要があります。
一応Pythonをこれまで使ってきたので、似ている部分は多々あります。本人にもこのことを軽く話してみましたが、PythonとC++の違いを話していたときに変数の宣言について話したところ、「あぁ、ならVBAのDimみたいな感じですね」と言ってました。頼もしい。
すでに商業系の授業でExcel VBAを使っているから、既に2つの言語を話せるんだな。それならすぐにでも3ヶ国語話せるようになるに違いない。育ててみせる。
なんとまぁ話していても物怖じしないというか、落ち着いているというか。なかなか度胸のある生徒です。本選は来年1月下旬です。
あまり時間がありませんが、これからはC言語対策をやりたいと思います。
今回のnewsletterは以上となります。 そうそう、肝心なことを忘れてました。復元ソフトが機能しているWindowsでC言語の環境を整える方法をご存知の方がいらっしゃいましたら、是非教えてください。 今のところは、VSCodiumのポータブル版にgccを入れて持ち歩くのが良いかなと考えているんですが、もっと手軽な方法があれば参考にしたいと思います。 学校と家庭で1本のUSBメモリを持ち歩いて、挿したらすぐVSCodeが起動してC言語開発ができる。そんな環境を作りたいと考えてます。 良い案がありましたら、「#こだわりらいふ」をつけたツイートや、Substack内のコメントまでお願いします。