愛知県の県立高校のコンピュータ室でMinecraft Education Editionを動作させるためにやったこと
生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
愛知県の県立高校のコンピュータ室でMinecraft Education Editionを動作させるためにやったこと
愛知県はGIGAスクール構想の実現に向けて、Microsoftと包括契約を結びました。 これにより、県立高校に配備された端末はMicrosoft製のSurfaceGo2となり、生徒全員にMicrosoftアカウントが付与されました。確かA3。
しかも教員・生徒全員に付与されたMSアカウントにはMinecraft Education Editionにアクセスする権限もありました。
マイクラ好きな魚住としては、是非とも授業に導入したい。いや、絶対授業でマイクラをやりたい。 その思いが強まったのでした。
実はこのGIGAスクール構想以前に、Microsoft日本支社にMinecraft教育版を導入したいと問い合わせたところ「ソリューションプロバイダを通して導入してくれ」と言われ、結局は導入のための費用を捻出しなければならないっていう結論に辿り着きました。
世間では小学校で教育版マイクラで主体的対話的で深い学びを実現しているというのに。 自分では何もできないのか。 子どもたちに、学びの環境すら用意してやれないのか。
そう1人で凹んでいました。
昨年度はというと、何かてはないかと色々と調べていたところMinecraftCUPという教育版マイクラの大会に行き着き、生徒用アカウントを発行してもらうことでマイクラを使った授業を実現させることができました。
そんなこんなで今年度を迎えて、公式にMSアカウントが全員分もらえたということで、「これはもう、コンピュータ室でマイクラが使えるように環境を整備するっきゃねーな!」と、雛形構築魂に火がついたのでした。
教育版マイクラの通信先を許可してもらう
Minecraftにはバージョンがあります。もしサーバーを用意するなら、サーバーもクライアントもバージョンを揃える必要があります。
愛知県の方針としては、Minecraftはゲームっていう扱いです。Minecraftの公式サイトも、フィルタリングではじかれて、閲覧することすらできません。
何が困るかというと、Minecraftのログイン作業に不都合が出てきます。 Minecraftがログインする際に行う通信先は主にminecraft.netです。ここにアクセスできないなら、当然起動はできても使えません。
ただこれまでは、1.14系ならそれでもなんとか使えてきました。MSアカウントを使ったログインに何も支障がありませんでした。
しかし、最新版の1.17系だと、ログインすらできない状況に陥りました。 僕はどうしても1.17系が使いたかったので、改めてMinecraftの通信先を調べて、愛知県教育委員会に許可してもらうという作業を行うことにしました。いつかのObsidianと同じ流れです。
幸いMinecraftのFAQページに、Minecraftの通信先のドメインリストがあったので、勤務校のコンピュータ室からそちらのドメインに通信が行えるように許可願を申請しました。
FAQ: IT Admin Guide – Minecraft: Education Edition Support
この許可願というのは学校長名で教育委員会に出すので、当然管理職にも事情を説明して、許可をいただいてから提出しました。
「なぜ学校の授業でゲームを扱わなければならないのか」を説明しました。 ここは本当はひと悶着あるのが世の常ですが、実は僕は昨年度にMinecraftを使った授業を研究授業で行った実績があるので、今回はすんなり通りました。
以上のやりとりをした後、1週間ほどで教育委員会に通信の許可作業を行っていただき、期末考査が終わった後の授業でMinecraftを使えるようになりました。
ちなみになぜ1.14ではなく1.17にしたかったかというと、ストラクチャーブロックがfor Educationでも使えるようになったからです。
ストラクチャーブロックという、ワールド内の建物などを保存したり読み出したりするブロックがMinecraftには用意されています。統合版のMinecraftだと既に使えるんですが、教育版では3Dデータとしてエクスポートすることしかできず、保存はできてもワールド内で読み出すことができませんでした。
コピーコマンドなどを使わないと、ワールド内で作ったものを複製したり移動することができなかったんですよ。
一度マイクラをやったことがある方なら共感してくださると思うんですが、座標で物事を考えるにしては、マイクラはどうも不親切です。はっきり言って面倒くさい。
そんな中でストラクチャーブロックは、視覚的に建物をコピペするにはもっていこいの機能でした。
それが教育版マイクラでも、ちゃんと動く形で実装されたので、「これは絶対に最新版にアップデートした状態でマイクラの授業をやりたい!」と思ったわけです。
あと、MakeCodeなども合わせて使いたいので、「どうせなら教育委員会に作業をお願いして、ちゃんと教育版マイクラをコンピュータ室で使える状態にしよう!」と思い立ったわけです。
教育委員会に許可を求めるっていう言葉を聞くと、なかなか大変なことをしたんじゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、僕自身はここは苦には思いません。そして、教育委員会側も、何も全てをガチガチに制限したいというわけでもありません。 何かあれば、事情を話して許可をもらい、認められた形で教育手腕を発揮すれば良いだけのことです。
何か実現したいことがある。そのためにはこういう障壁がある。僕の場合、それが目に見える形で出てきたら、「どうしたらその壁を越えられるだろうか」と考えます。
漫画を描いた先生が副業として認められないという問題がありましたが、それも僕が思うに、認められる形にもっていくように相談していない。だから許可が下りなかったんでしょって思うわけです。
教育委員会って聞くとドラマでよく、問題がないかどうか見に来る際に登場しますが、僕からしてみたら我々教員の味方です。現場の先生方が、よりよい授業をやるための環境を整える仕事をされています。
今回も、教育版マイクラに授業で扱うだけの価値があり、認めてくださった。コンピュータ室にアプリをインストールしたり、必要な通信先と通信できるように、ファイアウォールの設定を見直していただきました。
兼職兼業も、Obsidianも、教育版マイクラも、正しく手順を踏めば認めてもらえる。身をもって証明できたと思います。
「情報の先生になりたい」
嬉しいことが起こりました。在校生で、情報の先生を目指したいと発言してくれた生徒がいました。
教師として働いていて、これほど嬉しい言葉はありません。 ひょっとしたら僕のTwitterアカウントも見ていると思うので、あまりつぶやけませんが、素直に嬉しかった。
思わず、近隣の大学の入試要項の推薦入試のページを見まくって、どの大学なら受けられそうかを探しまくりました。
僕が合格した頃の愛知県教員採用試験では、高校の情報で受験する際に、教員免許高校1種情報以外にもう1教科別の教員免許を取得してある必要がありました。
なので僕は、ブログでフラペチーノ先生をやりながら、非常勤講師として高校で授業しながら、塾講師をしながら、教員免許取得の勉強をしながら、教員採用試験を受けたわけですが。今思えば、若くないとできないほどの過密スケジュールでした。 もう1回あれをやれと言われても、たぶん年齢的にできません。
昔は、情報の授業なんて、コンピュータが当たり前になればなくなるよって言われていた時代がありました。しかし今、新学習指導要領での「情報活用能力」が、言語能力と同等という位置づけとして、生徒に身につけさせなければならないものとなりました。自分で言うとこっぱずかしいですが、魚住はいわば、その専門家、スペシャリストです。
おっと、自分語りが過ぎましたね。 何が言いたいかというと、今の愛知県教員採用試験は、「情報」のみでの受験が可能となったんですよ。
僕はもう1教科教員免許を取得しましたけど、今の大学生は「情報」の教員免許さえ持っていれば、愛知県の教員採用試験を受けられるわけです。 間口は確実に広がりました。
そして、愛知県は「あいちの教育ビジョン2025」という教育復興計画を掲げていて、その中で「情報の教員を増やす」と言っています。 「あいちの教育ビジョン2025 -第四次愛知県教育振興基本計画-」を策定しました - 愛知県 (pref.aichi.jp)
情報の先生になりたい!と思う生徒には、是非ともこの波に乗ってもらいたいものです。
教育実習で再開するのを、今から楽しみにしていますよ。
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