『現役高校教師の「行動につながる」情報マネジメント術』を書くときに考えていたこと
生きることにこだわりを。魚住惇です。 今回もちょっとしたこだわりに、お付き合いください。
問題解決の手法としてのプログラミング
Obsidianに情報を集約するのが楽しくて、Vault内にもっと情報を貯めたいなと思うようになりました。 先日ブログにて、Safariの共有から閲覧中のページをMarkdown形式でVault内に保存するショートカットを公開しました。 自分で言うのもあれですが、便利に使えています。
これで都合がよくなったのが、「引用」です。 このブログにはこう書かれていた。自分はこれを見てこう思った。っていう内容の文章を書きたいなと思ったときに、その刺激を受けた文章をObsidian内で引用する形で記録することができるわけです。
もうね、その作業をやっていて、「これこれ、これだ。これがやりたかったんだ」感がすごくあって、便利に使えてます。 コピペもしなくても引用ができるってのが、大変よろしい。
自分が集めた情報を眺めていると、思うところが出てくるし、その出てきた考えを更に追記して、リンクを貼って。 これを繰り返していくだけで、どんどん時間が過ぎていきます。
しかもそうしてメモを育てているときは、それを何かの形にしたいとか、本の原稿にしたいとか、そんなことを一切考えずにやっています。 本の原稿を書くぞ!とか考えていると、こんなに楽しくメモをいじったりもできなくなります。
でもそうして知識をまとめていって、そこから考えを書いていくと、いつかは何かの形になるっていうことが、これまでの生活で分かってきました。
気負わず自分が思ったこと、考えたことを書いていく。 必要になったら使うし、直したい時に修正する。
これくらいに楽に書いていく感覚で、自分のmdファイル群も育ってきました。 またこれが、同期できるのも良いですよ。iPhoneからも読めるし書けるというのは最高です。
ただここ最近のアップデートで、iPhoneもiPadも、ちょっと同期の挙動が変だったり、入力に対して処理が追い付かないような動きをするようになりました。 特にiPad版では、入力していると、たまに改行を受け付けてくれなくなったり、カーソルがどっか行ったりします。 そうなった時はもう、どうしようもないので、Taioで同じファイルを開いてそっちから編集したりもしました。大抵の場合、この対処法でなんとかなりました。
脱線した話を元に戻します。 今回のショートカット作成に至った流れの、事の発端は、3月11日に「WebクリップをMarkdownで保存したいなぁ」と手書きのノートに書いたことから始まりました。
デイリーノートの記録を振り返ると、その日のうちにMarkDownloadという名前のChrome拡張機能があるということまで突き止めていました。そして翌々日の3月13日の午前中に、MarkDownloadがFirefoxやSafari用拡張機能としても用意されていること、GitHubにソースコードがアップされていることを記録しました。内容が簡略化されたブックマークレットのURLも貼ってありました。
その後更に検索を進めて、Reddit.comにショートカットが公開されているのを発見して、自分なりに調整して、自分好みのショートカットを作ろうという考えに至りました。
そこからは調べながら試行錯誤の連続で、なんとか動くものに仕上がったのが日曜日の夜のことです。それをブログに書いてまとめたのが、月曜日の夜でした。
困ったことを解決したい
調査
試行錯誤
ショートカットの作成
取り続けた記録をもとにブログを作成
流れをまとめると、この順番でした。 情報の授業でもプログラミングを教える際は、プログラミングそのものを楽しむことももちろん重要ですが、「問題解決の1つの手段としてのプログラミング」という位置づけで教えています。 解決したい問題があって、それをどうにかするためにコンピュータの力を借りる。その手法を考えるのがプログラミングというわけです。
よく「プログラミングを勉強したいけど、作りたいプログラムが思いつかない」みたいな人を見かけます。特にプログラマーに転職したくてプログラミングスクールに大金を落としている人の一部にそういう印象があります。
プログラミングはあくまで手段です。今回の目的は「WebクリップをMarkdown形式で保存する」ことであって、プログラムを組むことではありませんでした。
そう考えると、普段の授業で教えていることと整合性も取れていて、なかなか良い行動がとれたなぁとも自分で思っています。
そしてその流れをブログにまとめて、それを更にNewsletterにも書く。一つの話題で結構文章も書けた気がします。自分が取り組んだ内容を記録していくとそれが財産となり、その記録から文章が生まれる。それを公開できる形に改めて書き直していく。
普段から記録を残すことで、文章を書くための材料としてもストックできるし、記録をまとめることで、自分の行動の振り返りもできました。こうした生活を送り続けると、文章が溜まっていくんだなぁっていうのを実感してます。
『現役高校教師の「行動につながる」情報マネジメント術』を書くときに考えていたこと
今回の本のタイトル、長いっすね。情報整理大全の6巻目として、『現役高校教師の「行動につながる」情報マネジメント術: 文章を書き、考える人のための「デジタルノート 」活用術 情報整理大全』が発売されます。 この長いタイトルの、メインが「現役高校教師の「行動につながる」情報マネジメント術」で、サブタイトルが後半の「文章を書き、考える人のための「デジタルノート 」活用術 情報整理大全」という部分です。
少しだけホッとしているのが、「活用術」というのがサブタイトルだという点です。 あぁ、良かった。実は、『教師のiPad仕事術』の時に、出来上がった表紙が「活用術」になっていたというミスがあったんですよ。
で、その時に「自分の本が仕事術であって活用術ではない理由は何か」ということを考えた時に、「この本は、ただ活用術を並べたものではありません。活用の幅を超えた仕事術だからです」みたいな文言を思いついて、自分なりに納得していました。
そんなことを得意げに言っていた僕の次の本のタイトルが活用術だったら、ちょっと残念な感じがするよなぁって思っていました。 とりあえずは一安心です。メインのタイトルは情報マネジメント術でっすから。良かった良かった。
Twitterにもこのように告知をしましたが、ここに書いてある通り、これはNotePlan3の使い方について書いた本です。とはいえNotePlan3の使い方を細かいところまで説明したわけではありません。
実際に魚住惇がどうやって使って、どんな効能が得られたのかという部分を中心に書きました。本当はZettelKastenについても触れたかったんですが、僕自身の理解が足りない部分があったり、自分自身の行動にまで落とし込めていない部分もあったので、現時点で自分がやれている部分のみを書きました。
特に、僕がどんな条件で、使うツールを選んでいるのかなど、細かい部分でのこだわりを詰め込みました。 あと敢えていうなら、『知的生産の技術』を読んだ直後に書き始めた文章なので、文体にそれっぽさが出ています。
具体的なノウハウというよりは、NotePlan3やObsidianを使うようになった経緯などの読み物として楽しんでいただけたら幸いですっていう感じの内容です。
ただね、文字数の関係で、あまり多くのことが書けませんでした。特に、文章を書くことそのものについて書きたかったのですが、どうしてもNotePlan3やObsidianについての記述が当然ながら多くなりました。個人的には、「足りないな」と思っています。
僕はずっと、「文章を書く方法」を追いかけてきました。どうしたら文章が書けるのか。どうしたら、息を吐くように文章を吐き出すことができるのか。これがどうしても気になります。 「いやいや、魚住先生は言うて文章書けてるでしょ。だからこうして今回も本を出したわけだし。」という反論ももちろんあると思います。でもそれは、「それでもやっぱり自分は、自分が思うようには文章が書けていない」と言う感覚があることを実感しながらも、どうにかして文章を書いてきたと言うのが正直なところです。
もしも、文章を書く時の手法というのが存在しているとするならば、ある部分については無意識のうちにできていると言えます。しかし、無意識のうちにやれないことは、意識しながらやるしかありません。現状ではそれが言語では上手く表現されずに、感覚である程度できてしまっている状態だなと、自分自身について解釈しています。
ここに、Obsidianなどのツールを加えると、4つに分類できます。文章を書く際に
無意識に頭の中でやっていること
無意識に頭の外でやっていること
意識して頭の中でやっていること
意識して頭の外でやっていること
いわゆる文章を書くのが得意と思っている人の多くは、「無意識に頭の中でやっていること」の範囲内で、文章を書く方法のほとんどをやっているんだろうなって推測しています。
苦手な人は、全てを無意識では頭の中でやれないから「書けない」という感覚に陥るはずなので、頭の外でやっていることを増やす必要が出てくる。という考え方です。
気をつけようとしている時点で意識していると考えられるので、ツールを使うということは「意識して頭の外でやっていること」を増やすことに繋がると思います。ただし、常に物事を意識しながら行動すると疲れてしまうので、「歯を磨く」や「顔を洗う」といった行為と同じように、無意識でそれができるようになることが望ましいとも言えます。
なので頭の中でやれないのなら、まずは「意識して頭の外でやっていること」を増やして文章を書いていき、慣れてきたらそれを無意識のうちにやれるようになると、その人に合った頭の使い方ができるんじゃないかと思います。
僕の場合は、ある程度は無意識に頭の中でやっていることが意外と多いので、「文章を書くことが苦手だ」と思う人と比べると、割と書ける方なのではと思っています。ですが、NotePlan3やObsidianなどを使うことによって、頭の外でやっている行動を増やすことで、これまで以上に文章が書きやすくなったことを実感してしまいました。
今となってはデイリーノートを使うことが日常となったので、「トイレ」や「歯磨き」と同じくらいの感覚で記録を残せるようになってきました。特に「よし!記録を残すぞ!」と考えずに実践できています。この感覚を僕は「無意識に頭の外でやっていること」だと思っています。
この境地に達したお話が、今回の本の内容というわけです。
これの何が問題なのかというと、僕自身と、文章を書くことが苦手だと考えている人との差が何なのかを考察するより先に、更に自分にとってもっと文章が書けるようになる方法を見つけてしまったてことなんです。
このままの状態で、あたかも文章が書けるようになる方法として文章を書いてしまうと、あくまで「魚住惇の脳の構造的に上手くいった手法」という扱いの域を出ないものに留まってしまいます。
「このツールがおすすめ」「これを使うようになったら文章が書けるようになった」など、謳い文句は様々ありますが、ただそれだけだと、その人しか再現することができない方法論止まりです。これでは「自分の場合はこの方法で上手くいったぞ」というただの報告です。
僕はできれば、もう1段階上の階層から眺めて「自分は文章を書くプロセスの中のこの部分については、このツールとの相性が良かった」という言い回しをした本を書きたい。今回の出版を通してそう考えるようになりました。
実は今、『教師のiPad仕事術2』の企画が始まろうとしています。今回話したことは、詳しくはそっちで語ることにしましょう。
今回のnewsletterは以上となります。 「いいね」を押していただけるとうれしいです。内容に関するご意見ご感想がありましたら、「#こだわりらいふ」をつけたツイートや、Substack内のコメントまでお願いします。